交通事故直後の応急処置と対処法について解説!人工呼吸や止血方法も
交通事故直後の応急処置と対処法についてまとめました。頭部に怪我した場合の対処法や、外傷がある場合の止血方法も詳しく解説します。人工呼吸や心臓マッサージのやり方も紹介するので、交通事故で慌てないための応急処置を知っておきましょう。
目次
交通事故が起こった時の応急処置について解説
交通事故に遭った場合、多くの人がパニックに陥ります。負傷者がいても慌ててしまい、応急処置を適切に行うことができない場合も多いようです。
しかし、交通事故直後に正しい応急処置をすることは、生存率に大きく関わります。正しい応急処置を行うことで、何もしない時に比べ生存率は2倍になるといわれています。意識の有無や頭部に外傷がある場合など、さまざまなケースに合った応急処置の方法を覚えておきましょう。
交通事故直後の対処法
交通事故に遭うと、多くの人がパニックに陥ります。しかし、対処法を知っておけば慌てずに済むでしょう。交通事故に遭ったらどのような対応をするべきか、順番に解説していきます。
対処法①負傷者の確認
交通事故が発生したら、真っ先にすべきことは負傷者の確認です。負傷者は何人いるのか、怪我の程度はどのくらいか確認し、すぐに救急車を手配しましょう。救急車を手配した上で、自分でできる応急処置をします。
対処法②安全確保
応急処置をする際は、周りの安全を確認することも大切です。交通量が多い場所で交通事故が起きた場合、二重事故が起こる可能性もあります。自動車の流れや散乱物の有無を確認し、危険がなければ負傷者の確認にいきましょう。
応急処置は、負傷者を安全な場所へ移動させてから行います。しかし、頭部や首に外傷がある場合は、動かす際に注意が必要です。むやみに動かさず、危険がある場合のみ動かすようにしましょう。
対処法③意識・呼吸の確認
負傷者がいる場合は、まずは意識を確認しましょう。「大丈夫ですか?」と声をかけ、軽く肩を叩きます。何らかの反応があった場合は意識があるので、負傷者の楽な体勢をとらせましょう。楽な体勢がわからない場合は、気道を確保しつつ横向きに寝かせます。
意識がない場合や意識があっても朦朧としている場合は、呼吸状態も確認しましょう。負傷者の胸が上下しているか、口や鼻に耳を近づけて呼吸しているか確認します。呼吸がない場合は気道を確保し、それでも呼吸できない場合は人工呼吸します。
対処法④脈拍の確認
人工呼吸した後は、脈拍の確認も行いましょう。喉仏の横に頸動脈があるので、人差し指と中指を軽く押し付け、5〜10秒間脈が触れるか確認します。万が一脈が触れない場合は、心臓マッサージをします。近くにAEDがある場合は、併せて使用しましょう。
対処法⑤外傷・出血の確認
負傷者の外傷を確認し、出血が多い場合は止血します。止血には「直接圧迫止血」と「間接圧迫止血」の2種類の方法があります。直接圧迫止血は、直接傷口を圧迫して出血を止める方法です。
間接圧迫止血は、傷口の上にある動脈を圧迫することで止血する方法です。間接圧迫止血は素人には難しいので、応急処置をする場合は直接圧迫止血をするようにしましょう。
交通事故後の応急処置の方法
交通事故に遭った場合、状況に応じて応急処置をすることが大切です。負傷者の状態を確認したら、怪我の程度に合った応急処置をしましょう。
人工呼吸のやり方
- 息が負傷者の鼻から漏れないように、負傷者の鼻をつまんだまま人工呼吸をしましょう
- 息は、負傷者の胸が上がるまで吹き込みましょう
- 大きく息を吸い込み、1秒ほどかけて息を吹き込みましょう
- 息を吹き込むのは2回までにしましょう
負傷者が呼吸をしていない場合、まずは気道を確保しましょう。負傷者を仰向けにし、片手で額を抑え、もう一方の手の指先をあごに当てて持ち上げます。あごを上げることで喉の奥が広がり、気道を確保することができます。
人工呼吸は、気道を確保した状態で行いましょう。まず、負傷者の口を自分の口で覆い、密着させたまま息を吹き込みます。上手く人工呼吸を行うには、上記のポイントをしっかり抑えることが大切です。
さらに、人工呼吸は心臓マッサージとセットで行うことが望ましいです。人工呼吸は心臓マッサージの前に2回、心臓マッサージを30回行った後さらに2回行います。心臓マッサージ30回と人工呼吸2回をセットで、息をするまで繰り返しましょう。
