もらい事故で修理費用は請求できる?使える保険や相場についても説明
もらい事故で修理費用は請求できるのかを解説します。もらい事故に遭ってから修理費用が確定するまでの流れや、車両のパーツごとに費用相場も説明!また、もらい事故で利用できる保険や、被害者が請求可能な補償内容もまとめているため、参考にしてください。
目次
もらい事故で修理費用がもらえるかを解説
もらい事故の被害者になり車両が損傷した場合、修理費用を請求できるのか気になる人も多いでしょう。そもそも、もらい事故とは、どのような事故であるのかも説明します。また、もらい事故と思っていたら、被害者にも過失があったというケースも紹介します。
他にも、被害者が利用できる保険や、請求できる補償内容も載せているため、チェックしてみてください。
もらい事故とは?
もらい事故は被害者に過失がない
もらい事故は、被害者に全く過失がない事故のことです。したがって、加害者と被害者の過失割合は、10:0となります。例えば、赤信号で停車していた車両に、後ろから加害者の車両が追突してきた場合などが該当します。
2台の車両が関係する交通事故は、当事者双方に一定の過失がある場合がほとんどです。
しかし、稀ではありますが、どちらか一方に100%の過失があり、他方に過失が全くないケースもあります。このような交通事故を、俗に「もらい事故」といいます。出典: www.adire.jp
被害者に過失や違反点数がつくケース
対向車がセンターラインを越えてきたり、追突された場合、もらい事故になる印象が強いでしょう。しかし、被害者にも過失や違反点が、つくこともあります。
周りにしっかり注意を払っていれば、避けられる事故だったと判断された場合です。主に次のようなケースがあります。
- 被害者が急停止したことで起きた事故
- 被害者が駐車禁止場所に駐車していて起きた事故
- 工事などでセンターラインの左側を走行できずに、対向車が衝突してきた事故
- センターラインの左側に十分な幅がない理由で、対向車が衝突してきた事故
もらい事故で修理費用がもらえるケース
ケース①分損
車の修理にかかる費用が、車両保険金額より低いことを分損といいます。車両保険で分損と判断された場合は、損害額から免責金額を控除した金額で、車両保険金として受け取れます。
保険金を修理費用に充てることができるため、修理をして同じ車に継続して乗ることが可能です。また、分損の場合は、車両の買替が必要とみなされないため、買替費用の請求はできません。
ケース②物理的全損
車両が修理できないほどの損傷を受けている場合は、物理的全損とされます。修理不可能な状態であるため、車両の買い替えをするしかありません。したがって、事故に遭った時点での、車両の時価額に基づいた保険金額になります。
加害者が損傷させたのは新車ではなく中古車であり、事故時点での価値分を、補償すれば良いとされているからです。
ケース③経済的全損
車両の修理は可能であっても、修理費用が事故当時の時価額よりも上回ることを、経済的全損といいます。このような場合は車両を修理するよりも、時価額と同様の中古車を購入した方が良いと、判断されます。
また、経済的全損の場合は修理費用ではなく、買い替え費用に関する必要経費を、補償してもらうことが可能です。
もらい事故で修理費用が確定するまでの流れとポイント
修理費用が確定するまでの流れ
修理費用を受け取れるのは、加害者との示談が成立してからです。少なくとも1~2ヶ月はかかると、認識しておくのが良いでしょう。なるべく早く示談を成立させたほうが、スムーズに保険金をもらうことができます。修理費用が確定する具体的な流れは、以下の通りです。
- 保険会社に連絡を入れて、示談交渉を開始する
- 被害者が車を修理工場へ移送する
- 修理工場に見積もりを出してもらう
- 相手側のアジャスターが修理工場へ行き、調整協議を行い修理費用を決める
- 修理費用以外の損害額や過失割合を決める
- 示談が成立する
ポイント①車両の時価額
もらい事故に遭ったら、損傷を受けた部分の修理費用に関しては、相手側の保険会社へ請求することができます。また、修理費用の補償額は、事故に遭った時点での、車両の時価額に基づいて決定されます。
