交通事故の加害者が無保険の場合はどう対応すればいい?リスクや対処方法を紹介

交通事故の加害者が無保険だった場合、どのように対処したらよいのかご存じでしょうか。この記事では、加害者が無保険だった場合のリスクや無保険で考えられるケース、対処方法などを紹介しています。ぜひこちらを参考にしてみてください。

目次

  1. 交通事故の加害者が無保険である場合に考えられるリスク
  2. 無保険で考えられる2つのケース
  3. 加害者が無保険だった場合の相談先
  4. ひとりで抱え込まずに相談しよう

交通事故の加害者が無保険である場合に考えられるリスク

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自動車に乗る場合、自賠責保険への加入は運転者の義務です。一方、意保険への加入は、個人の判断に委ねられています。

このような理由から、任意保険に未加入の運転者が一定数います。また、強制保険ではありますが、何らかの理由により、自賠責保険にも未加入の場合もありますので、注意が必要です。

ここでは、加害者が無保険だった場合に考えられるリスクについて紹介します。交通事故の加害者が無保険だったという方は、ぜひこちらを参考にしてみてください。

出典・参照:任意保険とは。自賠責保険との違い|チューリッヒ保険会社

弁護士 大橋史典
交通事故の加害者が任意保険に加入していなかった場合、自賠責保険の上限を超える分が補償されない、車の修理費などの物損に対する補償がされないなどのリスクがあります。また、自賠責保険にも未加入であった場合は、治療費や休業損害なども支払われないというリスクがあります。この記事では、このような不都合を回避するための方法を弁護士が解説しています。

加害者本人と示談交渉を行う必要がある

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加害者が任意保険に加入している場合は、加害者の保険会社と示談交渉をすることができます。そのため、加害者と直接関わることはほとんどありません。

しかし、加害者が任意保険に未加入であった場合は、加害者本人と交渉をしなければなりません。

そのため、示談交渉がスムーズに進まないといった不都合を受ける場合がありますので、注意が必要です。

出典・参照:交通事故の相手が無保険ならどうする?慰謝料請求6つの対応|アトム法律事務所弁護士法人

慰謝料の請求額が低くなる可能性がある

Tumisu

交通事故に遭い、ケガを負って病院に入院・通院をしなければならなくなった場合や後遺障害が残った場合などには、入通院期間や認定された後遺障害の等級に応じた慰謝料を請求することができます。

また、慰謝料の金額を算定する基準は、「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」の3つがあり、加害者が任意保険に未加入であった場合は、任意保険基準で計算することができないため、最も低額である自賠責基準で慰謝料が計算されることになります。

また、自賠責保険にも未加入であった場合は、自賠責基準にも準拠されず、適切な慰謝料を受け取ることが困難になります。加害者に資力があればよいのですが、資力がない場合は、慰謝料の請求自体も現実的ではありません。

加害者が無保険であった場合は、保険に加入している場合に比べ、慰謝料の金額が低くなることを押さえておきましょう。

出典・参照:交通事故慰謝料の「任意保険基準」とは?慰謝料3つの基準と計算方法を解説| アトム法律事務所弁護士法人 

自賠責保険では物損に対する補償がされない

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交通事故で加害者が任意保険に未加入だった場合、強制加入である自賠責保険で治療費や慰謝料などを補償してもらうことになります。

しかし、自賠責保険は人身事故(治療費など)による損害の補償を目的としており、物損(修理費など)の補償は対象外となります。そのため、物損に対する補償は、自賠責保険をあてにできないのです。

加害者が自賠責保険には加入していたとしても、物損に対する補償は期待できないというリスクがあることに注意しましょう。

出典・参照:交通事故の相手が無保険ならどうする?慰謝料請求6つの対応|アトム法律事務所弁護士法人

無保険で考えられる2つのケース

無保険とは、任意保険に未加入のケース、自賠責保険にも未加入といった、2つのケースが存在します。

任意保険に加入していなくても、自賠責保険に加入していた場合に行える対処方法があり任意保険だけでなく自賠責保険にも未加入の場合の対処方法は、個別のケースによって変わります。

下記では、自賠責保険のみ加入している場合と、任意保険・自賠責保険の双方とも未加入のケースについて紹介します。あわせて、それぞれのケースの対処方法についても紹介しています。

もし、加害者から無保険であると明示されても、自賠責保険には加入しているのか、任意保険・自賠責保険双方とも加入していないのか、確認してから対処方法を考えるとよいでしょう。

