自損事故で警察を呼ばないとどうなる?事故後の流れや使える保険の種類も
自損事故を起こした際、警察を呼ばないとどうなるのか詳しく解説します。自損事故の当事者になった時の、警察を呼ばないリスクや周囲への正しい対応方法を説明!また、自損事故でけがをした時などに使える保険の種類なども併せて紹介しますので、参考にしてください。
目次
自損事故で警察を呼ばないとどうなるか知っておこう
自損事故も交通事故の一種です。そのため、自損事故を起こしてしまった時は、例えけが人がいなかったとしても、必ず警察に連絡しなければなりません。
この記事では、警察を呼ばない場合に起こりうるリスクや、事故後に使える保険にはどのような種類があるのかをまとめました。
自損事故とは?
自損事故とは、具体的にはどのような事故を指すのでしょうか?自損事故の定義と、どのような種類の損害が発生するかをみていきましょう。
自損事故の定義
自損事故とは、歩行者や他の運転者といった、事故の相手方が存在しない交通事故をいいます。自損事故は、運転者本人のミスによって起きる事故なので、その責任、つまり損害への賠償も全て自分で行わなければなりません。
自損事故の損害の種類
自損事故では、運転者本人のけが・後遺症、運転者の運転していた車の修理、車が衝突した物に対する弁償の3種類の損害が発生します。どの損害が発生していても、警察や保険会社への連絡、自分以外でけがを負わせてしまった人がいないかといった確認事項は共通です。
自損事故で警察を呼ばないことによるリスク
自損事故を起こした際に、警察を呼ばないことで大きなリスクを背負う可能性があります。想定される6種類のリスクを説明します。
リスク①事故証明書がもらえない
事故証明書は、警察に事故を連絡し、事情聴取に対応することで、その日時・場所で事故が発生した事実を証明する書類です。この事故証明書は、自損事故に限らず、事故処理の大本となる書類になります。
警察を呼ばないと、事情聴取ができず事故証明書が発行できません。これにより、保険金の受け取りができなくなったり、会社員等であれば休業申請ができないなど、多くの手続きに支障が出ます。
リスク②損害賠償できなくなる
自損事故の中には、路面の凹凸が修繕されていなかったり、車道の中に物が放置されていたりなど、道路の状態が悪いことが原因という場合もあります。こうした場合は、国や地方公共団体など、道路の管理者の責任も問われ、損害賠償の請求も可能です。
しかし、警察を呼ばない場合は、事故の事実を裏付ける事故証明書が発行できず、それを根拠とした損害賠償請求もできなくなります。
リスク③保険金がもらえない
自損事故で警察を呼ばない時のリスクの3つ目は、保険金がもらえなくなることです。事故証明書がないと、自損事故の証明ができないため、保険会社にも保険金の請求が不可能となります。
例えば、自損事故で家屋やガードレール、電柱などを壊した場合は対物賠償責任保険の対象です。しかし、警察を呼ばないことで、その自損事故で発生した損害の賠償は、事故を起こした者が自費で支払うことになります。
同様に、自分のけがに対する、自損事故保険や搭乗者傷害保険、人身傷害補償保険なども請求できません。さらに、自損事故から時間が経てば経つほど、警察も事故の証明を受け付けてくれなくなる可能性もあります。
リスク④当て逃げ犯として扱われる
自損事故を起こした側には、警察に連絡する義務があります。もしも、自損事故を起こしても警察を呼ばない場合、その自損事故は当て逃げとして処理され、犯人として責任を問われることになるでしょう。
現在は、路上や駐車場の監視カメラに加え、ドライブレコーダーを取り付けた車も多くなっています。警察を呼ばないで現場から逃げても、こうした情報をもとに摘発される可能性が高いのです。
リスク⑤免許の点数が加点されることもある
