むちうちの診断書の重要性とは?作成のポイントや後遺障害診断書についても解説
むちうちの診断書の提出先や注意点をまとめています。治療期間など、むちうちの診断書に記載される内容や、作成費用も説明しています。また、後遺障害等級認定で必要な後遺障害診断書についても解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
目次
むちうちになったときに必要な診断書とは?
交通事故でむちうちになった場合は、医師に「診断書」を作成してもらいましょう。
その理由は、診断書を警察署に提出して、人身事故に切り替えるための届け出をするためや、保険会社に提出して人損に関する補償を受けるためなど、さまざまな理由があるからです。
ここでは、交通事故でむちうちになった際の、診断書の作成方法や同意書との違い、診断書にかかる費用などについて解説します。
診断書を作成してもらうには?
追突や衝突といった交通事故でむちうちになったときの診断書は、医師のみが作成できます。したがって、診断書を取得したい場合は、病院を受診して、医師に診断書を作成してもらいましょう。
中には、むちうちの治療を、整骨院などで受けたい人もいるでしょう。しかし、整骨院などでは、診断書の作成はできません。
むちうちの診断書を作成してもらうためにも、交通事故でむちうちになったという疑いがあるときは、早めに病院を受診しましょう。
また、すぐに通院を始めれば慰謝料の請求などで損をせずに済むでしょう。このようなさまざまな理由から、事故に遭ったらすぐに病院に行くことが重要なのです。
診断書と同意書の違いは?
交通事故の同意書には、主に任意一括対応に関する同意書と、個人情報開示に関する同意書があります。
任意一括対応に関する同意書は、病院に直接治療費を支払ってもらう場合などに必要な同意書です。また、個人情報開示に関する同意書は、診断書や診療報酬明細書などの個人情報を、保険会社に開示するために必要な同意書です。
一方で、診断書は、傷病名や治療の内容、治療期間などを記した書類です。
診断書は、医師にしか作成できませんが、同意書は自分で署名するという違いもあります。したがって、診断書と同意書は、まったく異なる書類と覚えておいてよいでしょう。
診断書の作成にかかる費用
診断書の作成には、費用がかかります。
診断書の作成費用の目安は、病院によって変わってきますが、1通あたり約3,000円~5,000円が目安とされています。
診断書の作成費用については、負担した費用も、損害賠償に含まれるため、後で相手側に請求することができます。
診断書を受け取ったら、領収書を発行してもらい、加害者に請求するまでしっかり保管しておきましょう。
診断書の提出先
診断書を作成してもらってそのまま提出すれば、何も問題はないと考えがちです。しかし、診断書の提出先や診断書を提出する目的について、医師に伝えておいた方が適切な診断書を作成してもらいやすくなりますし、有利な場合もあります。
むちうちの診断書の提出先となるのは、警察、保険会社、自分の勤務先の3つです。
診断書を作成してもらうときは、提出先を医師に伝えてから、作成してもらうとよいでしょう。
1:警察
警察に提出する診断書は、被害者が交通事故で怪我を負ったことを証明するためのものです。
そのため、交通事故で怪我を負ったことがわかるように記載してもらうとよいでしょう。
警察に提出する診断書に記載すべき項目は、傷病名(むちうちや打撲、頸椎捻挫など)、および、全治日数(完治までにかかると予想される日数)などです。
なお、全治日数は、医師による見通しを記載してもらうとよいでしょう。たとえ、全治日数が超過しても、診断書を再提出する必要はありませんので、おおよその見通しを記載しても問題はありません。
警察への診断書の提出は、事故からおよそ1週間~10日以内に提出するようにしましょう。提出が遅れてしまうと、事故と怪我の因果関係を示すことが困難になる可能性があるためです。
2:保険会社
保険会社への診断書では、傷病名や治療の内容・経過、治療期間の目安と検査結果、受傷部位や今後の見通しなどを記載してもらいましょう。
保険会社への提出方法は、被害者自身で加害者の自賠責保険会社に提出する場合と、任意保険会社が直接取得する場合があります。
自分で提出する場合は、加害者の自賠責保険会社に被害者請求を行うときに必要になります。 この場合は、書式が指定されていることが多いため、事前に自賠責保険会社に連絡し、書式を取り寄せるとよいでしょう。
次に、被害者が任意一括対応を受ける場合は、加害者の任意保険会社が、病院から診断書を直接取得するため、提出する必要はありません。
3:勤務先
診断書の提出先は、保険会社と警察だけではありません。例えば、むちうちによって休職する場合には、勤務先へも診断書を提出する必要があります。
その際は、むちうちの症状で就労ができないことを医師に相談して、その旨を診断書に記載してもらうことが大切です。医師に勤務先へ提出する診断書であることを伝え、作成してもらいましょう。
