交通事故が原因で解雇される?休業損害を認めてもらうための条件も
交通事故が原因で解雇されるのか解説します。交通事故による怪我で、会社から解雇される可能性が高いケースも説明!また、休業損害の補償を認めてもらう条件も、例に挙げてまとめています。死亡事故を起こした際に、解雇を避ける対処法も載せているため、参考にしてください。
目次
交通事故による解雇で休業補償を受けられるのかを解説
交通事故による怪我が原因で出社できない場合、会社から解雇されるのか不安になるでしょう。本記事では、交通事故の怪我で会社は労働者を解雇できるのか、徹底解説します。
また、退職後に補償される休業損害が、認められるケースと認められにくいケースも必見です。補償金の計算方法も説明するため、参考にしてください。
交通事故が原因で会社から解雇されることがある?
交通事故による怪我だけで解雇はできない
労働基準法や労働契約法に基づき、交通事故による怪我だけが理由で、会社が労働者を解雇するのは禁止されています。もしも、労働者が怪我をして今まで通りの仕事ができない場合は、他の業務を与えるなどの配慮が必要です。
つまり、労働者を退職させないように、会社は可能な限り努力をしなければなりません。怪我だけを理由にして配慮もせずに解雇すると、相当性がないとみなされ、解雇が無効となります。
法律上、交通事故の怪我が原因ですぐに解雇することはできません。労働基準法、労働契約法は労働者の権利を守るための法律ですが、これらの法律によって会社が労働者を解雇できる場合は極めて限定されているからです。
出典: agoora.co.jp
交通事故による怪我が長引くと退職勧奨されることがある
交通事故による怪我が長期になると、会社の方から自主退職を促すケースがあります。なぜなら、労働者が自主的に退職するのは、労働基準法の違反にはならないからです。しかし、退職を奨められたからといって、安易に応じる必要はありません。
また、退職勧奨が常識を超えて強制的であれば、違法行為になります。その場合は、たとえ退職合意書にサインをしても、無効になる可能性が高いです。どうすれば良いのか分からない場合は、弁護士に相談するのも、一つの方法です。
交通事故が原因で解雇されるケース
交通事故による怪我が原因で解雇できるのは、完治する見通しがなく、復職の可能性がない場合です。しかし、怪我での入院期間が長すぎる理由で、解雇できないケースもあります。
勤務中に発生した事故の場合は、解雇制限に基づき、治療中および治療後の30日間は解雇できません。したがって、慌てて退職勧奨を受け入れる必要はないです。
交通事故による解雇で休業損害を認められやすい条件
休業損害の定義
休業損害とは、交通事故による怪我が原因で休業し、本来得るはずであった収入に対する損害のことです。当事者の収入額や休業した期間、通院の日数などによって、金額が異なります。
また、治療や入院のために有給休暇を使ったとしても、休業損害は請求可能です。自営業の場合は、休業した分だけ収入がないため、休業日数分の補償を請求できます。
条件①会社での業務内容
会社でどのような業務に携わっていたかも、休業損害を受けられる条件に関わります。例えば、建築業などの体を使う職種は、怪我で業務に就けないことが明白です。退職せざるを得ない状況のため、休業損害が認められやすくなります。
一方、腕や足を多少怪我していても、イスに座って仕事をする事務職などは、続行できると判断されやすいです。そのような場合は、退職をしても休業損害が認められにくくなります。
条件②怪我の程度
どの程度の怪我で退職をしたのかも、認められる条件になります。大怪我をしたことが仕事の障害になる場合は、続行が不可能なため、休業損害が認められやすいです。例えば、歩行が困難になったり、目が不自由になった場合などが該当します。
逆に、軽いむちうち症状だけで退職をした場合は、仕事を続行できる可能性もあったと、判断されやすいです。そのため、認められにくい可能性があります。
条件③自主退職ではなく解雇であること
退職の仕方も、認められる条件に関わります。自主的よりも解雇によって退職をした方が、認められやすいです。なぜなら、交通事故による怪我が原因で解雇された場合、労働者はやむを得ない状況であったと、判断されるからです。
一方、自主退職をした場合は、自分の意志で退職したことになり、認められにくい傾向にあります。休業損害をスムーズに受け取るためにも、解雇される以外は、退職しない方が良いです。
条件④再就職の可能性
再就職の可能性があるかどうかも、休業損害を受け取れる条件に大きく関わります。怪我の完治が難しく、再就職を望めない場合は、認められやすいです。
逆に、ある程度の怪我が治れば、再就職できる可能性の高い人は、認められにくいです。休業損害を受け取れたとしても、再就職までの一定期間のみになります。また、怪我が完治しているのにもかかわらず、再就職をしていない人は、休業損害は認められません。
条件⑤会社都合の退職
会社の都合によって退職した場合は、認められやすいです。会社の都合であれば、労働者に非がないと捉えられます。逆に、自己都合であれば、会社側は辞めなくても良い状況でありながら、自ら辞めたということで、認められにくいです。
また、自己都合退職にすると、後の失業保険も支払われにくくなるため、注意してください。退職するときは、自己都合ではなく会社都合にしましょう。
休業損害はいつまで受け取ることができる?
