交通事故で胸の痛みが出る原因を解説!症状や治療法についても説明
交通事故で胸の痛みが出る原因をまとめています。交通事故で外傷を受けるパターンや、痛みが出やすい症状も説明!また、痛みの原因に応じた検査内容と治療法も紹介します。胸部打撲による後遺障害が残ったときの、等級認定についても解説するため、参考にしてください。
目次
交通事故で胸の痛みが出る原因や症状を解説
交通事故で胸部に衝撃を受けることで、痛みを生じたり後遺障害が残ったりする可能性があります。また、痛みを伴う原因や症状にも人によって違いがあり、検査内容や治療方法もさまざまです。
本記事では、交通事故による胸の痛みの原因について、徹底解説します。後遺障害等級についても説明するため、チェックしてみてください。
交通事故で胸を痛める原因
原因①バンパー外傷
交通事故で歩行者が車にはねられるケースで、最も多いのがバンパー外傷です。車のボンネットに大人がぶつかると、体ごと跳ね上げられて、道路に落下し胸部を打ちます。また、子供の場合は車にそのまま押し倒されて、胸部に打撃を受けてしまうでしょう。
ちなみに、ボンネットがない型の車であれば、大人と子供のどちらでも、衝突したときは車体の前面にぶつかります。その際に、胸部も含んだ全身に打撃を受ける可能性が高いです。
原因②シートベルト外傷
交通事故に遭ったときの衝撃で、シートベルトが胸やお腹を締め付けることが原因です。シートベルトが身体にくい込み、内臓や背骨に負担がかかり、痛みを感じたり怪我をしてしまいます。
シートベルトをゆるく締めていたり、背もたれを後ろへ大きく傾けていた場合に、起こりやすい外傷です。
原因③エアバッグ外傷
エアバックは、交通事故で受ける体への衝撃を吸収し、緩和するための装置です。また、エアバックは乗車している人を保護するために、衝撃があると瞬発的に膨らむ仕組みになっています。
爆発的に膨らむ際に、大きなエネルギーが発生することで、胸などの上半身に外傷を受けることがあります。
原因④ハンドル(ドライバー)外傷
交通事故の正面衝突で、シートベルトをしていなかった場合に、ドライバーが最も多く受ける外傷の種類です。ぶつかった衝撃で、ドライバーの体は前方へ打ち付けられます。その際に、頭や顔はフロントガラスへ、胸や下腹部はハンドルにぶつかることが多いです。
シートベルトを装着していない違反行為で、胸への外傷などを受けた場合は、過失相殺の対象になる可能性があります。
胸の痛みが出やすい症状
症状①骨折
胸部を骨折している場合は、深呼吸をしたり運動をしたりするときに、強い痛みを感じます。また、肋骨に複数の骨折があると、その内側にある内臓も、損傷を受けている可能性が高いです。
助骨の上部が骨折すると、胸付近の血管が損傷していることもあります。また、下部の場合は、肝臓、ひ臓、じん臓などを傷めている事例も見られます。
胸骨を骨折している場合は、それほど痛みを感じないケースもありますが、注意が必要です。なぜなら、胸骨のうしろ側には、心臓や食道、気管や気管支などがあり、損傷している可能性もあるからです。
症状②肋間神経痛
咳やくしゃみ、前かがみになるなど、肋間神経に負担がかかった際に、痛みを感じるのが特徴です。肋間神経の痛みは、原因によって2種類にわかれます。1つ目は、病気や外傷のような明確な原因がなく、痛みの症状がある原発性肋間神経痛です。
2つ目は、病気や外傷、解剖学的異常により、肋骨神経が刺激されて痛みを生じる、続発性肋間神経痛になります。交通事故で痛みを感じる場合は、外傷の原因に該当する続発性肋間神経痛です。
肋間神経痛とは、12個ある胸椎(胸髄)の間から左右に対となって出ている、胸腹部に分布する合計24本の末梢神経(胸髄神経)が痛む症状をいいます。
痛みが生じるのは特定の肋間神経で、主に背骨から片側の1本の肋骨に沿った、限られた部分です。発作的に激しい痛みが生じますが、比較的早く治まります。
症状③胸郭出口症候群
胸郭出口とは、頭や腕の神経や血管が通る、鎖骨と肋骨上部の隙間のことです。交通事故によって、胸郭出口に衝撃や圧迫を受けると、肩から指先にかけて痛みを発症します。
また、肩甲骨のまわりが傷んだり、肘や手首が痺れることも、多く見られる症状です。他にも、握力の低下や手先の不快感などを生じます。
症状④椎間板ヘルニア
椎間板は、脊髄のブロックとブロックの間にある軟骨のことです。交通事故で衝撃を受けた際に、椎間板が本来ある位置から後方へ突出して、神経を圧迫すると痛みを生じます。
このことが原因で、椎間板ヘルニアになり、痺れや痛みの症状を伴うのです。頸部や腰部に発症するケースが多いですが、それ以外の箇所に生じることもあります。
