交通事故で加害者になった場合のその後の流れは?刑罰についても解説
交通事故で加害者になった場合とその後について紹介します。交通事故で加害者が逮捕された、その後の刑罰や注意点などをまとめました。自動車を運転していると、思いもよらないところで交通事故になる可能性もあるので、知識として覚えておきましょう。
目次
交通事故で加害者になってしまったその後の流れを解説
本記事では、交通事故で加害者になってしまったその後を紹介します。2020年の交通事故の死亡者は2,839人です。車や自転車などの車両を運転していれば、誰でも交通事故の加害者や被害者になる可能性があります。
交通事故の加害者がやるべきことやその後の流れ、被害者に対する責任や刑罰などをまとめています。
交通事故の加害者がまずやるべきこと
まずは、交通事故で加害者になったときにやるべきことを紹介します。交通事故で加害者になってしまった場合は、被害者の救護や二次災害が発生しないようにその後の対応が大切です。そして、自分で判断せず、警察や弁護士に連絡しましょう。
負傷者の救護と二次災害発生の防止
交通事故で加害者になった場合は、負傷者を確認し救護を行いましょう。その後、相手が怪我をしているかを速やかに確認します。負傷していた場合、病院に自力で行けるかなどを確認し、行けない場合は救急車を呼びましょう。
道路交通法72条には救護義務が設けられており、怠ると道路交通法違反(救護義務違反)になるので、加害者になった場合は必ず被害者の救護や確認をしましょう。メディアや新聞などで耳にする「ひき逃げ」は救護義務違反と警察への事故報告義務違反にあたります。
ひき逃げは自分が逃げたかどうかではなく、被害者を救護したかどうかで判断されるので、間違えないようにしましょう。また、その場では症状がなくても、その後体が悪化するケースもあるので、念のために病院に行くようにすすめることが大切です。
怪我している人を救護して警察に報告が済んだら、その後車両を安全な場所に移動させましょう。そして、三角表示板や発煙筒などを使って事故の発生を伝えて、二次災害を防ぎます。この行動も道路交通法72条に定められている、重要な義務です。
警察へ事故の連絡
交通事故で加害者になったときは、警察へ連絡をしましょう。交通事故を起こした場合、道路交通法72条によって、警察に連絡する義務があります。また、警察に連絡をしないと、保険が適用されない場合もあるので、しっかり報告をしましょう。
交通事故時に被害者が怪我をしておらず、破損が少なかったため警察に報告をしていないケースがあります。
その後、被害者から体が痛くなったと報告を受け、連絡もせずに高額の治療費を支払うことになってしまったケースもあります。その後のトラブルにしっかり対応できるように、加害者になった場合は警察には必ず連絡しましょう。
弁護士へ事故の連絡
交通事故で被害者の救護と警察への連絡が終わったら、その後は弁護士にも相談をしましょう。交通事故で死亡させてしまうなど重大な事故でも弁護してくれます。身元が分かっていて、証拠隠滅や逃亡がなければ、在宅のまま調査をするケースもあります。
また、1度逮捕されても1~3日で釈放されて、在宅調査に切り替わる場合もあるでしょう。交通事故で動ける場合は、その後の流れや対応を弁護士に相談するのも良いでしょう。
弁護士の相談料は1時間約10,000円ですが、無料相談を承っている事務所もあります。弁護士を雇うと、示談に応じてもらえる可能性があるので、相談してみましょう。
交通事故で加害者が逮捕された場合のその後の流れ
次は、交通事故で加害者が逮捕されたその後の流れを紹介します。加害者が逮捕されたら、警察官送致や起訴・不起訴の決定が下され、その後に刑事裁判が始まります。
①検察官送致・勾留
加害者が交通事故で逮捕されると、留置所に入れられて取り調べを受けます。そして、逮捕されてから48時間以内に検察官に引き継がれ、自身が調べた結果と証拠を元に勾留するかを考え、その後裁判官に勾留請求を行います。
勾留は罪を犯した際の理由や住所、逃亡の恐れがあるかなど見極めて決定するため、とても重要な場面です。勾留が決定すると、勾留請求から10日間勾留されます。また、死亡事故や罪の重さなどの事件によって最長10日間まで延長されます。
②起訴・不起訴の決定
事故で罪を犯した人を検察官が見極め、刑事裁判に起訴するか不起訴にするかを決定します。起訴や不起訴の決定は、勾留期間中に判断します。もし、加害者側の過失で罪になって起訴されても、減刑になるように活動することが重要です。