自損事故を起こした場合、けが人がおらず、かつ直ちに警察に連絡した場合は、点数の加点はありません。しかし、警察を呼ばない場合は当て逃げとして処理され、2点が加算されます。事故までに、他の交通違反で4点以上の点数が累積されていた場合は、免許停止処分の対象です。
リスク⑥前科がついてしまう
自損事故であっても、起こした者には警察へ報告する義務があります。もしも警察を呼ばない場合は、道路交通法違反となります。
かつ、このような処分を受け、在宅捜査による略式裁判を受けると、警察に逮捕されることこそないものの、前科がつくこととなります。
自損事故を起こした場合の対応方法
では、万が一自損事故を起こしてしまった場合は、どのように対応すればよいでしょうか。自損事故後、直ちに取らなければならない行動をまとめました。
対応①周囲の状況確認
自損事故を起こしてしまったら、はじめにけがの有無や、壊した場所を確認しましょう。警察に連絡する時に必要な情報となります。
なお、自損事故は、この事故で自分以外の人がけがをしていなかった場合の事故です。もしもけが人がいた場合は、事故を起こした運転者を加害者とする人身事故となります。その場合は、警察への連絡よりも救護活動を最優先し、応急手当や救急車を呼んでください。
対応②警察に通報
たとえ他に被害者のいない自損事故であっても、事故発生後ただちに警察を呼ばないといけません。警察への連絡は、事故証明書は、その日・その場所で交通事故が発生したことを証明する公的書類を発行してもらう際にも必要です。
自損事故に限りませんが、交通事故後に警察を呼ばないこと(事故不申告)は、道路交通法違反行為です。また、警察からは、当て逃げの犯人として扱われます。
さらに、事故証明書がないことで自動車保険が適用できず、車の修理費や購入費も全額自費で支払うことになりかねません。
警察に伝える内容
自分のけがが重傷で、行動できない場合を除き、自損事故後ただちに警察を呼ばないといけません。はじめに、警察官に自損事故を起こしたことを伝え、電柱や標識、目印となる近くの建物など、現場の所在地が分かるものがあれば番地や町名などを連絡します。
次に、自損事故による自分のけがの状態や、救急車を呼ばないといけないかどうか警察官に伝え、その事故で他にけがをした人がいないことを報告しましょう。
また、自分以外でけがをした人がいる場合、その事故は自損事故ではなく人身事故となります。至急、けが人の救護を行ってください。
対応③危険防止措置を行う
自損事故であっても、その他の事故を起こした場合と同じく、危険防止措置義務に沿って、二次被害を回避します。具体的には、車を路肩に移動させてハザードランプを点灯する、三角表示板の掲示や発煙筒を焚くといった、後続車に事故を知らせる行動です。
また、衝突した箇所に自分の車や外壁などの破片が飛び散っている場合は、可能な限り回収するなどの清掃もしましょう。特に、事故現場が公道や高速道路といった、往来の激しい場所では、こうした対処をできるだけ速やかに行ってください。
対応④保険会社へ連絡
警察の事情聴取が終わったら、保険会社の担当者に連絡し、その自損事故で使える保険の種類を確認しましょう。自損事故では、自分が加入している自動車保険のほか、状況によっては健康保険、労災保険が使える可能性があります。
ただし、保険を使うと等級が下がり、次年度からの保険料は増額されます。保険会社の担当者にも相談して、どちらがより金銭的な影響が少ないかを考えましょう。
対応⑤病院へ行く
自損事故に関する警察の事情聴取や、保険会社とのやり取りが終わったら、病院に行って自分のけがの状況を確認しましょう。
事故を起こした瞬間や直後は自覚がなくても、自損事故により壁などに衝突したり、溝に落ちるといった衝撃によるけがをしている可能性があります。例えばむちうち症は、事故後数日経ってから症状が出ます。また、頭部や首、脊柱などへのダメージは、外見からは分かりにくいものです。
このため、遅くとも自損事故の日から2日以内に、病院でレントゲンを撮るなどして、医師の診断を受けるべきです。
対応⑥事故証明書の取得
