軽自動車は事故のリスクが高い?理由や被害を軽減できる安全装置も
軽自動車の事故のリスクについて詳しく解説します。交通事故は軽自動車のほうが危険だといわれる理由を説明!実際の事故のケースごとに、軽自動車と普通車の衝撃の違いを比較しました。また、事故の被害を抑える、より安全性の高い軽自動車の選び方も紹介します。
目次
軽自動車は事故のリスクが高いのかを解説
軽自動車には、万が一事故に遭った時の被害が普通車よりも大きく、危険というイメージを持たれることがあります。軽自動車が、交通事故ではリスクが大きいというのは本当なのか、安全性は普通車や大型車に比べて低いのか、そうした疑問について調べてみました。
軽自動車と普通自動車は事故の死亡率に違いがある?
はじめに、軽自動車と普通自動車で、事故の死亡率に違いがあるかをみていきましょう。ここでは、単独事故と相互事故の2つに分けて比較します。
単独事故の場合
単独事故とは、電柱やガードレールなどの物に衝突した場合の事故のことです。単独事故では、軽自動車よりも、むしろ普通自動車のほうが死亡率はやや高くなります。
これは、一般的に軽自動車よりも車重がある普通自動車のほうが、ぶつかった時の衝撃が大きいため、運転者や同乗者にかかる力もより大きくなるためです。
相互事故の場合
相互事故とは、車両同士が衝突する事故をいいます。この相互事故の場合は、若干ながら軽自動車のほうが普通自動車に比べ、死亡率が高くなる傾向です。
相互事故の場合は、軽自動車の車重の軽さがあだとなって、衝突してきた車から受ける衝撃をより強く受けてしまいます。このため、乗っている人にもより大きな被害が出て危険という結果になります。
軽自動車の事故のリスクが高い理由
なぜ、軽自動車では事故のリスクが高くなるのでしょうか。軽自動車の特性として、大きく4つの理由が挙げられます。
理由①ボディが薄く衝撃に弱い
1つ目の理由は、ボディが薄いことからくる衝撃への弱さです。現在日本で生産されている軽自動車は、より広い居住空間を持つ車種が人気です。しかし、限られた規格の中で車内の空間を多く確保しようとすると、ボディの板金を薄くする必要があります。
ボディが薄いということは、壊れることで事故の衝撃を吸収するという構造が成り立ちにくくなるということです。このため、衝突事故で全損したり、搭乗者が事故の衝撃でけがを負うリスクも大きくなります。
理由②車の重量が軽い
2つ目の理由は、軽自動車の車重の軽さです。軽自動車は、全体的な軽量化が図られていることから、普通車や大型車などとの衝突事故の場合、相手方よりも大きく弾き飛ばされてしまいます。
弾き飛ばされたことで、事故そのものの衝撃は減る一方、車体が周囲の人や建物に衝突するといった二次被害のリスクもあります。
理由③車の全長が短い
3つ目の理由としては、軽自動車の全長が普通車よりも短いことが挙げられます。正面衝突の事故であれば、ボンネットが短い軽自動車は前方からの衝撃に対するクッションが少ないためです。
また、背面からの追突事故でも、軽自動車の後部座席に乗っている人の受ける衝撃は、普通車に比べて大きくなります。車長の長い普通車であれば、衝撃を受けても車内の空間などで分散しますが、軽自動車ではそうした空間の余裕がありません。
理由④側面からの衝突に弱い
昨今は軽キャンピングカーブームもあって、軽自動車の高さの上限である2m近い車種も人気です。しかしこうした車種は、車体が縦に大きい形状のため、側面からの衝撃を分散しづらいものです。
居住空間と引き換えにしたボディの薄さもあって、特に側面から衝突された場合の被害が大きくなる危険性があります。
軽自動車における事故に対する安全性
では、軽自動車で事故のリスクを下げ、より安全性を求めるためにはどのような対策を取ればよいのでしょうか。軽自動車ならではの特徴をみていきましょう。
安全性①車の衝撃吸収を考慮した設計
交通事故の現場で、大破した軽自動車を見ることがあります。これは、軽自動車の事故対策として、車体そのものを壊れやすくすることで衝撃を吸収するクッションとなり、搭乗者の身体を守る設計になっているためです。
結果として修理不能なほどに壊れるため、軽自動車は事故の衝撃に弱いというイメージを持つ人もいます。しかし、この構造こそが軽自動車ならではの、搭乗者を保護する仕組みなのです。
安全性②普通自動車と同様の安全テストをしている
自動車が販売される前に、必ずメーカーの側で安全テストを実施しています。このテストの内容は、軽自動車も普通自動車も共通です。
つまり、同じ条件下でのテストとなるため、自動車同士の衝突を想定したテストでは軽自動車のほうが被害が大きくなります。一方、壁などの固定されたものへの衝突では普通自動車のほうが大破に近い状態になります。テストの条件をみて、より安全性の高い結果を出した車種がベターといえるでしょう。
安全性③ブレーキ時の制動距離が少ない
