交通事故後の筋肉痛はむちうちの症状?痛みが出た際の対処法や治療法を解説
交通事故の後で筋肉痛のような痛みを感じることがありますが、それが本当に筋肉痛かどうかわからないのではないでしょうか。この記事では痛みが出た際の対処法や治療法、後遺症が残った時にすべきことをまとめています。交通事故後に痛みを感じたら、ぜひチェックしてみてください。
目次
「むちうちってどんな症状?」
「むちうちはどうやって治療したらいいの?」
「後遺症が残ってしまったらどうしたらいいんだろう」
このように、交通事故にあってむちうちのような症状が出た場合、どうしたらいいのかわからない人もいるでしょう。
この記事では、むちうちの主な症状や種類、治療法を紹介します。また、交通事故後にむちうちの症状が出た場合にどうしたらいいのかも解説しているため、事故後の対応の参考にもなります。
むちうちになって不安な人や、症状が後から出てきた人は、この記事を参考に適切な治療や手続きを行ってください。
交通事故後の筋肉痛はむちうちの症状?
軽い交通事故にあったけれど、とくに怪我はしなかったのに、数日してから「筋肉痛」のような痛みが出てくることがあります。
これは、本当に単なる筋肉痛なのでしょうか。それとも「むちうち」による痛みなのでしょうか。
事故直後に受診すると、後の損害賠償請求で損をせずに済むでしょう。事故に遭ったら、必ず病院を受診するということを覚えておいてください。
この記事では、むちうちの症状や後遺障害の等級認定などについて弁護士が解説しております。
筋肉痛のような症状はむちうちが原因かも
交通事故にあうと、衝突や追突といった強い衝撃から体を守ろうとして、無意識に全身に力が入ります。普段使わない筋肉を瞬間的に使うため、時間が経ってから筋肉痛が現れることがあります。
しかし、いつまでも痛みが治らない場合は、ただの筋肉痛ではありません。
数日経っても痛みがひかなかったり、逆に悪化してしまったりするときは、むちうちになっている可能性が高いでしょう。ただの筋肉痛だと放置せず、早めに病院(整形外科)を受診することをおすすめします。
出典・参照:交通事故・むち打ち症治療| すぎやま整骨院
むちうちの主な症状
むちうちは、交通事故の衝撃によって首がムチのようにしなることで起こります。
また、主なむちうちの症状には、首周りや頭・腕の痛みやしびれ、麻痺があります。首や肩、背中にかけて強い凝りの症状が現れたり、動かしにくくなったりすることもあるでしょう。
なお、むちうちの症状が出るのは首や頭部、腕だけとは限りません。頭痛やめまい、耳鳴りや吐き気、目の疲れや眼精疲労、倦怠感などがむちうちの症状として現れる場合もあります。
出典・参照:首の痛み(鞭打ち)|医療法人社団 幸祥会
むちうちの主な種類
むちうちの主な種類は、頚椎捻挫型・神経根損傷型・脊髄症状型・バレールー症候群型・脳脊髄液減少型の5種類です。むちうちの種類によって、体に出てくる症状も変わります。
たとえば、むちうちの約7割を占めるとされている頸椎捻挫型の場合は、頭痛や首・肩の痛み、首の運動制限などが主な症状です。
一方、神経根損傷型だった場合は、頸椎捻挫型の症状に加えて、知覚障害やしびれ、脱力といった症状が現れるといわれています。
むちうちの主な治療法
むちうちの治療法には、温熱療法や牽引療法、運動療法をはじめ、ブロック注射や痛み止めなどの薬物療法などがあります。
むちうちには、急性期と慢性期があることに注意してください。急性期や慢性期、あるいは、むちうちの症状によって治療法が変わります。
ここでは、むちうちの治療法について、それぞれどのような特徴があるのかをまとめています。
温熱療法
温熱療法とは、筋肉を温めることで筋肉の痛みを抑えたり、血液の流れを良くしてむちうちの症状を緩和させるための治療法です。ホットパック(シリカゲルなど)を使って筋肉を温めるケースと、赤外線を照射して血管や組織の新陳代謝を図るケースがあります。
温熱療法の特徴は、その名前の通り、患部を温めて治療を行うという点です。患部を温めることから、炎症を起こしている可能性のあるむちうちの急性期には行われません。一般的には、慢性期に行われる治療法です。
