交通事故でむちうちになったらどうする?後遺症の対処法も解説
交通事故でむちうちになった場合の対処法について詳しく解説しています。むちうちになった場合の治療法や賠償金、治療費を打ち切られそうになった場合の対処法についてもまとめています。むちうちでお困りの方に役立つ情報を詳細にまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
目次
追突事故などの交通事故に遭うと、むちうちの症状を発症する人も少なくありません。むちうちになってしまうと、首の痛みや頭痛、場合によっては手足のしびれなどが生じます。回復にかかる期間も長く、つらい思いをされている方も非常に多いです。
本記事では、交通事故でむちうちになったときの治療法や、むちうちによる後遺症が残ったときの対処法などについて解説します。交通事故によるむちうちで通院しているにもかかわらず、保険会社に治療費の打ち切りを打診された場合の対処法もまとめているので、参考にしてください。
むちうちの治療法や治療費の請求方法についての正しい知識を得ることで、つらい治療生活を負担なく過ごしていくことができます。適切な治療を早期に実施できれば、回復までの期間を短くすることもできるでしょう。
交通事故によるむちうちでは、身体的な負担はもちろん、治療にかかる金銭面の負担も重くのしかかってくることがあります。受け取ることのできる賠償金をしっかり把握しておけば、お金の心配をすることなく治療を続けることができます。
適切な対処法を知ることで、身体的・経済的な負担を大きく減らせることでしょう。本記事を参考にして、つらい治療生活を賢く乗り切りましょう。
交通事故でむちうちになった場合の治療法
交通事故でむちうちになった場合の治療法について解説していきます。
医療機関を受診しているはずなので、基本的には医師の指示に従って治療を行っていくことになります。しかし注意が必要なのは、医師に指示された治療法が必ずしも自分の症状に合っているとは限らない、ということです。
たとえば自分の自覚症状が医師に正しく伝わっていなかった場合、適切な治療を受けられなくなる可能性があります。また医師にも専門分野があるため、適切な診断ができていないことも稀に起こります。
医師の判断に従っていれば大丈夫と考えるのではなく、自分でもどんな治療法があるのか把握しておくことは重要です。治療法が自分に合ってないと思った場合に医師に相談できるよう、治療法についての正しい知識を身に付けておきましょう。
①理学療法
むちうちで行われる理学療法には、物理療法と運動療法の2種類が存在します。症状に適した方法で治療を行っていくことになります。
物理療法とは、電気や熱、振動などの物理的な刺激を患部に与え、筋肉や神経の機能を改善していく治療法です。
むちうちが発症した直後(急性期)は、安静が必要で、大きく体を動かしてしまうと症状を悪化させてしまう可能性があります。そのため、体を動かさないで患部に直接刺激を与えられる物理療法が有効です。
とはいえ、身体を動かさないでいると関節の動きが悪くなってしまい、むちうちの回復が遅れてしまう可能性があります。そこで、運動療法を実施して、体や患部を動かしながら症状の改善、日常生活への復帰を目指します。もちろん理学療法士が行うので、無理なく体を動かしていくことが可能です。
個人差はあるものの、物理療法や運動療法などの理学療法を行うことで、むちうちは3か月程度で回復することが多いといわれています。
②投薬治療
交通事故によるむちうちで痛みが酷い場合は、投薬治療が行われます。ダメージを受けた患部の痛みを抑えるために、病院で処方された痛み止めを服用しましょう。
一般的に、痛み止めとして処方されている薬は、「消炎鎮痛剤」です。消炎鎮痛剤は、患部の炎症を抑え、痛みを鎮める効力があります。
消炎鎮痛剤であれば、病院の処方薬だけでなく市販薬も有効です。ただ、市販薬の使用について、医師に確認をとっておくことをおすすめします。副作用の問題もありますが、消炎鎮痛剤を常用することで症状改善の判別が困難になることや、症状改善の妨げになることも考えられるためです。
また、痛み止めはあくまで一時的に炎症を抑えるために使用するものです。治癒が促進されるわけではないことに注意しましょう。
出典・参照:消炎鎮痛剤について|池田歯科大濠クリニック
③ブロック注射
痛みのある患部へ、ブロック注射という局所麻酔を行う治療も有効的です。
ブロック注射とは、患部に麻酔薬やステロイド剤を注入する方法です。神経付近の炎症を抑えて、痛みが伝わるのを防ぐことができます。また、血流が良くなることで筋肉の緊張がほぐれ、症状の改善を図ることが可能です。