しかし、顔面に外傷があり出血量が多い場合など、人工呼吸ができないケースもあります。その場合は気道を確保し、心臓マッサージを行ってください。
心臓マッサージのやり方
- 胸の中心は、乳頭と乳頭を結ぶ線の中央部分です
- 胸が4〜5cm沈むまで、強く圧迫します
- 大人の場合は、1分間に80〜100回の速さが目安です
- テンポ良く、絶えず30回圧迫します
- 圧迫後は、胸の高さが戻るように圧迫を解除します
脈が触れない場合は、人工呼吸と合わせて心臓マッサージを行いましょう。先ほど説明したように、人工呼吸を2回行ってから心臓マッサージをします。
胸の中心に手のひらの付け根部分を当て、もう片方の手を重ねましょう。体重が垂直に掛かるように肘を真っ直ぐ伸ばし、肩が圧迫部位の真上に来るようにします。負傷者が動く、うめき声をあげる、息をするまで、心臓マッサージと人工呼吸をセットで行いましょう。
止血方法
大量に出血している場合は、止血する必要があります。止血する際は、感染症予防のために手袋をはめて行いましょう。手袋がない場合は、スーパーのビニール袋などを利用しても良いでしょう。
直接圧迫止血を行う場合は、傷口を清潔なハンカチやタオルで直接押さえてください。手のひらで傷口を圧迫しながら、外傷部位を高く持ち上げると止血効果が高まります。
間接圧迫止血の場合は、外傷部位によって圧迫する箇所が変わります。腕の場合は二の腕の中央あたり、足の場合は足の付け根と骨盤を結ぶ線上を圧迫してください。しかし先ほど説明したように、間接圧迫止血は難しいので、直接圧迫止血を行うようにしましょう。
AEDの使用方法
- 電源スイッチを手前にスライドさせて、蓋を開けます(自動で電源ON)
- 電極パッドを右胸と左脇腹に貼り付けます(AEDの液晶画面で確認)
- 音声に従い、負傷者から離れます
- ボタンを押して、電気ショックを行います。
AEDの使用方法は上記の通りです。ボタンは誤操作を避けるため、ひとつしかありません。蓋を開けると自動で電源が付き、液晶画面と音声にて指示を出してくれます。
AEDと人工呼吸、心臓マッサージを併用することで生存率もアップします。音声と画像でわかりやすく指示を出してくれるので、慌てずに操作しましょう。
交通事故で応急処置を行う際の注意点
交通事故で応急処置を行う際は、注意しなければいけない点もあります。逆に被害が広がる恐れもあるので、応急処置をする際は4つの注意点に気をつけましょう。
注意点①頭部を負傷した怪我人の動かし方
交通事故が発生した場合、負傷者を安全な場所に移動させる必要があります。しかし、頭部に外傷がある場合は、移動させるべきか迷うでしょう。
頭部に外傷がある場合はむやみに動かさないことが鉄則ですが、交通量が多い場所でそのまま応急処置を行うと2次被害が発生することもあります。2次被害が発生しそうな危険な場合に限り、周囲の人と協力して移動させましょう。
頭部に外傷がある場合は、頚椎も損傷している可能性があります。そのため、負傷者の移動には十分注意する必要があります。頭部や首を怪我したと思われる負傷者の移動は、ひとりが頭部と首を固定し、残りの人で首から下を持って全員同時に移動させます。
移動させるときは中心にいる人が「1・2・3」と声をかけ、息を合わせて同時に移動することが大切です。頭部や首に外傷がある場合は決して無理をせず、できるだけ必要最小限に止めるようにしましょう。
注意点②軽症でも救急車を要請する
交通事故に遭った直後は、動揺して痛みを感じにくい状況です。意識があって自分で動くことができても、実は重傷だったということも少なくありません。さらに、交通事故直後は症状が出なくても、時間の経過とともに症状が現れることもあります。
特に、頭部に衝撃を受けた場合は、すぐに症状が現れないケースが多くあります。怪我の大小に関わらず、交通事故で負傷者がいる場合はすぐに救急車を呼びましょう。
注意点③安全確保に努める
交通事故が発生した時、応急処置と同様に安全確保にも努めなければいけません。道路交通法七十二条には「道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない」と記されています。
