症状固定前に打ち切りを打診された場合の対応とは?後遺障害等級の申請も
症状固定と診断される前に、打ち切りを打診された場合の対応方法をまとめています。交通事故での治療費の打ち切りを、保険会社が打診してくる理由や、想定される時期も説明!症状固定まで治療を続ける必要性や、慰謝料についても解説するため参考にしてください。
目次
症状固定前に治療費の打ち切りを打診されたらどうする?
交通事故による治療費は、相手側の保険会社によって、支払われるのが一般的です。ある程度の期間で治療を受けた場合、保険会社から治療費の打ち切りを、打診してくることがあります。症状固定前に打ち切りを打診されると、不安になる人も多いでしょう。
本記事では、症状固定と診断される前に、打ち切りを打診された場合の対応方法を詳しく解説します。また、症状固定と診断されたあとの、対応の流れも説明します。
症状固定前に保険会社が治療費を打ち切りたい理由
症状固定とは?
症状固定とは、病院でこれ以上治療を続けても、回復の見込みがない状態のことです。症状固定であるかどうかの診断は、医師のみができます。したがって、保険会社が判断できるものではありません。
交通事故後から症状固定の診断を受けるまでは、加害者が加入している保険会社から、治療費や通院費が支払われます。また、保険会社から一方的に治療費を打ち切られた場合は、まだ症状固定でない可能性があります。
治療を続けていくうちに、治療の効果が薄れたり、一時的に痛みなどが緩和されても、数日で症状が戻ってしまうことを繰り返すような時期が来る場合があります。このように、適切な治療を受けたけれども、今後の治療効果が期待できない状態であれば、症状固定であると判断されることになります。
保険会社が治療費を打ち切りたい理由
加害者側の保険会社が、治療費を早めに打ち切りたいのは、必要以上に治療費の支払いをしなくてよいからです。
治療が終了した後からの期間は、保険会社が休業損害や障害慰謝料を、支払う必要はありません。つまり、治療が終われば、その分賠償金をおさえられるため、早く治療費を打ち切りたいのです。
症状固定までの期間の目安
症状固定までの期間は、個人によって症状が異なるためそれぞれです。ただ、保険会社には「DMK136」という目安になるものがあります。
DMK136のⅮは打撲で1ヶ月、Mはむちうちで3ヶ月、Kは骨折で6ヶ月のことをいいます。これらは、それぞれの症状固定に至るまでの推測期間です。
例えば、むちうちの治療が3ヶ月を経過すると、保険会社が治療費の打ち切りを、打診してくる可能性が高くなります。しかし、保険会社には治療を終了させる権限はないため、打診をされても、すぐに応じる必要はありません。
症状固定前に打ち切りを打診されたときに取るべき対応
対応①主治医に相談する
治療費の打ち切りについて、保険会社から電話や手紙で報告を受けることがあります。そのような場合は、落ち着いて対応しましょう。保険会社には、医師が症状固定と診断するまで、治療費を支払う義務があります。
まずは、保険会社に打ち切りになる理由を確認してください。その内容を自分の担当医師に伝え、相談します。医師がまだ治療が必要だと判断すれば、保険会社に引き続き治療費の対応を依頼しましょう。
対応②加害者の自賠責保険会社に治療費を請求する
治療費の対応を打ち切られたとしても、治療を続けることはできます。対応法は、自賠責保険会社に請求することです。治療費の打ち切りは、加害者側の任意保険会社が行います。したがって、加害者が加入している、自賠責保険会社に請求することが可能です。
ただし、自賠責保険の限度額は120万円です。すでに治療費で120万円を使用している場合は、請求できないため注意してください。
対応③健康保険や労災保険を利用する
治療を続ける場合は、健康保険を使って自分で支払う対応法もあります。あとで、症状固定と診断された際は、任意保険会社へ自分で支払った分の治療費を、請求することも可能です。
しかし、中にはすでに治療費を打ち切りにしているため、症状固定の診断後の支払いを、拒む保険会社もあるでしょう。また、交通事故に遭ったときが、通勤中や勤務中だった場合は、労災保険を使用できるケースもあります。
対応④自身の人身傷害保険を利用する
加害者側の任意保険会社に、治療費の打ち切りをされた場合、自分の任意保険から受け取れるケースがあります。ただし、自分の加入している任意保険に、人身傷害保険が付いていることが条件です。
