靭帯断裂の後遺症とは?後遺障害認定を受けるポイントも紹介
靭帯断裂の後遺症について詳しく解説します。膝などの靭帯断裂で起こる症状や治療法を説明!また、交通事故による靭帯断裂で、後遺障害認定を受けるポイントも紹介します。後遺症の症状によって、請求できる慰謝料にも違いが出てくるため、ぜひ参考にしてください。
目次
靭帯断裂の後遺症について解説
交通事故でみられる怪我の一つに、靭帯断裂と呼ばれる症状があります。関節組織の損傷である靭帯断裂の後遺症は、日常の生活や業務に影響を及ぼしかねません。
この記事では、靭帯断裂が原因となる症状や後遺症には、どのようなものがあるのか解説します。また、慰謝料の請求対象になるのかも、詳しくまとめています。
靭帯断裂とは?
関節部に位置する靭帯には、いくつかの種類があります。はじめに、それぞれの靭帯の名称や役割と、靭帯断裂はどのような時に起きるのかを説明します。
靭帯の種類
靭帯は、膝や肘、足などの関節で、2つの骨をつなぐ線維性の軟部組織の一つです。例えば膝関節の靭帯は、大腿骨と腓骨の間にある前・後十字靭帯と、内側・外側側副靭帯の4本で構成されています。
靭帯断裂とは、交通事故などでこれらの靭帯に外部からの強すぎる力がかかり、伸びたり裂けてしまったりする症状です。
靭帯断裂が起こる原因
靭帯断裂は、身体の外からの強い力に靭帯が耐えきれなくなり、切れたり伸びきったりする状態をいいます。交通事故であれば、加害者の車や障害物などにぶつかった際の衝撃などが、要因になります。交通事故で特に多いのは、膝の靭帯断裂です。
膝以外の部位でも、靭帯断裂は発生します。例えば足首だと、スポーツ中に相手選手とぶつかったり、急な切り返しやジャンプからの着地の時などです。また、野球選手が投球を長年続けたことで起こる、いわゆる野球肘も靭帯断裂の一種です。
靭帯断裂の治療方法
靭帯断裂の治療法は、大きく分けて手術療法と保存療法に分かれます。それぞれの違いと、どのような症状の時に適しているかを解説します。
治療方法①手術療法
膝の靭帯断裂における手術療法には、再建術と靭帯修復術の2種類があります。再建術は、まず脛骨と大腿骨に穴を開けます。そこに膝蓋腱など身体の組織の一部を、紐のように通し、金具で固定するやり方です。
また靭帯修復術は、関節鏡で視認しながら、傷んだ靭帯を縫合します。どちらの術式でも、術後3~6カ月はリハビリが必要になります。
治療方法②保存療法
保存療法は、手術以外の方法で行う治療の総称です。保存療法では、治療初期段階に患部の負担を減らし、痛みを和らげるためにギプスで固定を行います。続いて、途中からはサポーターを装着して、元の状態に近づけるようなリ、ハビリやトレーニングに移行します。
これは、ギプスによる安静状態を続けすぎると、筋力低下や関節の可動域が狭くなってしまうためです。
部位により治療方法が異なる
治療方法は、どの靭帯を損傷しているかによって、変わってきます。手術療法は主に、前十字靭帯断裂の治療で用いられます。これは、前十字靭帯が血流に乏しい関節内にあり、自然治癒が困難な部位だからです。
一方、保存療法は内側側副靭帯断裂や後十字靭帯断裂の治療で、選ばれることが多いです。内側側副靭帯や後十字靭帯は、前十字靭帯に比べて、自然治癒力が高い部位であるからです。
ただし、治療にあたっては、患者の靭帯の状態や職業、年齢などを考慮して、主治医が最終的な判断を下します。治療によって想定される業務、後遺症による日常生活への影響を、あらかじめ主治医に相談しましょう。
内側側副靭帯損傷では多くの場合保存的に治癒しますが、前十字靭帯損傷ではその可能性はかなり低くなり手術を選択することが多くなります。
出典: www.joa.or.jp
靭帯断裂による後遺症
後遺症としては、主に3種類が挙げられます。ここでは、靭帯断裂の後遺症には、どのようなものがあるかを説明します。
後遺症①動揺関節
動揺関節とは、膝関節が不安定になり、ぐらついたりする後遺症を指します。通常では曲がらない方向に曲がってしまうなど、関節本来の可動域とは、異なる動き方をする状態です。
膝関節でよくみられる後遺症の一つで、重症の場合は歩行困難に陥るなど、日常生活に大きな影響が出ます。このような後遺症に対しては、膝関節に着脱可能な金属や、プラスチックの支柱を付ける硬性補装具の着用が必要です。
後遺症②神経症状
神経症状を発症する後遺症もあります。具体的には、膝に負荷がかかった時に痛みが出る荷重時痛や運動痛、屈曲時痛などです。