もし、むちうちで休職した場合、休業損害を請求することができます。ただし、休業損害を請求する際には、仕事を休まざるをえないほどの症状であることを客観的に示す必要があります。この点、診断書の内容は、休業損害を請求する際にも重要になるでしょう。
なお、自分で判断が難しい場合には弁護士に相談することもおすすめです。
むちうちで診断書を作成してもらうことの重要性
これまで解説してきましたように、交通事故でむちうちになった際には、診断書を警察・保険会社・勤務先などに提出する必要があります。
しかし、もしも診断書を作成してもらえなかった場合や、作成してもらえない状況になっていた場合には、どのような問題が生じてしまうのでしょうか。ここでは、診断書を作成してもらえないことの影響に焦点を当てて解説します。
病院に、適切な頻度で通院していれば、診断書を作成してもらえますが、病院に通院していなかった場合や、通院頻度が少ないなどの場合は、作成してもらえない可能性があります。そのため、診断書が作成されないリスクを知り、適切な方法で通院を継続しましょう。
診断書を提出しないと人身事故扱いにならない
交通事故を人身事故として届け出る際には、診断書が必要です。もし、診断書を作成してもらえなかった、提出できなかった場合は、物損事故扱いのままとなり、人身事故扱いにはなりません。
物損事故の場合は、人損に関する賠償金の請求が認められません。
人身事故への切り替えが認められなければ、たとえ怪我を負っていても、治療費や慰謝料などの支払いを受けることができませんので、診断書を取得できるように注意して通院しましょう。
慰謝料や治療費を支払ってもらえない可能性もある
診断書を提出し、人身事故扱いにしなければ、むちうちによる治療費や検査費用、慰謝料などを支払ってもらえなくなる可能性が高くなります。
診断書をなんらかの理由で提出できず、物損事故扱いのままでも、相手の保険会社に、「人身事故証明書入手不能理由書」を提出することで、人身事故に関する損害賠償の請求が認められる可能性もあります。しかし、これも認められなければ、人身事故としての損害賠償は受けられません。
警察に診断書を提出して、人身事故に切り替えることができれば、加害者側から治療費や慰謝料といった損害賠償を受けられますので、日頃から注意して通院しましょう。
むちうちの診断書を作成してもらうポイント
むちうちの診断書は、交通事故を人身事故扱いにするためや、人損に関する損害賠償請求などで重要になる書類です。そのため、できるだけ正確な内容で診断書を作成してもらう必要があります。
そこで、診断書を作成してもらう際に、気をつけておくべきポイントをまとめています。
適切な診断書を作成してもらえなかった場合、自分の症状が正確に伝わらず、何らかの不利益を被ることがあります。正確で適切な診断書を作成してもらうためにも、以下で解説するポイントに気をつけてみましょう。
1:誇張しない
医師へむちうちの症状を伝える際は、症状を誇張することなく、正確に伝えるようにしましょう。
もし、誇張した症状を伝えてしまうと、治療しているのにまったく症状が改善しないことに疑問を抱かれたり、医師との信頼関係に問題が生じる可能性もあります。
むちうちは、画像検査で原因を特定することが難しいという特徴があります。医師の適切な診断を受けるためにも、正確に症状を伝えるようにしましょう。
2:症状を具体的に伝える
医師に症状を伝える際には、ただ痛みが酷いと訴えるのではなく、症状の詳細や、どの部位が痛むのか、どのような影響があるのかなどを具体的に伝えるようにしましょう。
その場で医師に全ての症状を正確に伝えることが難しい場合には、診察を受ける前に、症状の内容をメモにまとめておくこともおすすめです。
症状が軽いからといって、むちうちとは関係ないかもしれないと思っても、痛みなどの症状がある場合には、医師に伝えておきましょう。
自分の判断で伝える症状を選別するのではなく、正確に症状を伝えた上で、医師に判断してもらうことが大切です。
むちうちの診断書を提出する際の注意点
ここでは、むちうちの診断書を提出する際の注意点を解説します。
むちうちの診断書が作成されても、内容に不備があったり、作り直してもらう必要がある場合も想定されます。以下では、診断書を作成してもらう際の注意点をチェックしておきましょう。
1:新たな症状が出たら書き直してもらう必要がある
診断書を受け取った後で、他の症状が出てきてしまい、検査を受けた場合には、その検査結果を記載した診断書を作成してもらいましょう。
診断書を書き直してもらうことで、むちうちの現在の症状を正確に伝えることができます。
2:診断書の提出期限に注意
交通事故を物損事故として処理した場合、診断書を提出して人身事故に切り替える必要があります。
このときにおける診断書の提出期限には、明確な期限はありませんが、一般的には、交通事故から10日以内に提出した方がいいでしょう。
早めに提出しなかった場合には、交通事故と怪我の因果関係が認められず、人身事故への切り替えができなくなる可能性があるためです。
出典・参照:自賠責保険について知ろう!国土交通省
後遺障害等級認定に必要な後遺障害診断書とは?
