赤い本とは?交通事故による慰謝料との関係や算定方法を徹底解説!
赤い本とはどのような書籍であるのか、詳しく解説します。交通事故の慰謝料額で、最も高額になる裁判基準についても説明!また、慰謝料以外の休業損害や、逸失利益の算定方法もまとめています。赤い本以外の損害賠償額の算定に役立つ書籍も紹介するため、参考にしてください。
目次
赤い本を基準にした慰謝料の算定方法を知る
赤い本は、交通事故と密接に関係している書籍です。交通事故の慰謝料について調べている人は、必ず耳にする名前といって良いでしょう。
本記事では、赤い本とはどのような内容が掲載されているのか、詳しく解説します。また、赤い本を基準にした、慰謝料の算定方法も説明するため、チェックしてみてください。
赤い本とは?
赤い本の正式な書籍の名称
赤い本の正式な書籍の名称は「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」です。書籍の表紙が赤色であることから「赤い本」といわれています。
赤い本には、交通事故の訴訟に関する損害賠償額の算定方法や、過去に行われた裁判の事例などが掲載されています。弁護士や裁判官にとって、必携の書籍です。
赤い本は「公益財団法人日弁連交通事故相談センター」の東京支部によって発行されており、誰でも購入できます。もしも、自分で慰謝料を計算したい場合は、購入を検討するのも良いでしょう。
交通事故の損害賠償金の相場を掲載
赤い本が有効的に使用される場面は、交通事故による損害賠償金額の相場を、計算および確認するときです。交通事故の種類は大きく分類できても、細かい状況などは、それぞれによって異なります。そのため、賠償金額も一定ではありません。
そこで、赤い本を活用すると、スムーズに解決できて、事故の賠償金額に公平性をもたせることができます。赤い本には慰謝料以外にも、積極損害や休業損害、逸失利益などの、標準や考え方について詳しく掲載されています。
交通事故の過失割合の参考事例を掲載
単独以外の交通事故では、程度は違っても、両方に過失のあるケースが多いです。赤い本には、過去に行われた裁判の判例に基づいた過失割合が、事故の形態ごとに掲載されています。
他にも、交通事故に関して参考になる事例などが載っているため、弁護士も積極的に活用している本です。
赤い本は慰謝料の裁判基準に基づいている
慰謝料における3つの算定基準
慰謝料とは、交通事故によって与えられた、精神的または肉体的苦痛に対する賠償金です。しかし、苦痛の程度は個人によって異なり、相場があるわけでもありません。
慰謝料を請求するときは、3つの基準が設けられており、慰謝料の金額を算定します。1つ目は、自賠責保険によって支払われる「自賠責保険基準」です。
2つ目は、相手側が任意で加入している保険会社によって支払われる「任意保険基準」になります。3つ目は、過去の裁判の判例などをベースに作成された「裁判基準」です。
慰謝料を算出する為の算定基準は一つではありません。自賠責保険基準・任意保険基準・弁護士基準の3種類があります。
赤い本の基準と裁判基準と弁護士基準は同じ
赤い本に掲載されているのは、裁判基準です。また、弁護士が慰謝料を算定するときにも活用することから、弁護士基準とも呼ばれています。
弁護士基準は3つの算定基準の中で、最も高額になるのが一般的です。次に任意保険基準、最も低額なのは自賠責保険基準です。同じ交通事故でも、算定基準によって慰謝料額が大きく異なります。
赤い本を基準にした慰謝料の算定方法
算定方法①入通院慰謝料
赤い本には、入通院慰謝料の算定をするための、別表Ⅰと別表Ⅱの2種類が掲載されています。原則的には別表Ⅰを使用しますが、むちうちや捻挫などの軽い症状の場合は、別表Ⅱを適用します。
同じ期間であっても、別表Ⅰを使用した方が、慰謝料は高額です。赤い本の別表の見方は、縦が通院期間で、横が入院期間となっています。実際に自分が要した通院期間と入院期間を当てはめると、慰謝料額の基準を知ることができます。
算定方法②後遺障害慰謝料
後遺症が残った場合は、後遺障害慰謝料を請求することができます。慰謝料の金額は、後遺障害の等級によって決まります。常に介護が必要とされる場合は第1級、時折介護が必要な場合は第2級とされるのが一般的です。