ブロック注射の他にも、トリガーポイント注射が行われることもあります。トリガーポイントとは押すと痛い部分のことで、その部分に注射をする方法がトリガーポイント注射です。
トリガーポイント注射もブロック注射と同じく、患部に麻酔薬などを注入し、鎮痛や筋肉のこわばりをほぐす効果を得ることができます。ブロック注射と異なり、体の浅い部分に注射し、痛みも比較的少ないです。
出典・参照:ブロック療法|岩井整形外科内科病院
むちうちの治療期間の目安
交通事故によるむちうちの治療期間は症状によって異なりますが、治療期間は交通事故から3~6か月を目安とすることが多いです。
ただ、むちうちとひと口にいっても症状はさまざまで、筋肉や神経などの損傷部位によっても治療期間は変わってきます。
人によっては、交通事故から6か月以上経過したにもかかわらず、症状の改善がみられないことも少なくありません。これ以上の改善が見込めないと判断された場合、医師から症状固定の診断を受けることもあります。
症状固定というと聞き慣れない方もいらっしゃるかもしれません。症状固定とは、これ以上治療を続けても改善が見込めない状態のことをいいます。
交通事故によるむちうちで請求できる賠償金
交通事故でむちうちになってしまうと身体的な負担はもちろん、金銭面での不安もあるかと思います。
ここからは、交通事故でむちうちになったときに請求することができる賠償金について解説していきます。少しでも精神的な負担を減らせるよう、請求できる賠償金の種類について正確に把握しておきましょう。
また、賠償金については、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準によって算定額に違いが生じることについても知っておく必要があります。
一般的には自賠責基準が最も安く、弁護士基準が最も高くなっています。任意保険基準は保険会社によっても変わってきますが、自賠責基準と同等程度と考えておけば問題はないでしょう。
一般的には加害者の保険会社から賠償金額が提示されますが、正しい金額であるのかわからないこともあるでしょう。もし少しでも賠償金の請求に不安がある際には、弁護士への相談を検討してみてください。
①治療費
交通事故によるむちうちの治療にかかった費用は、治療費として請求することができます。
ただし、治療費は、加害者の任意保険会社が病院に直接支払っている「任意一括対応」のケースが多いので、自分で支払って費用を請求することはあまりないかもしれません。
しかし、立て替える場合もあるので、事前に確認をしておきましょう。
②通院交通費
病院に通院する際にかかる交通費も、損害として請求することができます。
自家用車で通院した場合、病院までの距離に応じたガソリン代を請求することができます。また、バスや電車を利用して通院した場合も交通費として認められます。
しかし、タクシーや新幹線で通院する際は、電車やバスと比べて認められない可能性もあります。これらの費用を請求する際には、病院と最寄り駅の位置が離れている、駅構内を歩いて移動するのが困難であるなど、特別な事情を提示する必要があります。
あらかじめ保険会社に連絡をして、通院費として認められるかどうかを確かめておいた方がいいでしょう。
③入院雑費
交通事故によるむちうちで入院する際には、入院のために必要なものを揃える必要があります。
たとえば、衣類やティッシュ、新聞や雑誌などの購入費は、入院雑費として扱われます。とはいっても、実際にかかった費用を請求するわけではなく、入院日数に応じて一定額が支払われるしくみです。
もし、提示された入院雑費の金額を上回る支出がある場合、必要であると認められれば追加で請求することも可能です。この場合は、請求するための証拠として領収書などを残しておくとよいでしょう。
④休業損害
交通事故によるむちうちの影響や治療によって、仕事を休まざるを得なくなり、収入が減少した場合、休業損害として補償されます。
もちろん、仕事を休んでも収入が減少しなかった場合は補償を受けられません。また、休業損害は会社員だけでなく自営業者、さらには、収入のない家事労働を行っている専業主婦(主夫)の場合でも請求が可能です。
自賠責基準で休業損害を計算する場合は、被害者の職業に関係なく、1日あたり6,100円で計算されます。これに、実際の休業日数をかけることで、休業損害を求めることができます。
一方で、弁護士基準で休業損害を計算する場合には、被害者の職業によって、計算方法が異なりますので、注意が必要です。