③刑事裁判
交通死亡事故で検察官に起訴された場合、正式裁判か略式裁判のどちらかを受けなくてはいけません。過失運転致死罪の場合は、略式裁判のケースが多く、罰金を支払って終了します。しかし、危険運転致死罪の場合は、懲役刑しかないので、裁判が必ず開かれます。
正式裁判では、起訴から1ヶ月程度で第1回公判が開かれ、自白すると2~4回、否認すると7~8回公判が開かれるケースが多いです。裁判では、無罪、執行猶予付き判決、罰金刑、禁錮・懲役の実刑判決が下されます。
交通事故で加害者が逮捕されなかった場合の流れ
交通死亡事故で加害者が警察に逮捕されなかった場合でも、その後在宅で捜査は続きます。交通死亡事故であっても、証拠隠滅や逃亡の恐れがないと判断された場合は、在宅捜査になる可能性があります。
具体的な例として、加害者がまじめに勤務している会社員で、住まいや家族がいる場合です。勾留を10日間されると、会社に影響がでてしまいます。それを避けるためにも、弁護士を通して検察官に勾留する必要性がないことを伝えてもらいましょう。
交通事故で加害者が負う責任
次は、交通事故で加害者が負うことになる責任を紹介します。交通死亡事故などで加害者になってしまったら、あらゆる面で責任を取らなくてはいけません。
①刑事上の責任
交通死亡事故などで加害者になった場合は、過失がない限り、過失運転致死罪が成立します。過失運転致死罪が成立したら、刑事上の責任が発生する可能性が高いです。また、交通違反に該当する交通事故の場合も加害者は刑事上の責任が発生します。
②民事上の責任
民事上の責任とは、交通死亡事故などの罪に問われ、相手に損害が発生した際に、賠償する義務のことです。民事上の責任は、保険に加入している場合、保険会社が代わりに支払ってくれます。
加害者が保険に加入していれば、負担する必要はありません。しかし、保険の限度額を超える損害が発生してしまった場合は、加害者が被害者に支払う義務が発生します。
③行政上の責任
交通事故の加害者になった場合、民事や刑事上の責任とは別に、行政上の責任が発生します。交通事故時に交通違反があった際、反則金や免許の違反点数が加算されます。また、交通事故で被害者に負傷を負わせたときも、加害者に違反点数が加算されるケースが多いです。
交通事故で死亡者が出た場合の加害者に科せられる刑罰
交通事故で死亡者がでてしまった場合の刑罰について紹介します。危険運転致死罪や過失運転致死罪など4つの刑罰についてまとめました。
刑罰①道路交通法違反
交通死亡事故が発生すると、事故の状況によって道路交通法違反の罪になる場合があります。人身事故で救護義務を行わず逃走すると、10年以下の懲役または1,000,000円以下の罰金です。
さらに、飲酒運転の場合は酒帯運転も過失運転致死罪にもなるので、その後の刑罰が最長15年に引き上げられます。
刑罰②危険運転致死罪
危険運転致死罪は、通常通り運転ができない状態で、車を運転し人を死亡させたときに発生する犯罪です。危険運転行為は、酒や薬物が影響しているケースやあおり運転、信号無視や通行禁止道路の走行などがあります。
危険運転致死罪は、危険と分かっていながら意図的に運転して死亡させたことから、1年以上20年以下または、15年以下の懲役の重い懲役刑が下されます。
刑罰③準危険運転致死罪
準危険運転致死罪は、お酒や薬物など正常な運転ができない恐れがある状態で車を運転し、人を死亡させたときに発生する犯罪です。準危険運転致死罪は15年以下の懲役刑です。
また、アルコールを摂取しているのを隠す行為をした場合は、過失運転致死アルコール等影響発覚免税罪で、12年以下の懲役となります。自動車運転の処罰の罪を受けた加害者が、無免許であった場合さらに重い刑罰になります。
刑罰④過失運転致死罪
過失運転致死罪は、車を運転する際に注意を怠ってしまい、人を死亡させたときに発生します。7年以下の懲役もしくは、1,000,000円以下の罰金です。主にブレーキとアクセルの踏み間違い、ハンドルの操作ミス、わき見運転などがあります。
過失運転致死の量刑相場
ひき逃げなどの過失運転致死罪の場合、ほとんどが禁錮刑になります。死亡事故が過失の場合の量刑相場は9割以上が1~3年の執行猶予付きの禁錮刑です。もっとも悪質な事故の場合は、3年を超える実刑判決になるケースもあります。
禁錮と懲役の違いは?