交通事故が発生したら負傷者の確認をし、周囲の人と協力して事故車両などは安全な場所へ移動させます。ハザードランプが点く場合は点灯させ、三角表示板や発煙筒を使って後続車へ事故を知らせましょう。
しかし、自身も怪我をしていたり、交通事故に巻き込まれた当事者である場合は、パニックになっていることもあります。応急処置の方法がわからない場合は無理をせず、119番通報をした消防署の指示を仰ぎましょう。
注意点④高速道路は危険
高速道路は交通量が多く、スピードが出ているので大事故につながりやすくなります。二重、三重の追突事故になりやすく、応急処置をすること自体が難しいケースも少なくありません。
高速道路で交通事故が発生した場合は、車から降りてむやみに歩き回らなようにしましょう。車両を動かせる場合は路肩に移動させ、ハザードランプや停止表示板、発煙筒を使い、後続車に事故を知らせます。
車両に留まると追突される恐れがあるので、ガードレールの外など、安全な場所へ避難してください。安全な場所へ移動してから、110番や道路緊急ダイアルに連絡しましょう。
交通事故の応急処置は義務
交通事故が発生した場合、自動車運転手、同乗者は応急処置をしなければなりません。負傷者の救護を怠ることは、刑罰の対象にもなるので注意しましょう。
道路交通法による交通事故の場合の措置
道路交通法では、「交通事故があったときは、当該交通事故に係る車両等の運転手その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない」と定めています。
どちらが被害者でどちらが加害者であるかは関係なく、事故に関わった全ての車両運転者等が対象です。また、運転手のみではなく、同乗者も応急処置を行う義務があります。
応急処置をしない場合の刑罰
交通事故を起こしてその場を去ることは、刑罰の対象になります。人を負傷させながら応急処置をせずに逃げた場合は、10年以下の懲役、または100万円以下の罰金に科せられます。
また、刑罰は事故を起こしていない運転手でも対象です。人を負傷させていなくても、負傷者に応急処置をせずに逃げた場合は、5年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
さらに、刑罰は同乗者に科せられることもあるので注意しましょう。他人が運転する車の同乗者が負傷者を応急処置しなかった場合は、1年以下の懲役、または10万円以下の罰金に処せられます。
負傷者を置き去りにする行為は、いわゆる「ひき逃げ」にあたる行為です。応急処置をせずに逃げることは、法律的にも倫理的にも非常に悪質な行為と言わざるを得ません。
救護義務違反は行政処分の対象になる
負傷者を救護しないで逃げた場合、刑罰だけでなく、重い行政処分も科せられます。交通違反や交通事故に対する行政処分は、運転手に対して点数をつける形で行われます。
交通人身事故で救護を怠った場合は、救護義務違反として35点付けられます。また人身事故を起こしたことに対しても、被害の度合いに対して20点(死亡)〜2点(軽傷)までの点数がつけられます。
累計15点で、免許は取り消し(免取)です。免取後、免許を取り直せるまでの期間を「欠格期間」といい、この期間は免取の原因となった点数によって変わります。例えば55点で免取となった場合は、7年間待たなければ免許を取り直せません。
交通事故直後の応急処置は生存率に大きく関わる
交通事故が起こった場合、被害者、加害者関係なく負傷者を救護しなければなりません。怪我の大小に関わらず、負傷者がいる場合はまず救急車を要請しましょう。その上で、できる範囲の応急処置を行います。
頭部に外傷がある場合や意識がない場合は、むやみに動かさないことも重要です。止血方法や人工呼吸の正しいやり方も、この機会に覚えておきましょう。
この記事のライター
伊藤
女の子と男の子の子育てをしながら、フリーライターをしています。交通事故や怪我に関する疑問を解決できるよう、主婦目線でわかりやすく説明していきます。
記載されている内容は※2022年1月14日 12:09:18 ※時点のものです。
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