会社員の場合、1日あたりの収入×休業日数で求めます。1日あたりの収入は、事故直前の3か月分の給与額を90日で割ることで計算することができます。
また、自営業者の場合は、1日あたりの収入を、事故前年1年間の収入を365日で割って計算していきます。事故前年の確定申告書や課税証明書が必要になりますので、準備しておきましょう。なお、確定申告をしていなかった場合は、賃金センサスの平均給与額を参考にして求めていくことになります。
次に、専業主婦(主夫)の場合は、実際の収入はありませんので、厚生労働省がまとめている賃金センサスという平均年収の統計データを用いて、計算していきます。
このように、さまざまな計算方法がありますので、自分に適した方法で計算することがポイントです。なお、弁護士基準は、弁護士が休業損害を計算するときに活用するものです。そのため、保険会社から提示された休業損害の金額に疑問を抱いた場合には、弁護士への相談を検討するとよいでしょう。
⑤慰謝料
交通事故によるむちうちで請求できる慰謝料には、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の2種類があります。
入通院慰謝料は、交通事故によって入院や通院を強いられたことで生じる、精神的苦痛に対する慰謝料です。入院や通院期間に従って、入通院慰謝料を算出していきます。
後遺障害慰謝料は、交通事故によって後遺症が残り、後遺障害として認められた際に請求することができます。後遺障害慰謝料は、認定された後遺障害等級によって異なります。
むちうちの場合に認定される可能性のある後遺障害等級は、14級9号、または、12級13号です。たとえば、14級9号に認定された場合、自賠責基準では32万円、弁護士基準なら110万円となります。また、12級13号の場合は、自賠責基準では94万円、弁護士基準なら290万円を請求することができます。
任意保険基準については、保険会社によって金額に差があることが多いので、保険会社に確認してみましょう。
出典・参照:障害等級表|国土交通省
出典・参照:後遺障害14級の慰謝料相場と等級認定のポイントを解説 | 法律事務所へ交通事故相談 | 弁護士法人ALG&Associates
⑥後遺障害逸失利益
交通事故でむちうちによる後遺障害が残ったことで、職業に制限がかかった、あるいは、まったく働くことができなくなったなど、労働能力に損害を被ってしまう方も少なくありません。
このような場合では、交通事故に遭わなければ将来的に得られるはずであった収入が失われてしまうことになります。この、失われてしまう利益のことを「逸失利益(いっしつりえき)」といいます。
交通事故による後遺障害によって、将来的に得られるはずだった収入が減ってしまうと考えられるため、得られるはずの収入を計算し、後遺障害逸失利益として請求することが可能です。後遺障害逸失利益は定額ではなく、交通事故以前の収入や認定された等級を元に計算が行われます。
もし、交通事故により死亡した場合は、死亡逸失利益として、得られるはずであった収入を補償してもらうことが可能です。
後遺障害診断書の内容をよく確認したり、その他の申請書類に不足はないかなど、さまざまなポイントに留意する必要があります。そのため、損害賠償の請求で損をしないためにも、弁護士への相談をおすすめします。
むちうちの治療費が打ち切られやすいケース
交通事故によるむちうちの治療中にもかかわらず、保険会社に治療費を途中で打ち切られてしまうトラブルも少なくありません。むちうちの治療期間は症状によって異なるため、治療期間が長引くと治療費を打ち切られてしまう場合があります。
治療費が打ち切られると、自己負担しながら通院しなければなりません。また、打ち切られたからといって通院をやめてしまうと、後から体に不調が生じたり、適切な入通院慰謝料を受け取れなくなってしまいます。治療費は低額ではないので、すべてを自己負担することは大変でしょう。
むちうちで通院している場合は、完治、または、症状固定の診断を受けるまで治療を継続する必要がありますので、治療費の支払いが打ち切られやすいケースについて把握しておきましょう。打ち切りを打診されるケースは多いので、事前に適切な対処ができるよう心構えをしておくことをおすすめします。
通院頻度が少ない
病院への通院頻度が少ない場合、保険会社から治療費打ち切りを打診される場合があります。
保険会社が打ち切りを打診する場合、もちろん会社の支出を抑えることも目的ですが、保険金詐欺を防ぐという目的があります。軽微な症状で通院期間を必要以上に延長して保険金を獲得することも考えられるため、厳しくチェックしているのです。