牽引療法
牽引療法とは、首を牽引して引っ張ることで神経への圧迫を軽減することや、頚椎椎間関節が変形していた場合に矯正することができる療法です。
牽引療法の方法は2つあります。整形外科等で良く使われている器械による牽引と、整骨院や接骨院の柔道整復師が手技で行う徒手牽引です。
器械による牽引は、長時間牽引が行える利点がありますが、手で行う徒手牽引には個人の体に合わせた牽引ができるという利点があります。
痛み止め
むちうちで体に筋肉痛のような痛みが現れたり、それ以上の大きな痛みが現れる場合もあります。とくに、交通事故で損傷した部分が炎症を起こしている可能性の高い急性期には、痛みが酷くなりやすく、痛みを軽減するための痛み止めが処方されるケースは多いでしょう。
市販の鎮痛薬を使うという方法もありますが、医師に処方してもらうことで、より効果の高い医療用の鎮痛薬を使える利点があります。
ただ、痛み止めを飲んで痛みがなくなったとしても、治った訳ではありませんので、注意して過ごしましょう。痛みがなくても、無理は禁物です。
ブロック注射
痛み止めの薬を処方される以外に、「ブロック注射」という局所麻酔薬を注射することで、神経の興奮を抑えて痛みを緩和するという治療法もあります。
特に、激しい痛みを訴えている場合、速やかに痛みを抑えるために行われることがあるでしょう。痛みを感じる神経を麻酔でブロックすることから、「神経ブロック注射」とも呼ばれます。
むちうちの症状によっては、ブロック注射ではなく、「トリガーポイント注射」が行われる場合もあります。トリガーポイント注射は、痛みの強いポイントを見つけて数か所に注射することで、痛みや筋肉の緊張をとり、症状の緩和を目的としています。
運動療法
むちうちになると首や肩を動かすことに痛みを感じ、なるべく安静に過ごそうとするようになります。炎症がある時期には安静にすることが大切ですが、長く動かさないでいると一時的に筋力が低下したり、かえって動かしにくくなることもあります。
これを防ぐために行うのが、運動療法です。運動療法にはストレッチや筋力トレーニングを行い、低下した筋力をつけて痛みを緩和する、スムーズに体を動かせるようにするなどの目的があります。
むちうちの主な治療院
筋肉痛だと思っていたらむちうちかもしれない、またはむちうちになってしまったと気づいたとき、治療するにはどこへ通院すればいいのでしょうか。
むちうちになった際、治療するための通院先はいくつか候補があります。ここでは、それぞれの通院先について解説していますので、むちうちの治療先に悩んでいる場合は、ぜひこちらを参考にしてみてください。
ただし、実際に通院をする際には、原則として病院の医師の了承を得ることが必要です。医師の了承があれば、整骨院などの施術も病院の治療の一環とみなされますから、施術費も加害者側に請求することができます。そのため、必ず医師の了承を得てから整骨院などに通院してください。
①病院(整形外科)
交通事故にあって体に痛みがあったら、それが筋肉痛かもしれないと思ったとしても、まずは病院の整形外科あるいは整形外科クリニックを受診しましょう。
整形外科は医療機関であるため、レントゲン検査やMRI検査を受けることができます。骨や組織が損傷して筋肉痛のような痛みが起こっている可能性はないか、検査で確認できます。
また、整形外科の医師に診断書を書いてもらうことも大切です。人身事故であったことの届出や、加害者側の保険会社に治療費や慰謝料を適切に支払ってもらうために診断書が必要になるため、交通事故後に痛みがあったら必ず病院の整形外科か、整形外科クリニックを受診しましょう。
②整骨院・接骨院
整骨院・接骨院では、国家資格を有する柔道整復師がむちうちの症状を和らげるための施術を行ってくれます。柔道整復師は患部に直接触れて施術をするため、症状がわかりやすく患者も満足感を得やすいところが特徴です。
整骨院・接骨院では、手技療法や物理療法、運動療法といった施術を受けられるでしょう。整形外科の治療だけでは治りにくい場合、整形外科と違ったアプローチをするために整骨院・接骨院へも併用して通院する場合があります。