神経症状が発症した場合は、自覚症状があれば後遺症として扱われます。この時、MRI検査の画像など、医学的な証拠があると、より高額の慰謝料請求も可能です。
後遺症③可動域制限
可動域制限は、関節部の動きが自在ではなく、特定の方向への曲げ伸ばしや、素早い動きができなくなる後遺症です。可動域制限の判定は、靭帯断裂が起きていない側との比較で、異常が確認できるかどうかで行います。
靭帯断裂による後遺障害認定を受けるポイント
後遺障害認定を受けるためには、事故と後遺症を関連付ける証拠が必要です。ここでは、認定を受けるポイントを、3点に分けて説明します。
ポイント①画像による靭帯断裂の確認
1つ目のポイントは、画像による靭帯断裂の確認の検査を、受診することです。ただし、組織体である靭帯断裂は、レントゲン検査による確認ができません。
そのため、患部のMRI検査を受ける必要があります。MRI画像は、後遺障害認定を判断する際に、有効的な資料になります。
ポイント②事故との関連性を立証
2つ目のポイントは、靭帯断裂やその後遺症が、事故によるものという証明をすることです。事故直後に膝の打撲や捻挫などの症状があれば、まず病院で受診することが大切です。
交通事故後、しばらく経ってからMRI検査を行い、靭帯断裂が発覚することもあります。MRI画像は、後遺症に対する関連性が、認められやすいです。
また、MRI検査を受けていなくても、医師が膝の痛みをカルテに記録していた場合は、後遺症とみなされる可能性があります。
ポイント③検査による症状の裏付け
3つ目のポイントは、検査で後遺症であることの裏付けを取るという点です。MRI検査以外で、靭帯断裂を確認する方法として、ストレスレントゲン撮影という検査があります。
この検査では、靭帯断裂した箇所を直接撮影するのではなく、医師が手や器具を使い、脛骨を前後左右に動かします。こうして膝関節がずれた状態を作り、レントゲン写真を撮影するというものです。
そして、膝に不自然なぐらつきがないかを測定し、異常が認められれば、所見を診断書に記載します。このずれは、後遺症の一つである動揺関節の疑いがあることの、証明となります。
靭帯断裂で請求できる後遺障害慰謝料
靭帯断裂で後遺障害が立証できた場合、慰謝料はどの程度得られるのでしょうか?目安と具体例をまとめています。
後遺障害慰謝料の目安
後遺障害慰謝料とは、後遺障害等級の認定を受けた後遺症に対して、支払われる慰謝料です。慰謝料の算定方法は、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準のいずれかが用いられます。
自賠責基準は、運転者であれば加入が義務付けられている、自賠責保険にて定められた基準です。また、任意保険基準は、加害者が加入している保険会社が、独自に設けた基準です。
弁護士基準は裁判基準ともいわれており、弁護士に慰謝料の交渉を依頼、もしくは訴訟を起こした時の基準額です。自賠責基準や任意保険基準に比べて、同じ後遺症を患ったとしても、得られる慰謝料が高額になる傾向にあります。
後遺障害慰謝料の具体例
交通事故による後遺障害慰謝料は、後遺症の症状によって異なります。いくつかの事例を挙げていきます。
例えば、後遺症として現れた動揺関節により、膝の安定性がなくなった場合です。硬性補装具が常に必要であれば、障害等級8級になります。時々必要であれば、10級に認定される可能性が出てきます。
痛みの自覚症状がある場合で、MRI画像などにより、医学的に証明できれば12級です。MRI画像などで確認できなくても、後遺症による痛みであると類推できれば、14級の認定を受ける可能性があります。
靭帯断裂の後遺症について知っておこう
靭帯断裂の後遺症は、交通事故直後だけでなく、その後の日常生活や仕事の業務にも大きな影響を及ぼします。万が一交通事故に遭った場合は、まずは自分の症状と状態を知りましょう。
そして、後遺症が残った場合は、適切な治療費と合わせて、慰謝料を請求することも重要です。場合によっては、弁護士に交渉を依頼するのも、一つの方法といえるでしょう。
この記事のライター
東雲修
世の中の「ちょっと気になること」を日々集めて、読者の皆様に分かりやすく解説していきます。交通事故での「困った!」が、「分かった!」に変わる助けになれば幸いです。
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