保険会社によっては、人身傷害補償特約という名称を使用しています。自分の任意保険の契約内容を、確認してみましょう。
対応⑤弁護士に相談する
治療費の打ち切りを打診された場合は、相手側の保険会社と交渉していかなければなりません。この際に話がまとまらず、トラブルになるケースも多いです。自分で対応するのが困難であれば、弁護士に相談する方法もあります。
治療費の打ち切りが妥当であるか、今後の対応の流れなどを、弁護士がアドバイスしてくれます。また、治療費打ち切りの延長交渉も行ってくれるため、安心です。
症状固定前に打ち切りを打診されても通院を続けるべき理由
理由①後遺障害等級を認めてもらうため
交通事故による怪我が後遺症になった場合、後遺障害等級認定の申請をすることができます。等級が認定されると、後遺障害慰謝料の請求も可能です。後遺障害等級を申請するには、医師から症状固定と診断されることが条件です。
したがって、症状固定と診断される前に、治療をやめてしまうと、等級認定の申請をすることができません。そのため、治療の打ち切りを打診されても、症状固定と診断されていなければ、治療を続けたほうが良いです。
理由②傷害慰謝料が増額するため
症状固定と診断されるまで治療を長期間続けると、その分保険会社から支払われる障害慰謝料額も増えます。
また、後遺障害等級に認定されると、後遺障害慰謝料や逸失利益の請求が可能です。もしも、これらの慰謝料請求が認められれば、当初の慰謝料額よりも大幅に増えることになります。症状固定と診断されるまでは、根気よく治療を続け、独断でやめないようにしましょう。
症状固定で後遺障害等級認定を申請する手順
手順①医師に後遺障害診断書を作成してもらう
症状固定と診断されたら、まずは後遺障害診断書を取得しなければなりません。治療をしてもらった医師に、後遺障害診断書の作成依頼をしましょう。診断書の内容は、のちの後遺障害等級を認定する際に、重要な参考資料となります。
そのため、症状が正確に書かれているか、記載漏れはないかなど、しっかりと確認してください。記載内容に誤りがあれば、医師に診断書の再作成を依頼することも可能です。
手順②後遺障害等級認定の申請を行う
後遺障害診断書を取得したら、等級認定の申請を行います。また、申請手続きには、被害者請求と事前認定の2通りがあります。
被害者請求は、被害者自身が必要書類などを収集し、相手側の保険会社に請求する方法です。自分で行う手間はありますが、等級認定に有効な書類や資料を、提出することができます。
一方、事前認定は書類の収集をはじめ、全ての手続きを、相手側の任意保険会社に任せる方法です。自分でする必要がないため、負担は軽くなります。しかし、書類や資料の内容を、自分で確認できないというデメリットもあります。
手順③後遺障害等級認定の結果を受け取る
後遺障害等級認定を申請してから結果通知までの期間は、およそ1~2ヶ月です。被害者請求で行った場合は、相手側の自賠責保険会社から通知が来ます。それと同時に、認定された等級に応じた最低限度の後遺障害慰謝料を、受け取るのが一般的です。
また、事前認定で行った場合は、相手側の任意保険会社から通知が来ます。そして、認定された等級に基づき、任意保険会社との示談交渉を始めます。
手順④結果が不服な場合は「異議申し立て」も可能
自分の想定していた等級より低かった、等級認定されなかったという結果が出ることもあります。どうしても結果に納得ができない場合は、異議を申し立てることが可能です。しかし、やみくもに異議を申し立てても、結果は変わりません。
なぜ納得いく結果が出なかったのか、改善する方法はあるか、よく検討する必要があります。自分で行う方法がわからなければ、弁護士に依頼するのも良いでしょう。
症状固定前に打ち切りを打診されても安易に受け入れない
交通事故による怪我の治療中に、保険会社から治療費の打ち切りを打診されることがあります。また、治療費の支払いが打ち切りになったとしても、症状固定まで治療を続けた方が良いです。そうすることで、後遺障害等級認定の申請ができるからです。
医師に症状固定と診断されていなければ、治療費の打ち切りに慌てて応じる必要はありません。医師や弁護士などに相談し、適切な対応を行いましょう。
この記事のライター
宮内直美
最新の情報や疑問に思ったことなど、調べることが好きなフリーライターです。交通事故の防止や対処法に役立つ情報を収集して、分かりやすく執筆します。
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