整骨院と接骨院は名前が違いますが、施術内容は同じです。
③鍼灸院
鍼灸院では、国家資格を持ったはり師やきゅう師が施術を行います。鍼や灸でツボを刺激することや、表面から届きにくい深部にもアプローチできることから、むちうちの症状を緩和させることができるでしょう。
特に、むちうちの症状の中でも、炎症や筋緊張、神経症状については、鍼灸院での治療が向いているといわれています。
鍼灸院もまた、整形外科と併用して通院することができます。鍼灸院にも通院したい場合は、医師の了承を得て、加害者の保険会社に連絡をしてから通院しましょう。
交通事故後に症状が出たら
交通事故にあったそのときはとくに痛みを感じなかったけれど、後から筋肉痛のような症状が出た場合の対処方法について解説します。
通常、怪我をすればすぐに気がつくことが多いものですが、むちうちの場合はそうとは限りません。そのため、もし交通事故にあって筋肉痛のような痛みが現れたら、まず病院(整形外科)を受診しておくことが大切です。
むちうちの症状は遅れてやってくる
むちうちには、すぐに症状が出るとは限らないという特徴があります。
これは、交通事故直後では、交通事故のパニックや興奮で痛みをあまり感じず、気づかないことがあるためです。
そのため、交通事故直後には痛みを感じていなくても、後から筋肉痛のような症状があることに気づく場合があります。交通事故の当日~数日、場合によっては1週間~2週間程度経ってからむちうちを自覚することもあるでしょう。
出典・参照:むち打ち| 横幕鍼灸院
追突事故後はむちうちを発症しやすい
交通事故の中でも、追突事故では、特にむちうちを発症しやすいと言われています。
追突事故では、予告なく、突然後方から大きな衝撃を受けることで、首に大きな負担がかかりやすいためでしょう。もし、前方の衝突事故であれば、無意識にでも身構えることができますが、後方からの追突では、心構えが何もできません。
そのため、追突事故にあった場合は、何も痛みがなくてもむちうちになる可能性が高いと判断し、体に痛みや違和感がないかなどを確認するようにしましょう。
痛みが出たら人身事故へ切り替える
交通事故直後に痛みに気づいていなかった場合、事故は物損事故として処理されている可能性が高いでしょう。そのため、もし交通事故にあった後で筋肉痛のような痛みが出たら、速やかに人身事故へ切り替えることが大切です。
ここでは、人身事故へ切り替えることのメリットと、具体的な方法や期間について解説します。
人身事故に切り替えるメリット
すでに物損事故で処理されていた場合、加害者から人身事故に切り替えないでほしいといわれる場合がありますが、それは止めた方がいいでしょう。
人身事故に切り替えることで、被害者は、加害者に治療費や慰謝料などの損害賠償を請求できる、警察による実況見分が行われる、加害者の刑事責任を問えるなどのメリットがあります。
物損事故の扱いでは、治療費や慰謝料を満足に支払ってもらえない可能性があります。被害者が痛みを感じているのであれば、すぐに人身事故へ切り替えましょう。
出典・参照:交通事故にあわれた方へ |警視庁
人身事故に切り替える方法と期間
物損事故から人身事故に切り替えるには、まず病院を受診して診断書を書いてもらい、事故現場を管轄する警察署で人身事故へ切り替えたい旨を伝え、診断書や必要書類を提出します。
届出から実際に人身事故に切り替えるかどうかは、警察の判断で行われます。人身事故に切り替わった場合は、事件としてあらためて捜査が行われるでしょう。加害者・被害者への取り調べや実況見分などが行われます。
人身事故への切り替えの期間ですが、明確な期間というものはありません。しかし、交通事故時に警察官から「人身事故への切り替えは〇日までにお願いします」といったことを伝えられていれば、その期間内に行いましょう。一般的には事故後1週間~10日程度が目安です。
