仕事中の腰椎捻挫は労災認定される?休業損害についても解説!
仕事が原因で発症した腰椎捻挫が、労災認定されるケースを詳しく解説します。仕事中の腰椎捻挫について、原因や症状、治療方法を説明!また、腰椎捻挫が労災として認定される事例や受診方法、腰椎捻挫が原因で仕事を休んだ時の損害補償についても紹介します。
目次
仕事中の腰椎捻挫による労災について解説
仕事中に腰椎捻挫になってしまった時、治療のために会社を休む必要が出てくる可能性があります。勤めている会社を休むことで、収入も途絶えてしまいますが、そうした時に生活に与える損害を、ある程度補償してくれるのが労災制度です。
腰椎捻挫の原因や治療法、労災として認められるケースや、病院を受診した時の手続き、休業損害の請求方法についてまとめています。
腰椎捻挫とは?
腰椎捻挫(腰部挫傷)とは、腰椎(腰の骨)にある椎間関節に、急激な負荷がかかることが原因となって起こる捻挫です。主な症状として腰痛が挙げられますが、腰椎ヘルニアや脊柱管狭窄症の症状と違い、患部のしびれや下肢の痛みはありません。
腰椎捻挫になる原因
腰椎捻挫は、腰に急激な力が加わることが主な原因です。具体的には、交通事故での衝撃で、腰に負荷がかかった場合が考えられます。また、腰をひねる、急に起き上がる、無理のある体勢で重量物を持ち上げるといった、日常生活や仕事中によく行う動作も腰椎捻挫の原因となりえます。
腰椎捻挫は、腰の骨である腰椎自体ではなく、その周辺の筋肉や関節部の症状です。仕事中の動作や交通事故が原因であれば、速やかに病院で診断を受けてください。
職場における腰痛発生の要因には、①腰部に動的あるいは静的に過度に負担を加える動作要因、②腰部の振動、寒冷、床・階段での転倒等で見られる環境要因、③年齢、性、体格、筋力等の違い、腰椎椎間板ヘルニア、骨粗しょう症等の既往症又は基礎疾患の有無および精神的な緊張度等の個人的要因があり、これら要因が重なり合って発生します。
出典: www.mhlw.go.jp
腰椎捻挫の症状
腰椎捻挫の主な症状としては、腰の痛みが挙げられます。特に、患部である腰に力がかかるような動作を行うと、強い痛みが起こります。
なお、腰の痛みとともに、太ももの裏側がしびれるような症状もあれば、椎間板ヘルニアを発症している可能性があります。
腰椎捻挫の治療法
腰椎捻挫の治療は、保存療法を採ることが一般的です。初期の治療には、局所麻酔やステロイド剤の神経ブロック注射や、消炎鎮痛剤や筋弛緩薬による痛みの緩和を図る薬物療法が行われます。
また、腰椎捻挫の痛みが治まってからは、理学療法も取り入れられています。理学療法とは、専門資格の理学療法士の指導の下で、筋肉強化のための体操を行うものです。
腰椎捻挫が治るまでの期間
腰椎捻挫は、痛みが引くまでであれば、症状が出てから1週間程度で治まる場合が大半です。また、病院での治療期間は、一般的に1~3カ月程度とされています。しかし重症の腰椎捻挫であれば、6カ月以上の治療が必要となるケースもあります。
腰椎捻挫の種類
腰椎捻挫は、原因となる部位によって靭帯性、関節性、筋・筋膜性の3種類があります。それぞれの特徴をまとめます。
種類①靭帯性
靭帯性の腰椎捻挫は、靭帯に過剰な負荷がかかり、炎症や損傷を起こすことが原因です。部位としては、椎骨部(脊椎)や仙腸関節部(仙骨と、骨盤左右の腸骨による関節)の靭帯となります。
腰椎捻挫の発症のきっかけとなるのは、腰を曲げて重いものを持ち上げたり、スポーツの接触プレイや交通事故などによる衝撃などです。また、加齢によって靭帯や背中の筋力が落ち、脊椎後方に長期間にわたり負荷がかかることも挙げられます。
種類②関節性
関節性の腰椎捻挫は、大きく分けて椎間関節、椎体間連結の2種類です。このうち椎間関節の腰椎捻挫が、ぎっくり腰と呼ばれている症状になります。
椎体間連結は、中腰の姿勢を長く続けていると起こる腰椎捻挫です。デスクワークなどで長時間座りっぱなしだったり、料理や掃除といった家事、洗顔などのかがんだ姿勢などで起こります。症状は、腰全体の鈍痛として現れます。
種類③筋・筋膜性
筋や筋膜性の腰椎捻挫は、腰部、仙骨部・臀部、尾骨部にみられ、急激な動きや衝撃以外の原因でも発生します。
腰部の筋・筋膜性腰椎捻挫は、仕事や日常生活での急激な動きや、慢性的な疲労の蓄積が主な原因です。症状としては、臀部の筋線維が傷み、腫れることで、背中の筋肉の痛み、立ち座りなどの動作や歩行に違和感を感じるようになります。
仙骨部や臀部の腰椎捻挫は、腰部の原因に加え、臀部の打撲などでも発生します。左右どちらかに偏った腰痛や脚の痛みが、座っている時などに現れます。
尾骨部の腰椎捻挫は、尾骨の骨折や、長時間のデスクワークや自転車の運転など、座りっぱなしの状態が続くことによる尾骨の圧迫が原因です。また女性は、月経周期や分娩の前後も痛みが起こります。尾骨周りが神経過敏となり、痛みが出るようになります。
仕事中の腰椎捻挫が労災として認められるケースと事例
