交通事故で手首の痛みが出る原因を解説!治療法や後遺障害についても
交通事故で手首に痛みが出る理由について、詳しく解説します。交通事故により、手首の関節がどのような損傷を受けたのか、痛みの原因と具体的な症状を説明!また、検査方法と治療法も紹介します。手首の痛みによる後遺障害等級や、慰謝料の目安も記載しているため、参考にしてください。
目次
交通事故で手首に痛みが出るのはなぜ?
交通事故による追突の衝撃は、私たちが予想しているよりも大きな痛みを当事者に与えます。例えば時速40kmで走行する車が交通事故で衝突した場合、その損傷は6mの高さから落下した時と同等とされているほどです。
こうした交通事故では、手首の関節にも深刻な症状が出ている可能性があります。交通事故後、手首に痛みが出た場合の具体的な治療方法や、後遺障害が残ってしまった場合の慰謝料の目安をまとめます。
交通事故で手首に痛みが出る原因と症状
交通事故発生時に、手首に強い衝撃がかかった時に痛みが出ることがあります。具体的には、車であれば衝突時にハンドルを握っていたり、バイクや自転車であれば転倒して地面に強く手を付いたといったケースです。
手首の痛みの原因としては、関節部の損傷や骨折、脱臼などが考えられます。それぞれのケースを調べました。
原因①TFCC
TFCC(三角繊維軟骨複合体)は、手首の小指側にある、靭帯や軟骨の集合体です。手首にかかる衝撃を吸収したり、動きを滑らかにする役割があります。
このTFCCを、交通事故による損傷で傷めてしまうと、手首に違和感や腫れ、痛みを感じるようになるほか、手首を捻るような動きに制限がかかります。症状としては捻挫に似ているため、痛みがあっても、そのうち治るだろうと放置されることも多いものです。
しかし、手首を動かす動作で痛みを感じたり、交通事故後しばらくして極端に握力が落ちたのであれば、交通事故でTFCCを損傷した可能性があります。
TFCCの損傷の診断には、整形外科でMRIを撮影してもらう必要があります。靭帯と軟骨で構成されているTFCCは、レントゲン撮影では写らない組織体であるためです。痛みがあっても、一般的な骨折と違ってMRIを通さないと具体的な症状が分かりにくいのです。
原因②腱鞘炎(ドケルバン病)
交通事故によって受ける、痛みを感じる損傷の一つとして、腱鞘炎があります。中でも、ドケルバン病とも呼ばれる狭窄性腱鞘炎は、親指を動かした時、手首から親指、手の甲にかけて痛みや腫れを引き起こすというものです。
このほか、指の屈筋腱と靭帯性腱鞘の間に炎症が起きた場合は、ばね指となることもあります。
原因③尺骨茎状突起骨折
尺骨茎状突起は、TFCCが付着した部分の骨をいいますが、この部位が交通事故により骨折してしまった場合も手首に痛みが出ます。尺骨茎状突起骨折は、レントゲンに写るため診断は比較的容易です。
尺骨茎状突起骨折の治療を進める中で、痛みが残るようであれば、骨折箇所の接合や、骨片を取り除きTFCCを縫合する手術を行います。
原因⑤遠位橈尺関節の脱臼
遠位橈尺関節は、手首の関節のうち、橈骨と尺骨で構成されている関節です。この部位が、交通事故の衝撃で、脱臼してしまうことがあります。
遠位橈尺関節が脱臼すると、多くの場合、橈骨の骨折も同時に起きています。症状としては、上に飛び出した尺骨の部分の痛みや、手首を捻る動きがやりにくくなるといったものです。
手首に痛みがあるときの検査方法と治療法
交通事故で手首を負傷した時、整形外科で行う検査の方法と、症状別の治療法をまとめます。
手首の検査方法
交通事故後の手首の痛みの原因には、TFCCのようにレントゲンでは写らない部位の損傷もあります。このため、痛みが長期にわたって続くようであれば、整形外科を再受診し、別の検査を依頼することになります。
検査の方法は、MRI検査のほか、関節に注入した造影剤の漏れがないかを診る関節造営検査、超音波による検査などです。
治療法①固定治療
固定治療は、保存療法の一つで、出血を伴わない治療の方法です。具体的には、ギプスやテーピング、サポーターを使って手首を固定します。損傷による痛みの度合いが強い場合はギプスを、軽度であればテーピングやサポーターを用いての治療となります。
手首用のサポーターは、整形外科以外でもスポーツ用品店などで購入することができます。患部を固定することで、若干でも痛みを抑えることができます。
治療法②消炎鎮痛剤