症状⑤外傷性大動脈解離
交通事故で胸部を強く打撲すると、大動脈解離を発症するケースもあります。主な症状は、心臓の大動脈弁が破壊し、血液が逆流します。
また、臓器などに血行障害が出たり、大動脈破裂になったりする可能性もあり、どれも生死に関わる症状です。自覚症状がなく気付くのが遅れ、突然意識を失うこともあります。
症状⑥気胸
交通事故で胸に受ける衝撃が強いと、胸膜や肺が破裂し、気胸という病気を発症することもあります。肺の中の空気が、胸に貯まることが原因です。
また、肺が膨らなくなるため、胸の痛みや生き苦しさを感じます。重症になると、大動脈が損傷して、心臓停止になってしまう可能性もあります。
症状⑦その他内蔵の損傷
交通事故で損傷を受けるのは、胸だけではありません。下腹部の場合は、肝臓や脾臓、腎臓を傷めてしまうケースも多いです。
また、事故直後に検査をしただけでは、気付けないこともあるでしょう。そのため、あとになって少しでも体の異常を感じたら、再度病院で受診をしてください。
胸の痛みに対する検査と治療法
胸の痛みがあるときに行う検査
検査内容は、交通事故で衝撃を受けた程度や、どのようなダメージがあるかによって異なります。軽症であれば、痛みの原因となっている骨折などがないか、レントゲン撮影をするのが一般的です。
また、重症とみられるケースでは、CT画像検査を行って、内臓に損傷がないかも確認します。さらに詳しく臓器や血管を調べるために、血管造影検査を行うこともあります。
治療法①打ち身や骨折の場合
打ち身など軽症な場合の治療は、痛みのある患部を氷水で冷やして安静にします。湿布や鎮痛剤を併用して、約1週間で完治するのが一般的です。
また、肋骨を骨折した場合は、手術を行わずに治療をすることが多いです。複数の肋骨を骨折していると、正常な呼吸が困難になる症状の、フレイルチェストを起こすことがあります。そのような場合は、痛み止めを使用して、人工呼吸管理を行う方法も取り入れます。
治療法②神経症状の場合
肋骨神経通が軽度から中等度の場合は、鎮痛剤などの内服や湿布を貼りながら、運動治療やリハビリを行います。また、持続性でれば、痛みの原因となる外傷の治療も必要です。それぞれの状態にあった、治療を受けることになります。
また、原因疾患の治癒が困難な場合や、内服治療が効かない場合は、肋骨神経ブロック注射をする方法もあります。
治療法③内蔵損傷の場合
気胸を発症した場合は、胸に貯まった空気を抜くための治療をします。胸腔ドレーンという胸を膨らませる管を挿入し、治癒するまで管理を行います。
大動脈損傷の場合は、修復するための手術が必要です。心肺停止になった際は、AEDを用いた電気ショックを行うこともあります。
胸の痛みで認定される可能性がある後遺障害等級
神経症状の場合
交通事故による怪我で神経が圧迫されて、痛みやしびれ、麻痺などの症状が出ることがあります。また、治療を続けても回復の見込みがない場合は、医師に症状固定と診断され、後遺症とみなされます。
後遺症が残った場合、他覚的所見と医学的な証明ができれば、認定される後遺障害等級は12級13号です。医学的な証明が難しく説明だけを行った場合は、14級9号に認定される可能性があります。
骨の変形障害の場合
治療を受けた結果、骨は接合できても変形をしてしまうケースがあります。これを変形治癒といい、交通事故前の正常な骨の位置からずれた状態のことです。肋骨を骨折したことで後遺障害が残った場合は、12級5号または14級9号に認定される可能性があります。
内蔵損傷の場合
外傷性大動脈解離の後遺障害が残った場合は、胸腹部臓器の障害となります。後遺障害等級は11級10号に相当し、労務の遂行に支障があることが条件です。
また、胸腹部臓器で循環器障害とみなされる認定基準は、大動脈に偽腔開存型の解離を残すものとされています。これは、血圧の急激な上昇を避けるために、重労働を制限されるためです。
交通事故で胸の痛みが続くときはすぐに受診しよう
交通事故に遭うと、胸を打撲する可能性は非常に高いです。打撲とはいえ、さまざまな箇所に痛みを感じたり、後遺障害が残ることもあります。
痛みが続くときは我慢をせずに、速やかに病院で受診してください。また、後遺障害が残った場合は、後遺障害等級認定の申請手続きも行いましょう。
この記事のライター
宮内直美
最新の情報や疑問に思ったことなど、調べることが好きなフリーライターです。交通事故の防止や対処法に役立つ情報を収集して、分かりやすく執筆します。
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