バック事故の過失割合の目安は?よくあるトラブルについても
バック事故の過失割合について詳しく解説します。加害者、被害者それぞれの過失割合の目安と、決め方のポイントを説明!また、バック事故をはじめとした交通事故でよくあるトラブルや、加害者側の主張も例示します。慰謝料についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
バック事故の過失割合やよくあるトラブルを解説!
駐車場で起きる交通事故の、半数を占めるともいわれているバック事故。もしもバック事故に巻き込まれてしまった、または起こしてしまった時、過失割合はどの程度のものになるのでしょうか。バック事故でよくみられるトラブルとあわせてみていきましょう。
バック事故の過失割合の目安
万が一、バック事故の当事者となってしまった場合、加害者・被害者それぞれの過失割合はどのようになっているのでしょうか?大まかな目安を、状況ごとに例示します。
バック事故の定義
バック事故は、逆突事故ともいい、交通事故の中でも車両が後退中の後方不注意を原因として、他の車両や人、物に衝突する事故を指します。バック事故が起きやすい場所としては、車両が多く停車していたり、人の往来のある駐車場が代表的です。
過失割合の目安①バック走行中に人や自転車に衝突した場合
はじめに、自動車が駐車場所を決め、その位置へとバック走行中に衝突してしまった場合を考えてみます。このようなバック事故の場合、加害者(車両)と被害者(歩行者等)の過失割合は90:10が基本です。
駐車場は、車を停車する場所であると同時に、利用者が車に乗り降りする場所でもあります。よって、車両の運転者は、歩行者の動きに注意を払い、いつでも停車できる程度の徐行運転をしなければなりません。
特に、歩行者が交通弱者である場合は車両側の過失割合がさらに重くなります。歩行者が児童(小学生)や高齢者であれば95:5、幼児(未就学児)や身体障がい者であれば100:0の過失割合となる可能性もあります。
過失割合の目安②停車中にバックする車に衝突された場合
自分が駐車場などで停車中に、バックしてきた車に衝突された場合は、過失割合は基本的に10:0となります。バック事故に限らず、交通事故では、停車中の車両の過失割合は0と考えられるためです。
過失割合の目安③バックで駐車中に車に衝突された場合
自分がバックで駐車場のスペースに駐車中、他の車に衝突された場合のバック事故では、過失割合は80:20が基本となります。
通路を通行している車は、駐車スペースに進入する車に対して、駐車完了まで停止するか、安全にすれ違える距離と速度で進行する義務があります。こうしたバック事故では、通路を通行していた側が、この義務を怠っていたとみなされ過失割合が重くなるためです。
過失割合の目安④駐車場からバックで出る際に車に衝突された場合
自分が、駐車場からバックで出ようとした際に、通路を通行中の車に衝突された場合は、基本的な過失割合は30:70となります。このバック事故のケースでは、駐車スペースから通路に出ようとする車は、通路を進行中の車よりも安全確認がやりやすいと判断されます。
通路に出ることは、通路を進行中の車に比べて衝突を回避しやすく、かつ他の車の進行を妨げる行為です。このためバック事故の被害者としては、他のケースよりも過失割合を重く課されるのです。
過失割合の目安⑤公道を走行中に脇道からバックした車に衝突された場合
自分が公道を走行中、脇道から後退してきた車に衝突された場合のバック事故では、過失割合は20:80が基本となります。
公道は、直線であれば相応の速度で走行しているため、交通事故の被害も大きくなりがちです。過失割合が大きくなることはもちろん、けがの容態によっては、多額の慰謝料の発生も考えられます。
バック事故の過失割合で起こりうるトラブル
トラブル①交通事故の状況について嘘をつかれる
自分が完全に停車していたバック事故では、停車の事実が客観的に証明されれば、基本的な過失割合は10:0で加害者有責となります。