弁護士 大橋史典
交通事故に遭い、加害者の連絡先などを確認するときに、保険会社の情報も必ず聞いてください。この際に、「保険に加入していない」と言われた場合には、その後の対応に影響を与えるため、任意保険のみ未加入なのか、または、自賠責保険にも未加入であるのかを確認しておくとよいでしょう。

ケース1 任意保険に未加入の場合

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加害者が任意保険に未加入でも、自賠責保険には加入していた場合、自賠責保険から補償を受けることができます。

ただし、自賠責保険では、さきほども解説しましたが、物損に対する補償が行われません。物損については自賠責保険に請求できないため、注意してください。

また、自賠責保険の補償額には上限があります。

傷害による損害に対しては、治療費、休業損害、慰謝料、文書料などの費用を合わせて、上限120万円まで補償されます。

次に、後遺障害による損害に対しては、認定された後遺障害の等級によって変動し、逸失利益、慰謝料を含めて、4,000万円(要介護1級)から75万円(14級)の範囲で変わります。

最後に、死亡による損害の場合は、葬儀費、逸失利益、慰謝料を含めて、上限3,000万円まで支払われます。

出典・参照:自賠責保険について知ろう!|国土交通省

ケース1の場合の対処方法

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加害者が任意保険に未加入の場合には、加害者の自賠責保険に「被害者請求」を行いましょう。請求の際には、さまざまな書類が必要になるため、請求をする際には、専門家である弁護士に相談してみるとよいでしょう。

このように、加害者が任意保険に加入していない場合でも、自賠責保険による補償を受けることができます。しかし、自賠責保険の賠償金の上限を超える部分については補償されません。そのため、ケース1の場合では、適切な賠償金を受け取れるかが重要なポイントです。

この場合、自賠責保険の上限を超える部分については、加害者本人に請求することができます。

加害者本人に直接請求する場合、加害者本人と示談交渉をする必要があります。そのため、交通事故に遭ったときに、請求に必要な加害者の氏名や住所、電話番号といった連絡先を聞いておきましょう。

加害者との示談交渉では、賠償金額や支払い方法などを決めます。なお、合意した内容は、公正証書で残しておくとよいでしょう。支払いがなかった時に、裁判を起こすことなく差し押さえが可能になるためです。

もっとも、加害者本人に自賠責保険の上限を超える部分を請求する場合、加害者に資力がなければ実現されないでしょう。このような場合には、被害者自身が加入している任意保険を活用する方法が考えられます。

この方法により、自賠責保険の上限を超えていても、実際に被った損害の補てんを受けることができ、物損に対する損害にも対応することができます。被害者ご自身が加入している自動車保険の内容を確認しましょう。

なお、業務中や通勤中などに交通事故にあった場合は、労災保険を適用できる場合がありますので、検討するとよいでしょう。

出典・参照:交通事故の相手が無保険ならどうする?慰謝料請求6つの対応|アトム法律事務所

ケース2 任意保険・自賠責保険の双方とも未加入

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自動車保険は任意保険のため、交通事故の加害者が任意保険に未加入である場合が想定されます。

一方で、自賠責保険は、強制保険のため、自動車の所有者は、必ず加入しなければなりません。

しかし、自賠責保険の有効期限が切れていた場合など、まれに、自賠責保険にも未加入という人がいます。

このような場合には、下記で解説している方法で対処するとよいでしょう。

出典・参照:交通事故に関するお役立ち情報|国土交通省

ケース2の場合の対処方法

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加害者が自賠責保険にも未加入であった場合、まずは、加害者本人に賠償金を請求しましょう。しかし、加害者によほどの資力がない限り、加害者から賠償金を受け取ることは実現しないでしょう。

このような場合でも、泣き寝入りする必要はありません。加害者が自賠責保険にも未加入だった場合には、政府保障事業を利用することができます。

政府保障事業とは、ひき逃げに遭った場合や加害者が自賠責保険に未加入であったときなど、被害者が補償を受けることができない場合に、政府が自動車損害賠償保障法に基づいて行う、被害者の損害を補てんする制度です。

また、政府保障事業で補てんされる範囲や金額の上限は、自賠責保険と同じです。そして、健康保険や労災保険からなどの社会保険から給付を受けていた場合には、その分を差し引いて支払われます。

万が一、加害者が自賠責保険にも未加入だった場合には、政府保障事業の利用を検討してみましょう。

出典・参照:損害賠償を受けるときは?|国土交通省

ケース1・2のどちらの場合でも行える対処方法

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ここでは、上述したケース1、2のどちらの場合でも行うことができる対処方法を紹介します。

