交通事故で保険会社が嫌がることとは?起こりうるトラブルを解説
交通事故で保険会社が嫌がることには、どのようなものがあるかを解説します。被害者側・加害者側それぞれの保険会社からみた嫌がることの内容と、そうした対応を取る理由も合わせて紹介します。保険会社や弁護士に、交通事故の対応を依頼する際の参考にしてください。
目次
交通事故で保険会社が嫌がることは何か?
交通事故では、保険会社とのやりとりの中で多くのトラブルが発生します。加害者側の保険会社は、交通事故で非がある加害者の側に立っていることもあり、被害者側に突かれると嫌がることや弱みの部分も存在します。
また、被害者側の保険会社にとっても、被害者の行動のいくつかは嫌がることがあります。どのような行動が、被害者・加害者の保険会社にとって嫌がることなのかをまとめます。
交通事故で加害者側の保険会社と起こりうるトラブル
交通事故の後、加害者側の保険会社との間ではさまざまなトラブルが起こる可能性があります。はじめに、主なパターンを3例紹介します。
トラブル①治療費を打ち切られる
多くの場合、交通事故の被害者がけがをした時の完治するまでの治療費は、事故直後から加害者側の保険会社が病院に支払うことになります。交通事故のけがにおいて、「完治する」とは、これ以上症状の改善が見込めない状態である、症状固定とみなされた時点のことです。
しかし、治療や通院の期間が長くなると、加害者側の保険会社は支払額を抑えるため、症状固定と治療費支払の打ち切りを通告します。この場合は、自分で判断せずに主治医の判断を仰ぎ、まだ症状が改善できるのであれば、その旨を加害者側保険会社の担当者に伝えるべきです。
ただし、そのためには被害者側も、薬の処方だけでなく、定期的に通院して治療を受けておく必要はあります。また、症状の記録を事故直後から残したり、医師の指示があれば休業するのも、保険会社にとっては嫌がることの一つです。
トラブル②過失割合の認定で主張が食い違う
交通事故の加害者と被害者が、各々負うべき責任の割合を示したものが過失割合です。大半の交通事故では加害者・被害者ともにある程度の過失はあったものとして扱われます。そこで加害者側の保険会社は、この時に被害者の過失割合を大きく見積もり、支払う賠償金を抑えようとします。
過失割合は、事故時の状況によって大きく左右されます。ドライブレコーダーや第三者の証言など、客観的な証拠がない限り、加害者側の保険会社は、加害者の言い分を基に過失割合を計算します。
トラブル③低い賠償金額を提示される
交通事故によるけがの治療が完了し、後遺障害等級の認定が下りると、加害者側の保険会社から示談額の案が提示されます。この示談額は、自賠責基準、またはその保険会社独自の基準である任意保険基準を基に算定されることが大半です。
しかし多くの場合、この金額は弁護士に示談を依頼した場合よりも低額です。この示談額をうのみにせず、自分の契約している保険会社の担当者や、必要であれば弁護士に相談するのも一つの方法です。
交通事故で加害者側の保険会社が嫌がること
交通事故後に、加害者側の保険会社が被害者にされて困ることや、嫌がることを4点挙げます。いずれも、被害者による交通事故後の対応に関するものです。
正しい知識を持つこと
加害者側の保険会社が最も嫌がることは、被害者が交通事故の対応について正しい知識をもっていることです。日々の業務として加害者・被害者両方の立場から対応を行っている保険会社と違い、多くの被害者は交通事故についての知識を持っていません。
そのため、加害者側の保険会社は、被害者が知らない交通事故の対応方法を使って支払額を抑えようとします。しかし、ここで被害者が正しい知識を持っておくと、自分に不利な対応をされたとしてもそれを見抜くことができます。
具体的には、治療の打ち切り通告に対して医師の診断を仰いだり、示談金交渉における弁護士基準の存在を知っておくなどです。これだけでも、保険会社は安易な対応をとりにくくなります。
弁護士に相談・依頼すること
保険会社が嫌がることの2つ目は、被害者が交通事故の対応を弁護士に依頼することです。弁護士は法律の専門知識に加え、高い交渉力もあることから、自賠責基準や任意保険基準よりも高額な、弁護士基準によって示談金を請求します。
裁判を起こされること
交通事故の被害者が弁護士を付けたうえで、裁判を起こされるのも、加害者側の保険会社は嫌がることになります。主な理由は、以下の2点です。
- 裁判に敗訴すると保険料の支払額が増える
- 時間と手間が負担
交通事故の被害者に裁判を起こされ、負けてしまうと、弁護士基準による賠償金の支払いが確定します。少しでも支払額を減らしたい、加害者側の保険会社にとっては大きな負担です。
また、裁判自体に長くて1年以上、短くても数カ月の時間を要するため、1つの交通事故に手間を取られて別の案件の対応もできなくなります。こうした事情により、裁判は特に嫌がることの一つです。
「そんぽADRセンター」に苦情が入ること
そんぽADRセンターは、日本損害保険協会が設けている被害者対応窓口です。センターでは、交通事故の損害保険に関する示談交渉について、中立的な立場から被害者の相談を受け付けています。また、交通事故の被害者から各保険会社への苦情窓口の役割も受け持ちます。
加害者側の保険会社の対応に不満を感じる場合は、苦情解決手続きを申し立てることで、センターから苦情が入るという仕組みです。解決が難しい場合は、センターが弁護士による和解案を提示し、調停のあっせんも行います。
交通事故でやってはいけない保険会社が嫌がること
交通事故の被害者側の保険会社にも、法に違反する行為やクレーマーまがいの行為など、いくつかの嫌がることはあります。主な例を3つ挙げます。
不正請求や根拠がない請求をする