ただし、時価額を超える修理費用は、支払われません。部品を交換するだけで足りるところを、総取り換えするなど、過剰な修理をしないように注意が必要です。
また、古い車両ほど時価額は低くなります。そのような場合は、修理費用ではなく時価額が、支払われることになります。
ポイント②過失割合
もらい事故であれば、損害分の全額を補償してもらえます。しかし、被害者にも過失があると、加害者側が主張してくることもあります。このような場合は、自己判断で示談に応じないようにしましょう。交通事故の案件に詳しい弁護士へ、相談するのが良いです。
もしも、被害者側にも過失が認められたら、もらい事故にはならず、賠償金は減額されます。例えば、被害者の過失割合が2割で、修理費用が50万円かかったとします。
この場合、保険会社からもらえる補償金は40万円で、差額の10万円は自己負担になる仕組みです。これを過失相殺といいます。
ポイント③加害者の保険内容
示談金は、加害者の強制加入である自賠責保険から、支払いの上限額まで受け取れます。それ以上の費用が必要な場合は、加害者の任意保険から支払われるのが一般的です。
しかし、任意保険に加入していない場合は、不足分を加害者が自己負担で、支払わなければなりません。ただ、加害者の経済的な事情で分割払いにされたり、最悪な場合は踏み倒される可能性も出てきます。
また、加害者が対物超過特約に、加入しているケースもあるでしょう。その場合は、修理費用が時価額を上回っても、50万円を限度として賠償金を受けることが可能です。 加害者が加入している保険の内容を確認しておくのも、大切なポイントになります。
もらい事故の修理費用に使える保険
保険①加害者の自賠責保険
すべての自動車やバイクに対して、自賠責保険に加入することが、法律で義務付けられています。自賠責保険に加入していないと、車検を受けることもできません。
また、もらい事故の被害者になったときは、人身事故の場合に限り、加害者側の保険金から支払われます。したがって、物損事故は対象外です。人身事故でも、自賠責保険の支払い限度額までしか支払われないことを、認識しておきましょう。
保険②加害者の対物賠償責任保険
加害者が加入する任意保険で、物損事故を起こしたときに役立つ保険です。上限の金額内で、修理費用などの賠償金が支払われます。
また、被害者に過失があったとしても、自腹で加害者に修理費用を支払うケースは、ほとんどありません。なぜなら、被害者も対物賠償責任保険に、加入していることが多いからです。
自動車を運転するならば、対物賠償責任保険や対人賠償責任保険に加入しておくことを、おすすめします。
保険③被害者の車両保険
車両保険に加入していると、車両の修理や買い替え費用などを補償してくれます。また、物損事故で加害者からの保証金だけでは不足な場合も、利用することが可能です。
他にも、加害者が任意保険に加入しておらず、支払いが滞っているときにも、利用してみましょう。車両保険には、全損時諸費用特約や新車特約など、さまざまな特約がついているため、利用するときは確認してみてください。
車両保険を使うと損になることもある
車両保険を利用すると、事故のケースによっては、損をすることがあります。なぜなら、利用することで保険の等級が下がり、次年度からの保険料の支払いが、値上がりするからです。
人身傷害保険の場合は、保険の等級が下がることはありません。しかし、車両保険を利用する場合は、注意が必要です。状況によっては、保険を利用しないほうが良いこともあるでしょう。車両保険を利用する際は、契約内容をしっかり確認してください。
もらい事故の修理費用の相場
相場①フレーム交換
フレームは車の骨格となる重要な部分で、損傷を受けると走行が不安定になり大変危険です。フレームを交換する費用も高額で、約10万~100万円が相場になります。
損傷の状態によっては、修理するよりも買い替えた方が安く済むことも多いです。フレームを損傷したら見積もりを出してもらい、買い替えとどちらが良いか、よく検討する必要があります。
相場②ドアの交換