仕事中の腰椎捻挫は、状況によっては労災として認められることもあります。労災が下りた場合は、仕事を休む間の休業損害も発生します。
ケース①災害性の原因による腰椎捻挫
腰椎捻挫の原因が、腰に受けた外傷や、突発的な強い力が引き金となって筋肉等が損傷した場合を、災害性の原因による腰痛といいます。腰椎捻挫の原因となった腰の負傷や、その負傷の元となった力が仕事中の事故により起きたものであることが明らかな場合、労災が認定され休業損害の対象となる可能性があります。
ケース②筋肉等の疲労を原因とする腰椎捻挫
長期的な筋肉等の疲労により、腰椎捻挫の症状が現れた場合も、労災が認められることがあります。従事期間の目安は、おおむね3カ月以上です。
職種としては、中腰などの腰に負担のかかる姿勢で作業を行う荷役業務や配電工、長時間座ったままの運転手や事務職などがあります。
ケース③骨の変化を原因とする腰椎捻挫
重量物を取り扱う時間が、労働時間の一定割合以上を占める業務に就いていた場合も、労災の対象となりえます。対象となる業務は、30kg以上の物品では労働時間の3分の1以上、20kg以上の物品では労働時間の2分の1以上を占めるものです。
こうした職種に約10年以上従事し、骨が変化したことによって、腰椎捻挫を発症した場合、労災の対象となります。また、仕事を休む場合は休業損害の対象です。
労災と認定された事例
災害性の原因による腰椎捻挫が労災として認定された事例としては、重量物の運搬作業中に転倒したケースがあります。また、重量物を二人で担いでいたうちの一人が荷物を肩から外し、もう一人の腰に強い力が急激にかかった場合も該当します。
災害性の原因によらない腰椎捻挫としては、約10kgの荷物を無理な姿勢で持ち上げた瞬間に激しい痛みを覚えたケースです。他にも、電柱に登っての作業に約3年従事し、筋・筋膜性腰椎捻挫と診断された場合も労災認定がなされ補償対象となりました。
腰椎捻挫の労災認定については、最寄りの都道府県労働局や労働基準監督署の判断を仰ぐ必要があります。
仕事中に腰椎捻挫になったときの受診方法
仕事中に腰椎捻挫になった時、診察を受ける病院は、労災認定がされている病院とそれ以外の病院の2通りです。それぞれの受診方法の違いをまとめます。
受診方法①労災認定の病院に行く場合
仕事中に発症した腰椎捻挫について、労災認定病院で受診する場合は、初めに会社に症状を報告します。次に、会社から労災の請求書をもらい、労災認定の病院で診察を受けます。
この時、病院に提出された請求書を元として、労働基準監督署が調査を行い、労災が認められれば治療費はかかりません。一方、労災と認められなかった場合は、治療費を自己負担で支払うことになります。
受診方法②労災指定以外の病院に行く場合
労災指定以外の病院に行く場合は、会社に症状を報告した後、有料で診察を受けます。受診後、請求書に会社と病院からの証明をもらい、労働基準監督署に請求書を提出します。
この後、労働基準監督署の調査を経て、労災が認められれば指定口座に治療費などの費用が振り込まれるという流れです。
腰椎捻挫で仕事を休むと休業損害はもらえる?
腰椎捻挫で仕事を休む場合に、休業損害がもらえるケースをまとめます。
治療やリハビリで休んだ場合は請求できる
仕事を休む原因が、業務の内容や通勤中の交通事故による、腰椎捻挫の治療のためと認められる場合には、休業損害を請求することができます。休業損害の請求権は、正社員・パートを問わず認められています。
ただし、休業損害で請求できる金額は、その人が仕事を休むことで得られなくなった収入分までです。よって、賃金収入を得ていない人や、会社の給与以外の収入があり、休む間も減収とならない人は補償の対象外となります。
自己判断で休んだ場合は対象とならないことが多い
仕事が原因で腰椎捻挫を発症したとして、自分だけの判断で会社を休むと労災の対象とならないケースが多いです。労災が認められない限り、休業補償を受けることもできません。
労災は、その腰椎捻挫が業務の影響によるもの、または業務を行おうとしたことが明確であることが労働基準監督署に認められて成立するためです。
仕事中の腰椎捻挫は労災認定されることもある
仕事が原因で腰椎捻挫となった場合、業務内容や行っていた作業との因果関係が証明されれば、労災認定が下りる可能性があります。そのためには、無理のある姿勢で重量物を持ち上げたり、仕事の性質上腰に長期間の負担がかかる環境であるといった要件が必要です。
労災の認定を受け、休業補償をもらうためには、自分だけで判断するのではなく、職場に報告したうえで、所定の手続きを踏む必要があります。
この記事のライター
東雲修
世の中の「ちょっと気になること」を日々集めて、読者の皆様に分かりやすく解説していきます。交通事故での「困った!」が、「分かった!」に変わる助けになれば幸いです。
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