不正な請求や、根拠のない請求も、保険会社が嫌がることの一つです。保険会社は、交通事故による損害の客観的な証拠や、法的な根拠に沿って賠償金を支払います。
しかし、法律を逸脱した行為は、被害者側・加害者側どちらの保険会社も嫌がることの一つです。こうした脱法行為が判明した場合は、弁護士も依頼を受けることはなく、詐欺罪で訴えられることもあります。
また、休業補償の請求に必要な、事故前の収入の証明ができないこともあります。そのままでは休業損害額の確定や、支払いができません。この場合は、収入の裏付けとなる客観的な資料を探す必要があります。
法的に認められない要求をする
交通事故の賠償金の支払いは、法で定められた基準によって行われます。例えば、時価基準を超えた修理費や、修理費の代わりに新車の購入による弁償を求めるといった要求は、法的な根拠がないため保険会社も承諾しません。こうした要求を飲ませることにこだわると、解決までの期間も長引きます。
加害者側の保険会社による示談額に納得がいかない場合は、自分が考える要求が法的に妥当かどうかの判断を弁護士に依頼するのも一考です。
3. 民事上の責任(損害賠償)
被害者に対する民事上の損害賠償責任のことで、自賠責保険・自動車保険はこの損害を肩代わりします。
被害者の人身損害のほか、車両の修理費などの物損が対象です。
人身損害は、死亡した場合の葬儀費、傷害の場合は治療費、被害者が事故にあわなかったら得られたであろう利益(逸失利益)、慰謝料などから成ります。
加害者と直接やり取りをする
加害者が任意保険を契約している限り、賠償金の支払いも加害者側の保険会社が行います。このため、加害者と直接連絡を取っても賠償金を追加で請求することはできません。
むしろ、加害者側の保険会社が支払いを止めたり、その後の交渉を弁護士に依頼するなど、被害者側に不利な要件を自ら作る結果となる可能性があります。また、連絡を取った時の言動によっては、逆に恐喝罪などに問われることも想定されます。
交通事故で保険会社が弁護士特約の使用を嫌がる理由
弁護士特約は、損害保険に付けられる特約の一つで、保険会社が弁護士への依頼費用の一部を補償するものです。被害者側の保険会社が、弁護士特約を使うことを嫌がる理由を説明します。
保険会社が弁護士特約を嫌がる理由
保険会社にとって、弁護士特約を使われることは、弁護士に依頼した費用の分だけ金額の負担が増えることと同義です。被害者が付けた弁護士が保険会社と契約をしていない人であった場合は、特にその傾向が強くなります。
また、示談交渉に争いが起きていない場合や、事故が軽微なものであった場合も、保険会社の立場からは嫌がることもあります。しかし、被害者からみるとその示談内容が妥当なものかどうかは判断がつかないことが多く、専門家である弁護士の視点を挟むことも一考すべきです。
弁護士特約を使用した方が良いケース
弁護士特約は、裁判を起こすつもりがないとしても、賠償金や後遺障害等級の認定をより有利にしたい場合に有効です。具体的には、加害者側の保険会社が提示してきた示談金額の妥当性の確認を弁護士に依頼できます。
また、交通事故の後遺障害をより高い等級で認定したり、認定された内容に異議申し立てをする場合にも弁護士に依頼します。
弁護士特約を使用するメリット
弁護士特約を使うことの最大のメリットは、弁護士に加害者や保険会社との交渉の代理人を依頼することで、心理的な負担がなくなる点です。また、損害額の算出や、専門的な書類の作成を一任でき、弁護士基準での賠償金支払いを引き出せる可能性もあります。
交通事故で加害者側の保険会社が不誠実な対応をする理由
加害者側の保険会社が、交通事故での対応を不誠実にする理由を3点にまとめます。保険会社の性質上、やむを得ない部分もあります。
理由①利益を出すため
保険会社の対応が不誠実になる最大の理由は、あくまでも営利企業であるためです。任意保険の保険料は、交通事故の統計を基準として、自社の利益を確保できるように設定されています。
このため、自社が契約した全ての事故で被害者の主張を受け入れていくと、支払った保険金の分だけ利益が減ります。よって、治療費を打ち切りを通告したり、自賠責基準や自社独自の任意保険基準で示談交渉をまとめ、会社としての支出を減らすことが必須です。
理由②多くの事件を扱っているため
保険会社の担当者は、各自が多くの案件を抱えています。その案件を迅速に処理する必要から、個別の案件ごとの被害者に丁寧な対応が取れません。
逆にいうと、1案件あたりの処理に時間がかかるのは、担当者の嫌がることといえます。被害者側にとっては示談を早く終わらせることを条件に、加害者側の担当者が社内の決裁を取りやすい内容を提示することも対応の一つです。
理由③加害者の主張を代弁する立場だから
加害者側の保険会社は、当然のことながら、顧客である加害者と契約をした代理人です。加害者に条件を引き出してもらうことを目的としているため、主張する内容も加害者寄りのものとなります。
交通事故で保険会社が嫌がることを知っておこう
交通事故の対応で、保険会社が嫌がることとして、被害者側が正しい知識を持っていたり、弁護士の介入などがあることが分かりました。
また、被害者が加害者に直接連絡を取ることは控えるべきです。特に、不正・不当な要求は保険会社の嫌がることであるばかりか、恐喝罪や詐欺罪といった別の罪で訴えられる可能性もあります。
この記事のライター
東雲修
世の中の「ちょっと気になること」を日々集めて、読者の皆様に分かりやすく解説していきます。交通事故での「困った!」が、「分かった!」に変わる助けになれば幸いです。
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