ドアは少しのへこみであれば、パテ盛りや板金での修理になります。しかし、事故によって強い衝撃を受けた場合は、ドアの内部まで損傷し、交換が必要になることもあるでしょう。
ドアの修理費用の相場は約10万円です。外車の特殊なドアで、外国から取り寄せたりする場合は、数十万円になるケースもあります。
相場③エンジンの交換
エンジンの修理費用の相場は、約50万~90万円と高額になります。エンジンは車両の心臓といわれるほど、重要な部分です。エンジンに不具合があれば走行に支障が出て、大事故にも繋がりかねません。
ダメージが大きい場合は、エンジン自体を載せ替えする可能性もあります。国産車の修理費用の相場は、約50万円です。しかし、高級車や外車、ハイブリッド車の場合は高額であるため、新車に買い替えたほうが良いケースもあるでしょう。
相場④バンパーの交換
バンパーは損傷の程度によって、修理または交換かを決めます。バンパーを交換する費用相場は、約1万~20万円です。
小さな傷やへこみであれば、約1万円で塗装や板金の修理が可能なこともあるでしょう。部分的な修理や範囲の広い塗装になると、約5万~20万円ほどの相場になります。バンパーは車種によって価格が大幅に異なるため、注意が必要です。
もらい事故で請求できる修理費以外の費用
費用①買い替えにかかる費用
車両の買い替え費用は、物理的全損または経済的全損になった場合に請求できます。ただし、買い替え費用は、新車を購入するための補償ではなく、車両の時価額が上限となります。また、付随して以下のような諸費用も、補償されるのが一般的です。
- 車庫証明費用
- 登録費用
- 廃車費用
- 登録手続きの代行費用
- 納車費用
費用②代車使用料
もらい事故に遭って車両を修理に出した場合、その間に代車が必要になることもあるでしょう。レンタカーを利用したら、レンタル料に基づいて、代車費用を請求できます。ただ、あまりにも長期間に渡って請求をすると、代車費用を打ち切られることもあります。
また、補償されるレンタカー代は、ランクの低い車両であることが原則です。勝手に高級車をレンタルした場合は全額支払われず、差額を自己負担しなければなりません。
費用③評価損
破損したり修理をすることで、車両の価値が低下してしまったことに対する損害を、請求できます。しかし、請求した全ての車両が、認められるわけではありません。
購入して間もない外車や高級車で、走行距離も少なければ、認められやすい傾向にあります。実際には低下した分の金額ではなく、修理費用の10~30%を支払われるケースが多いです。
費用④休車損害
もらい事故で損傷した車が、業務に使用されるもので、代替えすることが不可能なケースがあります。そうすると、被害者はやむを得ず、休業しなければなりません。休業したことで生じた減収は、加害者側に請求することが可能です。
一定の条件を満たせば、会社員や自営業者以外の、主婦や学生、無職者でも請求できます。自分が該当するかは、保険会社に確認してみてください。
費用⑤その他
被害者側の車種がトラックの場合、積荷に損害が発生すれば、その分も請求可能です。他にも、タクシーであれば、損傷して車両が使えず売り上げが低下すると、営業損害を請求できます。
また、もらい事故で損傷を受けるのは、車両だけではありません。被害者自身も怪我をした場合は、治療費関係も請求できます。
もらい事故でも修理費用は請求できる
もらい事故で被害者になった場合、車両の修理費用は、加害者側の保険会社へ請求することができます。ただ、修理をするよりも、買い替えをするほうが安く済むケースもあるため、よく検討することが必要です。
修理でも買い替えでも、事故当時の車両の時価額を上限として、補償されます。少しでも受け取れる賠償金が増えるように、利用できる保険や賠償について確認しておきましょう。
この記事のライター
宮内直美
最新の情報や疑問に思ったことなど、調べることが好きなフリーライターです。交通事故の防止や対処法に役立つ情報を収集して、分かりやすく執筆します。
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