警察による、交通事故直後の実況見分では加害者・被害者双方の主張や、事故発生時の双方の車の位置などを元に、過失割合を決める調書が作られます。この時、警察官に対して、事実でないことを肯定してしまうと、その発言を元に過失割合が課される可能性があります。
また、そのバック事故の加害者や、加害者側の保険会社の中には、加害者がバック事故の直前に一時停止していた、被害者も前方不注意だったなど、事実と異なる主張をする者もいます。
これは、被害者側にもバック事故の過失を認めさせ、80:20の過失割合とすることを狙うものです。こうした言い分に反論するには、ドライブレコーダーや、駐車場の防犯カメラの映像、目撃者の証言などを相手方保険会社などに提示することとなります。
トラブル②クラクションを鳴らさなかった
バック事故で、停車している車に対して後退中の車が衝突したケースでは、加害者側から、被害者側からクラクションの警告がなかったと主張する場合があります。被害者側が、クラクションを鳴らすという形での衝突回避の義務を怠ったとして、過失割合の修正を求める言い分です。
こうしたケースでは、被害者側はバック事故を回避できなかった事情を主張しましょう。急なバックなどでクラクションを鳴らす余裕もなく、バック事故となったケースでは被害者側の過失割合を0とすることもあります。
もし被害者が、後退してくる加害者の車に気づいていながらクラクションを鳴らさなかった場合、被害者に最大20程度の過失割合が課されます。また、証人の証言やドライブレコーダーなど、客観的な証拠がない場合は、徐行と判断され、若干の過失割合が付くこともあります。
トラブル③車が見えなかったと言われる
バック事故の加害者から、車が見えなかったという主張をされることがあります。この主張自体が嘘の可能性もあるため、過失割合の算定に影響が出るようであればドライブレコーダー等の証拠の提出が必要になるでしょう。
トラブル④停車ではなく徐行していたと言われる
バック事故のトラブルで、加害者側が被害者側に対して、被害者側が徐行しており、完全には停車していなかったと主張することがあります。加害者側からみると、双方が停車していなかったとすることで、バック事故の過失割合を軽くできるためです。
実際に停車していた場合は、バック事故時のドライブレコーダーの記録や、周囲にいれば目撃者にも証言をお願いして、その事実を示しましょう。また、双方の車両の損傷箇所やタイヤの跡などを基に鑑定することで、ある程度の判断も可能になるので、過失割合が10:0とするための証拠にもなります。
トラブル⑤進行方向を守っていない
バック事故では、加害者・被害者それぞれの車両の進行方向が過失割合を決めるうえでの争点となります。どちらの立場であっても、駐車場を進行する車には、場内のルールに従う義務があります。
このため、順路に関する標識や標示を守っていなかったことを主張された場合、バック事故の被害者側にも一定の過失割合が認められます。
トラブル⑥停車位置が悪いと主張される
バック事故における加害者が、被害者の駐車していた位置が駐車スペースよりも前に出すぎていたなどで後退を妨げられたと主張することがあります。
停止していた車に対しては、基本的には過失割合は付きません。しかし、駐車場の枠外など、停車できない位置であった場合などでは、バック事故の過失割合が発生します。
停車していた側としては、停止禁止の場所ではなく、他の車両の進行を妨げない位置として適切だったことなどを主張することが反論になります。
バック事故で加害者から支払われる損害賠償金
バック事故などの交通事故の被害者になってしまったとき、加害者から支払われる損害賠償金は、大きく分けて慰謝料を含め4項目です。それぞれの項目について説明します。
支払われる損害賠償金①積極損害
積極損害とは、入院・通院費、車の修理代など、交通事故のために必要になった出費を指します。積極損害には、付添人を雇った場合の人件費、事故で歩けなくなった場合に通勤で使用したタクシー代なども含まれます。
支払われる損害賠償金②休業損害
休業損害とは、事故のために現在の仕事を休み、減ってしまった給料などの収入を指します。減った給料・収入分は、加害者に請求できます。
支払われる損害賠償金③逸失利益