事故証明書は、自損事故などの交通事故発生後、警察の事情聴取を元に作成される書類で、保険金の手続きや、事故に関する多くの手続きに必要になります。この事故証明書は、警察を呼ばない場合は作成ができません。
事故証明書の発行元は、自動車安全運転センターです。請求は、最寄りの郵便局や、自動車安全運転センターのホームページで申請をすることで、後日届けられます。
自損事故で使える保険の種類
自損事故を起こした後、自分や同乗者のけがの治療費や、車や事故で壊してしまった物に対する賠償金に対して使える保険があります。いずれも、警察を呼ばない場合は、事故証明書が発行できないことに注意してください。
種類①車両保険
車両保険は、自損事故などの交通事故で、自動車が壊れた箇所の修理費のうち、一定額を超える金額に対して支払われる保険金です。相手方のいない自損事故では、車の修理費を自分で負担しなければなりませんが、車両保険を使えば負担を軽減することもできます。
ただし、多くの車両保険には、一定額以下の負担には対応しない免責額が設定されています。仮に、車両保険の免責額が10万円で、修理費が12万円であれば、10万円を自分で支払い、差額の2万円が保険金として受け取れるということです。
種類②対物賠償責任保険
対物賠償責任保険とは、自損事故によって、家屋や外壁、電柱などの構造物が壊れた場合の修理費に対して支払われる保険金です。
国や都道府県、市町村などが管理するガードレールや街路樹などを、自損事故で壊した場合も事故を起こした側の責任で弁償することになります。この時の賠償金も、対物賠償責任保険を使うことができます。
種類③人身傷害補償保険・搭乗者傷害保険
人身傷害補償保険や搭乗者傷害保険は、運転者や同乗者のけがの治療費に対して支払われる保険金です。自損事故であっても、運転者や同乗者がけがをした場合は、これらの保険の対象となります。
支払われる保険金の基準は、人身傷害補償保険と搭乗者傷害保険で異なります。具体的には、人身傷害補償保険では、治療費の実費や休業損害が認められる金額。搭乗者傷害保険では入院1日あたりの金額を基準とします。
種類④自損事故保険
自損事故保険は、事故を起こした運転者本人及び、同乗者がけがをした場合に支払われる保険金です。自損事故の中でも、運転者や同乗者にけががなかった場合は物損事故となり、自損事故保険の対象からは外れます。
なお、人身傷害補償保険と補償の範囲が被る場合は、人身傷害補償保険による補償が優先されるため、2種類の保険金を両方受け取ることはできません。金額面でも、人身傷害補償保険よりも保険金の額は低く、補償は最低限度にとどまります。
保険を使わない選択もできる
なお、自損事故を起こしたとしても、車両保険をあえて使わないこともあります。これは、車両保険を使うことで保険の等級が下がり、次回以降に支払う保険料が増加することを避けたい場合の選択肢です。
自損事故で車両保険を使うかどうかは、契約者の判断にゆだねられています。保険会社に連絡した時に、自分が加入している保険の免責額がいくらになっているか、次回以降の保険料がどれだけ上がるかを確認しましょう。
自損事故で警察を呼ばないとさまざまなリスクがある
自損事故を起こしてしまった時、警察を呼ばないことで多くのリスクが降りかかってきます。自損事故の証明ができないことで、当て逃げ犯としての前科や免許の点数はもちろん、保険金も使えないため、車などの修理費もかさむでしょう。
もしも自損事故を起こしてしまった場合は、まずは落ち着いて警察に、次いで保険会社に連絡し、今後の対応について指示を仰ぐのがベターです。
この記事のライター
東雲修
世の中の「ちょっと気になること」を日々集めて、読者の皆様に分かりやすく解説していきます。交通事故での「困った!」が、「分かった!」に変わる助けになれば幸いです。
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