軽自動車の車体の軽さが最も活きる点として、急ブレーキをかけた時の制動距離が少ないことが挙げられます。
制動距離とは、ブレーキを実際にかけてから車が止まるまでの距離です。この制動距離と、運転者が急ブレーキをかけるという判断をしてから、ブレーキペダルを踏みこんでブレーキが効き始めるまでの空走距離の合計が停止距離となります。
車体が軽い軽自動車は、短い制動距離でもブレーキが効くため、急ブレーキによる事故の危険からの回避を補助する機能に優れているといえるでしょう。
停止距離=空走距離+制動距離
出典: www.npa.go.jp
安全性④車体の軽さは単独事故での被害を小さくする
軽自動車の車体の軽さは、単独事故での被害を軽減させることにもつながっています。軽自動車は、単独事故においては自動車そのものの移動エネルギーが小さくなることから、普通車よりは少ない被害で済む可能性があります。
また、対人事故であっても、被害者の受ける衝撃が抑えられます。そのため、単独事故と同様、死亡事故に発展する可能性は普通車に比べると低いといえます。
軽自動車の事故の被害を軽減する安全装置
軽自動車にも、事故の被害を軽減し、搭乗者を衝撃から守ったり、事故の危険を回避を補助する機能が搭載されることが多くなりました。軽自動車でも主流となった、代表的な安全装置を4点紹介します。
安全装置①横滑り防止機能
横滑り防止機能(スタビリティ・コントロール・システム)とは、車体の横滑りを感知した時に、自動的に軌道修正を行う機能です。この横滑り防止機能は、軽自動車であれば、平成30年2月以降に製造された車体に対して、搭載が義務付けられました。
車重が軽い軽自動車では、横からの風でハンドルを取られる危険性もあります。そうした場合も、横滑り防止機能の付いた車種であれば、安全に運転することができるでしょう。
安全装置②正面と側面のエアバック
軽自動車に限らず、自動車の安全装置として一番イメージしやすいのがエアバックです。ダッシュボードの正面に装着されている車種は多いですが、側面にもエアバッグが付いた車種であれば、横からの衝突からも身体を守ることができます。
車種によっては、オプションとして追加できる場合もあるので、販売店の担当者に尋ねてみてもよいでしょう。
安全装置③自動ブレーキ機能
軽自動車に搭載されている安全装置の一つに、自動ブレーキ機能があります。メーカーによって名称は異なりますが、この機能が付いた軽自動車は、進行方向にある障害物を感知すると、自動でブレーキがかかる点は共通です。
徐行中のような、遅い速度で走行していたのであれば、事故を事前に防止できたり、仮に間に合わなくても衝撃を和らげることができます。過信は禁物ですが、事故のリスクを抑えるという点では注目すべき機能といえるでしょう。
衝突警報機能(対車両・歩行者)、衝突回避支援ブレーキ機能(対車両・歩行者)
安全装置④先進予防安全機能
先進予防安全機能とは、運転者の認知や判断、操作といった、安全運転をサポートする機能を指します。具体的には、ブレーキ関係であれば衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い時加速抑制装置。走行中の動きを制御する機能としては車間距離制御装置、車線逸脱警報装置があります。
また、リアビークルモニタリングシステムや、自動切替型前照灯といった装置も先進予防安全機能の一種です。また、こうした機能を搭載した自動車は、ASV(先進安全自動車)と呼びます。
車の後部にスペースがあると危険度が下がる
軽自動車の機能ではありませんが、車の後部にスペースがあると、正面からの衝突事故に対して安全性が高くなります。これは、前から来た衝撃が後ろのすき間に抜けていき、車内の人が受ける影響が少なくなるためです。
逆に、後部が狭かったり、荷物を積載量ぎりぎりまで積んでいたりする軽自動車に乗っている人は、正面衝突事故では強い衝撃を受けやすいともいえます。安全性という意味では、軽自動車の中でも後部に余裕のある車種を選ぶとよいでしょう。
軽自動車の事故は状況によってリスクの高さが異なる
軽自動車の事故のリスクは、その事故がどのようなものだったかによって変わってくることが分かりました。事故の内容によっては、普通車よりも軽自動車のほうが安全だった、ということもあり得ます。
ハンドルを握るからには、安全運転を常に意識し、交通事故を起こさない、巻き込まれないことが一番です。しかし、万が一の事故を考慮するならば、より安全性の高い自動車はどれか、という視点で選ぶのがおすすめです。
この記事のライター
東雲修
世の中の「ちょっと気になること」を日々集めて、読者の皆様に分かりやすく解説していきます。交通事故での「困った!」が、「分かった!」に変わる助けになれば幸いです。
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