むちうちの治療期間の目安と言われている6ヶ月を過ぎても完治せず、症状固定と診断されて後遺症が残った場合は、後遺障害等級認定を申請することができます。このときに必要になる書類が、後遺障害診断書です。
むちうちの場合、後遺症があったとしても画像検査で原因が分からない場合が多いことから、医師の作成する後遺障害診断書が重要な判断書類になると言われています。
また、適切な後遺障害診断書でなければ、後遺障害等級認定を受けることが難しくなる可能性があるため、正しい内容で作成してもらうようにしましょう。
また、これまで受けてきた治療内容や結果も詳細に記載してもらうことも重要なポイントです。記載内容が十分でない場合には等級認定を受けられない可能性もありますので、注意が必要です。
後遺障害診断書が作成されないケースとは?
むちうちで後遺障害等級認定を申請するにあたって、後遺障害診断書はかなり重要です。しかし、稀なケースではありますが、後遺障害診断書を医師に作成してもらえないケースもあります。
ここでは、後遺障害診断書を医師が作成してくれないケースについて解説します。また、これから後遺障害等級認定の申請を考えている方は、これらの内容に心当たりがないか確認しておきましょう。
1:転院した直後の場合
医師が後遺症を診断するためには、事故直後から症状固定までのむちうちの経過状態や、治療過程を参考にする必要があります。しかし、何らかの理由により、治療途中で通院先を変えた場合は、症状の状態を把握することが困難になってしまいます。
なぜなら、新しい病院の医師は、治療の途中から患者を診ているため、事故直後からの経過状態を、正確に把握することが難しい場合があるからです。そのため、後遺障害診断書を作成するにあたり、症状経過を十分に診れていないことから、作成してもらえない可能性があります。
2:回復する見込みがある
後遺障害診断書は、しっかりと必要な期間治療を受けた上で、これ以上治療を続けても回復の見通しがない状態になった(症状固定)と診断されてから作成されます。
したがって、治療をもう少し継続すれば回復の見込みがあると医師が判断している場合は、後遺障害診断書が作成されない可能性があります。
後遺障害診断書を作成してもらえないときの対処法
医師が後遺障害診断書を作成してくれなかったときは、どうすればよいのでしょうか。
この場合の対処法をいくつか解説していきますので、ぜひ参考にして対処してみましょう。
1:医師に自覚症状を明確に伝える
後遺障害診断書を作成してもらえない場合、医師に後遺障害診断書を作成してもらいたい理由や、現在の後遺症と思われる自覚症状についてしっかりと説明し、現状を理解してもらうことが大切です。
このような症状を伝えれば、次に解説する検査を受けられたり、後遺症の症状を示すことができる可能性があります。
2:後遺症を証明するためのテストを受ける
むちうちには、画像検査では原因が判明しにくい特徴があります。しかし、神経学的検査を受けることで、後遺症の有無を調べることが可能です。
神経学的検査には、ジャクソンテストやスパークリングテスト、深部腱反射テストなどがあります。これらは、頭部を押したり、反らせたりして症状を調べたり、腱を打診することで反応の程度を確認するテストです。
むちうちの症状によっては、筋委縮検査や筋電図検査、徒手筋力検査などが行われる場合もあります。これらのテストを受けることで、後遺症の症状を明らかにできる可能性があるため、必要な場合は受けるようにしましょう。
弁護士であれば、これまでに等級が認定された事例に精通しているため、記載内容のアドバイスをすることができます。この他にも、損害賠償の請求なども任せることができるなどのメリットがあります。
むちうちになったら診断書を作成してもらおう
交通事故でむちうちになったときは、病院で診断書を作成してもらうことが大切です。また、事故の数日後にむちうちになった場合は、診断書を警察へ提出して、物損事故から人身事故への切り替え手続きを忘れずに行いましょう。
なお、治療中は、整骨院や接骨院、鍼灸院での施術を受ける場合も、病院への通院は、完治、あるいは、症状固定まで定期的に、継続して通院しておくことも大切です。
医師に症状固定と診断されたら、後遺障害等級認定を申請する際に必要になる後遺障害診断書を作成してもらうようにしてください。医師に正確なむちうちの症状を伝えて、正確な内容で作成された診断書・後遺障害診断書を取得しましょう。
この記事のライター
ドクター交通事故運営
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