手首の痛みの原因がTFCCや腱鞘炎である場合は、消炎鎮痛剤も有効な治療方法となります。消炎鎮痛剤の処方も、固定療法と同じく保存療法の一種です。消炎鎮痛剤は、湿布やクリームに配合されており、痛みを抑える効果があります。
治療法③手術
手首への手術は、メスで手首を切開して患部を治療するものが主流です。近年は、関節に内視鏡や手術の器具を挿入して縫合する関節鏡視下手術、傷めた手首があるほうの尺骨(腕の長い骨)を短くして負荷を減らす尺骨短縮術もあります。
尺骨短縮術は、尺骨の長さが痛みを誘発している場合に行われる術式です。
手首の痛みが残ったときの後遺障害等級と慰謝料
手首に痛みが残ってしまった場合に、後遺障害の認定を受ける可能性がある等級と、その慰謝料をまとめます。
機能障害(運動障害)の場合
手首や前腕部の動きに支障が残る機能障害は、一上肢の三大関節(肩、肘、手)中の一関節の用を廃したもの、または痛みや障害を残すものと定義されています。
手首の後遺障害の場合、完全に機能が失われた場合は8級6号、重度なら自賠責保険の10級10号です。また、比較的軽度であれば12級6号の認定が下りる可能性があります。
神経障害の場合
交通事故による手首の痛みが残っていた場合も、抹消神経障害として認定が下りる可能性があります。神経障害による後遺障害は、局部に頑固な痛みなどの神経症状を残すものと定義されています。重度であれば機能障害と同等の12級13号、比較的軽度であれば14級9号です。
慰謝料の目安
機能障害や神経障害による損傷や痛みが、後遺障害として認められた場合の等級と、自賠責保険による慰謝料の金額は以下のとおりです。最も重い全廃として後遺障害が認められた場合、819万円の慰謝料が支払われます。
障害の程度 | 障害等級 | 自賠責保険額 |
---|---|---|
機能障害(全廃) | 8級6号 | 819万円 |
機能障害(重度) | 10級10号 | 461万円 |
機能障害(軽度) | 12級6号 | 224万円 |
神経障害(重度) | 12級13号 | 224万円 |
神経障害(軽度) | 14級9号 | 75万円 |
後遺障害等級認定を受けるときのポイント
痛みを伴う後遺障害の認定に必要な手続きと、その際に認定が降りるためのポイントを以下に挙げます。
ポイント①主治医としっかり話し合う
後遺障害の認定を受けるためには、主治医と治療をどの程度行うのかを綿密に話し合う必要があります。整形外科医であっても、後遺障害等級の認定について詳しい医師は少ないものです。一方、保険会社の治療費を支払う義務は症状が固定される段階までになります。
そのため、治療を終了し、症状が固定される時期を決めておくことと、問診で主治医に症状をなるべく正確に伝えることが大切です。
ポイント②MRI検査を受ける
交通事故による手首の痛みの原因はいくつかありますが、正確な治療や症状の把握のためには、MRI検査の受診が必須です。
痛みの原因が尺骨茎状突起骨折であればレントゲンでも判断できますが、繊維質であるTFCCの損傷はMRIでなければ患部が映りません。そのため、手首の痛みが長引くようであれば、MRI検査を主治医に依頼するのも一つの方法です。
ポイント③後遺障害申請書を正確に作成してもらう
交通事故による手首の痛みの中でも、TFCCの損傷は治療をしても可動域に制限ができたり、痛みが残る可能性があります。こうした症状を主治医に伝え、正確な後遺障害診断書を作成してもらうことが大切です。
注意点は二つあります。一つは、精神・神経の障害のうち他覚症状及び検査結果の欄にTFCCの損傷を記入しているかです。もう一つ、上肢・下肢等の障害欄に手関節の曲げ伸ばしの角度が左右ともに記載されているかどうかも確認します。
交通事故で手首に痛みが出る原因を知っておこう
交通事故で手首に痛みが出た場合の原因には、主に靭帯や軟骨の損傷であるTFCCや腱鞘炎、骨折や脱臼があることが分かりました。特に、自分でも打撲や捻挫と見分けがつかないTFCCは、放置しておくと手首の後遺障害が残ってしまうなどの危険性があります。
もしも後遺障害が残るような損傷となった時は、後遺障害認定を受けられるように診断書を取り、交通事故後の生活の負担を少しでも減らしましょう。
この記事のライター
東雲修
世の中の「ちょっと気になること」を日々集めて、読者の皆様に分かりやすく解説していきます。交通事故での「困った!」が、「分かった!」に変わる助けになれば幸いです。
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