したがって通院頻度が少ないと、保険会社に症状が軽いと判断される可能性が出てきます。症状が軽いと判断されないためにも、痛みがある場合は医師の指示通りに通院しましょう。
症状に個人差もあるため、適切な通院頻度を具体的に示すことは難しいですが、おおよそ週に2~3日の通院をされている方が多いようです。
治療内容が簡易である
保険会社は支払いの手続きをする上で、主に診断書の内容を踏まえて判断していきます。
たとえば、診断書などの書類の情報から簡易な治療しか行われていないと判断された場合は、「もう治療の必要がなさそうだ」と治療費打ち切りの判断をする可能性があります。
しばらくの間、湿布薬を処方してもらうだけの通院が続いていたり、簡単なリハビリのみの通院が続いていたりする場合は「漫然と治療を続けている」と判断されてしまうかもしれません。
治療内容は基本的に医師が決定するので、治療費が打ち切りにならないよう相談しておくとよいでしょう。
むちうちの治療費を打ち切られないための対処法
保険会社の担当者から治療費の打ち切りを打診された場合、まずは通院の必要性を保険会社に主張しましょう。
むちうちの治療期間は、一般的に3か月ともいわれているので、3か月経過した時点で形式的に打ち切りを打診している可能性もあります。そのため、治療を受けることで、自分の症状がどう改善しているのか、きちんと説明できるようにしておくことは非常に重要でしょう。
なお、自分では対処できないと感じた場合は、弁護士に相談することも1つの方法です。個人対保険会社では、なかなか交渉が難しいこともあるでしょう。弁護士に依頼すれば、専門的な立場から交渉をしてくれますので、一度検討してみることもよいでしょう。
交通事故によるむちうちが後遺症になったらどうする?
もし、交通事故によるむちうちが後遺症になってしまった場合、まずは「後遺障害等級認定」を受けることを目指しましょう。
後遺障害等級認定には厳しい基準が定められているため、認定率は決して高くありません。さらに、むちうちによる後遺症の場合は、画像所見をもってしても症状を認めづらいことが多いため、認定の可能性は低いといえるでしょう。
後遺障害等級認定は、後遺障害診断書をもとに書類審査を行うため、診断書の内容に不備があると正しい認定が受けられないことがあります。診断書の書き方が原因で非該当となるケースもあるため、注意が必要です。
後遺障害等級が非該当にならないためにも、まずは審査に有利な内容で後遺障害診断書を作成してもらいましょう。自覚症状などは前もって書き出しておき、診断書作成の際に正しく記載してもらうことが大切です。
また、後遺症を裏付ける他覚的所見などの資料が不足している場合も、非該当になる可能性が出てきます。むちうちによる痛みやしびれなどの後遺症は、本人しかわからないことが多いため、後遺症を裏付ける医学的な証明が必要です。
さらに、審査に必要な検査があれば必ず受けるようにしましょう。画像所見がある場合は、診断書にコメントの記載を依頼してください。
事前認定は、後遺障害診断書を加害者の任意保険会社に提出すれば、その後の手続きを任せられますが、有利な内容で書類を提出することが難しいです。
反対に、被害者請求であれば、書類を集める手間はかかりますが、認定の可能性を高める工夫が可能です。申請する際には被害者請求で検討することをおすすめします。
適切な方法で完治を目指しましょう
これまでさまざまな治療法や賠償金、治療費の打ち切りを打診されるケースやその対処法について解説してきました。
当然のことですが、交通事故でむちうちになったら、まずは完治を目指すことが重要です。すぐに整形外科を受診して、適切な治療をスタートさせましょう。
先述したように、整形外科では理学療法やブロック注射など、むちうちに対するさまざまな治療が行われます。迅速に適切な治療を始めることが何よりも重要となります。
もし、交通事故でむちうちが後遺症になってしまった場合は後遺障害等級認定の手続きを行い、認定された場合には、後遺障害慰謝料を請求しましょう。
交通事故でむちうちを発症すると、個人差はあるものの、治療には長い期間がかかります。これまで解説してきた治療法や賠償金などについての適切な知識を身に付けて、実践していくことで、早期回復を目指すことができるでしょう。
この記事のライター
ドクター交通事故運営
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記載されている内容は※2023年1月12日 08:59:33 ※時点のものです。
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