また、介護を必要としない後遺障害においては、症状の重い順に第1~14級に分類されます。後遺障害による慰謝料の算定方法で、最も高額なのは赤い本に基づいた裁判基準です。
算定方法③死亡慰謝料
交通事故で死亡者が出た場合、死亡したことで生じた精神的苦痛に対して、慰謝料を請求することが可能です。死亡慰謝料は、死亡した当人に対してと、近親者固有に対してのものがあります。赤い本に掲載されている死亡慰謝料の相場は、以下の通りです。
被害者の立場 | 金額 |
---|---|
一家の支柱 | 2800万円 |
一家の支柱に準ずる場合(母親・配偶者) | 2500万円 |
その他 | 2000万円~2500万円 |
赤い本を基準にした慰謝料以外の損害賠償
損害賠償①休業損害
赤い本では、過去の判例に基づいた休業損害についても、確認することができます。休業損害とは、交通事故によって働くことができず、本来得ることができた収入の損害に対する補償金です。
休業損害は、交通事故前の被害者の収入に基づき、休業した日数に伴って算定します。赤い本には、休業損害が認められたケースなども載っているため、請求するにあたり大変参考になります。
損害賠償②逸失利益
交通事故で後遺障害認定を受けた場合は、後遺障害慰謝料だけでなく、 後遺障害の逸失利益を請求することができます。
赤い本には、後遺障害の等級や後遺症になった部位ごとに、慰謝料や逸失利益の判例が掲載されています。そのため、自分の状況と近い事例が見つかることもあるでしょう。
逸失利益は、交通事故前の年収や、後遺障害になったときの年齢、労働能力喪失率などで金額算定が可能です。労働能力喪失率は、後遺障害等級によって目安が決められています。
逸失利益とは、交通事故にあわなければ本来得られたはずの収入のことです。
事故によって亡くなられたり(死亡逸失利益)、後遺障害と認められたり(後遺障害逸失利益)した場合に逸失利益は請求できます。
赤い本以外に損害賠償の実務で利用される書籍
赤い本以外の書籍
赤い本以外にも、損害賠償の実務で活用される書籍があります。それらは、青い本、緑本、黄色い本です。
青い本は、赤い本とセットで活用する弁護士も多く、赤い本よりも解説が充実しています。また、赤い本は、東京地裁の管轄内である首都圏を前提にして、作成された書籍です。
一方、青い本は全国で起こりうる交通事故を想定しています。そのため、慰謝料の基準も、幅広い金額で設定されているのが特徴です。緑本は大阪地裁の判例に基づいて、損害賠償額に関する算定方法などが、掲載されています。
黄色い本の正式名称は「交通事故損害賠償算定基準」です。日弁連交通事故相談センター愛知県支部が発行元で、赤い本の愛知県版といえる書籍です。名古屋地裁の過去の裁判で行われた判例に基づいて、損害賠償額の算定方法が掲載されています。
赤い本とその他の書籍はどのように使い分ける?
赤い本と青い本は、首都圏向けか地方向けかで、ざっくりと使い分けることができます。しかし、どちらの本も、損害賠償金の算定に役立つことは同じです。
首都圏だから赤い本、地方だから青い本という、明確な算定額を出すものではないことを認識しておきましょう。実際は、赤い本と青い本のどちらも参考にした上で、個々の具体的な状況に応じて、請求額を確定していきます。
また、緑本や黄色い本においても、主に使用される地域が異なるだけです。したがって、どの書籍も赤い本と同様に、慰謝料を請求する際の、裁判基準が掲載されています。
赤い本は裁判基準であるため慰謝料を高額に算定できる
赤い本は、3つの基準で最も高額になる算定方法の、裁判基準について掲載されている書籍です。交通事故に遭った後、保険会社からも慰謝料額について提示を受けます。
しかし、保険会社の提案をすぐに受け入れず、赤い本を参考にして、自分で算定してみるのも良いでしょう。さらに多くの慰謝料を、受け取れる可能性もあります。また、より確実に高額請求したい場合は、弁護士に相談するのも、一つの方法です。
この記事のライター
宮内直美
最新の情報や疑問に思ったことなど、調べることが好きなフリーライターです。交通事故の防止や対処法に役立つ情報を収集して、分かりやすく執筆します。
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