逸失利益とは、事故で被害者が亡くなったり、生涯治らない障害(後遺障害)となったために失った、将来得られるはずだった収入を指します。金額は、被害者の年齢や職業によりますが、多いと数千万円単位になることもあります。
支払われる損害賠償金④慰謝料
慰謝料は、事故によって被害者が受けた精神的な苦痛に対して支払われるお金です。慰謝料には、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の3種類がありますが、いずれも被害者がけがにより治療などを行った時にのみ支払われます。
バック事故により、被害者側の車は損害を受けたものの、運転者や同乗者が治療をしなかった場合は、物損事故として扱われ慰謝料の対象にはなりません。
バック事故の過失割合で知っておきたいポイント
ポイント①過失割合は修正要素によって変わる
過失割合は、これまで発生した交通事故の種別と、紛争の解決方法を蓄積したデータを基準として決められています。これに、発生時の具体的な状況や、被害者がどのような人であったかといった修正要素が加わって、その事故の過失割合が確定します。
バック事故では、クラクションを鳴らしていたか、車間距離が確保できていたかの2点が過失割合の主な修正要素として挙げられます。
過失割合について、相手方の任意保険会社から提示を受けた時は、まずその根拠を確認しましょう。納得がいかなければ、自分の加入している保険会社の担当者などに相談すべきです。
ポイント②弁護士特約を利用する
保険の特約の一つに、弁護士特約というものがあります。弁護士特約は、交通事故に遭った際、弁護士への依頼費用を保険会社が負担するというオプション契約です。
自動車保険の特約はもちろん、生命保険、傷害保険、火災保険など、交通事故とは関係の薄そうな保険の弁護士特約でも利用できることがあります。バック事故の解決や過失割合の交渉を弁護士に依頼する際は、加入しているそれぞれの保険の担当者に問い合わせてみましょう。
ポイント③過失相殺の片側賠償
片側賠償とは、当事者の片方の過失割合が1割以下などの低いものとなった時に、若干の過失を認め、過失割合の合計が100にならない形で示談することです。片側賠償には、以下の特徴があります。
- 示談が早期に成立しやすい
- 代理人に示談の代行をしてもらえる
片側賠償では、被害者側も若干の過失があったことを認めるものの、損害額の算定では割合をゼロとして扱うので、加害者側への損害賠償を支払う必要がなくなります。結果として、バック事故による紛争であっても、比較的短期間で示談が成立しやすい傾向です。
また、過失割合がゼロになった側は、加入している任意保険会社に示談の代行を依頼できません。片側賠償では、被害者も自らの過失を認めているので、加害者と直接交渉する必要がなくなります。
ただし、自分の損害額が高額な場合は、片側賠償にすると、慰謝料や十分な賠償が受けられなくなるリスクが出てきます。過失割合を争う余地があるならば、自分だけで判断せず保険代理店や弁護士に相談すべきでしょう。
バック事故の過失割合の目安を抑えておこう!
バック事故では、状況によって過失割合が変わってくることが分かりました。自分が被害者の場合でも、バック事故が起きるまでの状況や、事故後の対応によっては、必ずしも自分が完全に責任がないとは言い切れない可能性もあります。
また、慰謝料や車の修理費の金額にも関係してくることを考えても、過失割合の決定はあなたの今後の人生にも大きな影響を与えかねません。
万が一、自身や家族がバック事故に巻き込まれた時を想定して、ドライブレコーダーを取り付けるなど、一定の対策を講じることも考えたほうがよいでしょう。
この記事のライター
東雲修
世の中の「ちょっと気になること」を日々集めて、読者の皆様に分かりやすく解説していきます。交通事故での「困った!」が、「分かった!」に変わる助けになれば幸いです。
記載されている内容は※2022年1月14日 12:14:44 ※時点のものです。
現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
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