もし、加害者が運転していた車が、本人の物ではなく、借りた車であった場合、車の所有者には「運行供用者責任(自動車損害賠償保障法第3条)」が発生します。そのため、車の所有者に対して損害賠償請求をすることができます。加害者が無保険でも、車の所有者が加入している任意保険や自賠責保険によって補償されるでしょう。

ただし、次のような場合には、運行供用者責任が適用されない場合があります。たとえば、盗難された車だったケース、所有者との返却期限を破って使用していたようなケースでは、運行供用者責任が認められる可能性が低くなります。

また、加害者がタクシー運転手や宅配便などの運転手であった場合、この加害者を雇用している使用者に「使用者責任(民法第715条)」が生じる場合があり、責任が認められれば、加害者を雇用している使用者に対して、損害賠償を請求することができます。ケースによって判断が異なりますので、弁護士に相談してみるとよいでしょう。

出典・参照:自動車損害賠償保障法|e-Gov法令検索サイト

出典・参照:民法|e-Gov法令検索サイト

加害者が無保険だった場合の相談先

これまでにも解説してきましたが、交通事故の加害者が自賠責保険にも未加入であった場合、加害者本人と交渉することになり、適切な賠償金を受け取れるのか、不安になることが予想されます。

また、当事者同士のため、話の食い違いが生じたり、お互いの主張に納得できない、感情的になってしまい交渉が進まないなどのトラブルになることもあるでしょう。

ここでは、このような場合に相談できる窓口を解説します。主な相談先として、国や自治体などの制度を利用する方法と、弁護士に相談する方法があります。

国や自治体の交通事故相談窓口

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国土交通省では、交通事故の被害者などからの様々な相談に対応するため、交通事故相談所を都道府県や政令指定都市に設置しています。

例えば、東京都には、「東京都交通事故相談所(本所)」が設置されています。国土交通省のHPから、お住まいの自治体の交通事故相談所を探し、相談してみるとよいでしょう。 

また、各市町村が交通事故相談窓口を設置している場合や全国の交通安全協会が相談窓口を設置していることもあります。

なお、各相談所では、相談できる時間帯が決まっています。月曜日から金曜日まで対応しているところもあれば、特定の曜日のみ対応している場合や相談できる時間帯もそれぞれの相談所で異なるため、受付時間に注意して相談してみてください。

出典・参照:交通事故相談活動の推進|国土交通省

弁護士などの専門家に相談

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交通事故に遭った時に相手が無保険だった場合、法律事務所などで専門家に相談することを検討するとよいでしょう。

交通事故の当事者同士で示談交渉を行うと、賠償金額や支払い方法などを巡って、言い争いになることや、相手が支払わないと言いだして泣き寝入りしてしまうという事態になりかねません。このような事態を避けるためにも、冷静な第三者に間に入ってもらうことが大切です。

また、損害賠償金を請求する際には、必要書類を揃える必要がありますし、示談書の作成や被害者請求をするなど、専門的な手続きを行う場合が多くなってきます。心配がある際には、法律事務所を利用し、弁護士に相談することをおすすめします。

なお、初めから法律事務所を利用することが難しい場合は、弁護士による無料相談や示談あっ旋、審査などを受け付けている「(公財)日弁連交通事故相談センター」に相談するという方法もあります。

弁護士 大橋史典
交通事故に遭ってしまった場合、弁護士に相談・依頼をすると、加害者が無保険であった場合の対応以外にも、弁護士基準で慰謝料や休業損害などを請求することができ、賠償金の獲得が期待できます。また、加害者側との示談交渉を代わってもらえるため、治療に専念することもできます。そして、加入している自動車保険などに「弁護士費用特約」が付いている際には、弁護士費用を負担することは原則ありませんので、相談・依頼を検討するとよいでしょう。

ひとりで抱え込まずに相談しよう

DariuszSankowski

交通事故に遭うだけでも大変ですが、加害者が任意保険や自賠責保険にも未加入の場合には、被害者側にさまざまな不都合が生じる可能性があります。

加害者が誠意をもって対応し、支払うという意思を見せてくれればよいですが、資力がない場合や自分もケガをしたなどの理由をつけて支払わないという対応をされてしまうことが考えられます。

しかし、加害者が支払いの意思を示していなかったとしても、泣き寝入りする必要はありません。加害者が自賠責保険に未加入であっても、本人に損害賠償を請求したり、政府保障事業を利用することができます。

そして、大切なことは、自分ひとりで抱え込まず、問題があることを信頼できる人や専門家、相談センターに相談するということです。

もし、交通事故の加害者が無保険だった場合には、このような対処方法を行うとよいでしょう。

この記事のライター

ドクター交通事故運営

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