交通事故による休業損害は、怪我が完治するまで支払われます。あるいは、怪我がなかなか完治せずに、症状断固と診断を受けるまでです。
怪我が完治すれば、会社を休む必要がなくなります。また、休業損害が支払われるのは、治療を受けていることが前提です。症状断固(後遺症)であれば、治療は一旦落ち着くため、休業損害も支払われません。
通常、休業損害が支払われるのは、治癒または「症状固定」の時期までです。どちらのケースも治療の必要がなくなるため、仕事を休む必要がないからです。
退職後の休業損害の計算方法
休業損害は、交通事故に遭う前の基本収入を、基準にするのが一般的です。計算方法は、会社員と自営業で異なります。会社員の場合は、交通事故前3ヶ月分の平均収入を日数で割った金額が、1日あたりの基礎収入です。
自営業の場合は、交通事故に遭った前年度の確定申告の所得に基づきます。例えば、前年度の所得が400万円とすると、それを1年の日数で割り、1日あたりの基礎収入を出します。
また、自営業の場合は、固定経費や専従者控除、青色申告控除などを、所得の金額に足して計算することが可能です。1日あたりの基礎収入に休業日数をかけた金額を、休業損害補償として請求できます。
死亡事故を起こしたことによる解雇を避けるための対処法
対処法①身柄拘束をされた場合
死亡者が出る交通事故を起こして、身柄を拘束された場合は、会社へ出勤できなくなります。会社に事情を話さずに無断欠勤を続けると、解雇される可能性が高いです。なぜなら、長期の無断欠勤は、懲戒解雇の対象になりやすいからです。
解雇を避けるためにも、長期で身柄を拘束される場合は、会社に連絡をしてください。会社へ非常識な対応をすると、解雇される原因を作ってしまうため、注意しましょう。
対処法②身柄拘束をされない場合
交通事故を起こしても、身柄を拘束されなければ、普段通り会社へ出勤してもかまいません。刑事事件になったとしても、大きなトラブルもなく会社に迷惑をかけなければ、解雇になる心配はないでしょう。
交通事故後の対応を適切に行い、弁護士を通して示談交渉をすすめいくことが大切です。そうすれば、解雇されずに仕事を続けられます。
対処法③被害者と速やかに示談交渉をする
死亡事故を起こしたら、なるべく早く被害者の遺族と連絡をとり、示談交渉をすすめていきます。示談交渉が成立すれば、不起訴処分になる可能性も高いです。
そうすると、拘束されていた身柄が解放されて、出社も可能になります。また、不起訴処分になれば、刑事裁判は行われないため、前科がつくこともないです。
被害者と示談交渉をする際の注意点
交通事故後、被害者との示談交渉は、加入している保険会社や弁護士などを通して、行うことが多いです。ただし、加害者は葬儀に参列したり、謝罪の気持ちを伝えるなど、できる限りの誠意を伝えなければなりません。
不誠実な対応をすると、被害者側は気分を害することもあるでしょう。そうすると、示談交渉もスムーズにすすまず、状況が悪化する可能性もあるため、気をつけてください。
交通事故による解雇で休業補償を受けるには一定の条件がある
交通事故による怪我だけが理由で、会社が労働者を解雇することはできません。しかし、完治の見通しがなく、復職できる可能性もない場合は、退職せざるを得ないケースもあります。
また、会社から退職勧奨をされたとしても、慌てて退職する必要はないです。交通事故が原因で退職した場合は、条件によって休業損害が補償される可能性もあるため、請求しましょう。
この記事のライター
宮内直美
最新の情報や疑問に思ったことなど、調べることが好きなフリーライターです。交通事故の防止や対処法に役立つ情報を収集して、分かりやすく執筆します。
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