しかし、この場合でも加害者の保険会社に「人身事故証明書入手不能理由書」を提出することにより、警察では物損事故扱いのままですが、加害者の保険会社から治療費などの支払いを受けることができます。万が一、人身事故への切り替えが認められなかった場合には、この書類を保険会社に提出しましょう。
交通事故で後遺症が残ってしまったときにするべきこと
交通事故後に痛みを感じ、むちうちと診断されて治療を続けても、完治せず症状固定になってしまった場合は、後遺症が残ったことになります。
交通事故で後遺症が残ってしまったらどうすればいいのでしょうか。ここでは、後遺障害の申請や後遺障害の慰謝料について解説します。
後遺障害等級の申請
3ヶ月~半年程度経ってもむちうちが治らなかった場合、症状固定(これ以上治療しても改善しないと判断される状態)の判断を受けることがあります。その際は、後遺症が残ったことを意味していますから、後遺障害の等級認定を申請することができます。
後遺障害等級の申請方法には、被害者自身で行う「被害者請求」と、加害者側の任意保険会社に任せる「事前認定」という2つの方法があります。
任意保険会社に任せる事前認定は手間がかかりませんが、手続きを加害者の任意保険会社が行うため、後遺障害の等級認定が認められる可能性は低いといわれています。
反対に、被害者請求は、自分で書類を集める必要があり、手間はかかりますが、その分、自分にとって有利な資料を集めて申請することができるため、後遺障害の等級認定を得られやすいとされています。できれば、被害者請求で申請をした方がいいでしょう。
後遺障害慰謝料の請求
後遺障害の等級認定を申請して、等級が認められた場合、認められた等級に応じた後遺障害慰謝料を請求しましょう。
むちうちの場合は、第12級13号または第14級9号が認定される可能性があります。
後遺障害慰謝料の相場は、第12級の場合で94万円~290万円程度、第14級で32万円~110万円程度になるでしょう。
慰謝料額に幅がある理由は、慰謝料を計算するための方法には、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3つの基準があるためです。
自賠責基準は、加害者の自賠責保険会社が慰謝料などを計算する際に用いる基準で、最低限度の保障を目的としていることから、相場はもっとも低いとされています。
一方で、弁護士基準は、弁護士が慰謝料などを計算する際に活用する基準で、これまでに認められた慰謝料額などを参考にしていることから、相場はもっとも高い金額となります。
逸失利益の請求
交通事故により後遺症が残った場合、労働ができなくなったり、労働の一部に支障をきたすことがあります。この場合に請求できるのが、後遺障害逸失利益です。
逸失利益を計算する際には、「基礎収入×労働能力喪失率×喪失期間に対応するライプニッツ係数」の計算式を使います。
基礎収入の求め方は、被害者の職業によって異なります。
労働能力喪失期間は、むちうちの場合、認定された等級によって異なりますが、おおよそ5年~10年程度になることが多いでしょう。
また、後遺障害逸失利益は、収入のない主婦(主夫)、学生などでも請求できることに注意してください。
なお、作成の際には、症状固定時の自覚症状や、これまで受けてきた治療法、治療結果などを詳細に記載してもらうことが大切です。作成前に弁護士に相談することも可能なので、後遺症が残ってしまい、その後の手続きにお悩みの際には、遠慮なくご相談ください。
筋肉痛のような痛みを感じたら病院へ
交通事故で筋肉痛が起こる場合はありますが、交通事故後に生じた痛みの全てが筋肉痛とは限らないということを解説してきました。事故後の痛みを筋肉痛だと軽視していた場合、なかなか治らずに、早めに病院で治療していれば良かったと後悔する可能性があります。
もし、筋肉痛ではなくむちうちであったなら、放置して治ることはほぼないでしょう。骨や軟部組織が損傷している可能性もあるため、交通事故に遭ったときや、交通事故後に筋肉痛のような痛みを感じた場合は、すぐに病院を受診しましょう。
この記事のライター
ドクター交通事故運営
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