禁錮刑も懲役刑も刑務所に収容されます。しかし、禁錮刑は懲役刑とは違い、刑務作業がありません。そのため、禁錮刑の方が懲役刑よりも軽い刑です。しかし、禁錮刑の受刑者は自ら希望して刑務作業をする場合が多いです。
交通事故で加害者になったときの注意点とその後の影響
次は、交通事故で加害者になったその後の影響や注意点について紹介します。交通事故で罪を犯したときの注意点やその後の対応、影響などをまとめています。
注意点①交通事故直後に被害者と過失割合や示談の話をしない
交通事故を起こした現場で過失の割合や示談の話は辞めましょう。交通事故の過失の割合や損害賠償額は調査をしてから確定します。そのため、直後に判断してしまうと、その後から有利になった場合でも変更するのが難しくなります。
示談書を交わしていない場合でも、口頭で契約は成立するため、交通事故現場で軽々しい約束などは控えましょう。しかし、相手に被害が及んでいるのは明らかなので、その後のためにも謝罪はしっかり行いましょう。
注意点②被害者への対応を保険会社任せにしない
交通事故に遭った被害者への対応を、保険会社任せにするのは辞めましょう。保険会社にすべて任せてしまうと、示談交渉をする場面になったときに、誠意がないと思われてしまう恐れがあります。被害者側に誠意をもって接していることをしっかりみせましょう。
また、被害者を負傷させてしまった場合、加害者に過失運転致死罪が成立します。その後、検察や警察の取り調べを受けた後に起訴の判断が下されるでしょう。その際に、被害者側との間に示談が成立していないと、マイナスに物事が動く場合があります。
その後の影響①被害者へ支払う賠償金で破産する
交通事故の加害者が保険に加入していない場合、賠償金で破産する恐れがあります。任意の保険に入っていれば、被害者にかかった損害賠償は保険会社が負担してくれます。
しかし、保険に入っていない場合、加害者の自己負担になり、資産を差し押さえられる可能性もあるでしょう。交通事故にあってしまった場合のその後も考えて、保険には加入しておきましょう。
その後の影響②家庭崩壊
交通事故が原因で家庭崩壊するケースが多いです。交通事故が自分の周りに知られてしまい、嫌がらせを受ける場合があります。家族を巻き込まないために離婚する人や、夫婦関係にヒビが入って修復不可能になる場合もあります。
また、交通事故を起こしてしまったことで、加害者本人が自暴自棄となり、家庭が壊れてしまうケースもあります。そして、離婚だけではなく、兄弟や親子関係が悪くなり、絶縁することもあるでしょう。
その後の影響③職を失う
交通事故の加害者になってしまい、職を失う人も多いです。会社の就業規則や社長の判断で、懲戒解雇になる人もいます。また、解雇にならなかったとしても、停職処分や減給処分になる可能性は高いです。
また、トラックやタクシーの運転手は車がメインの職業なので、重大な交通事故を起こしてしまうと免許停止や取り消しになる可能性があります。
交通事故で加害者になったらその後の適切な対応が重要である
交通事故には巻き込まれたくありません。しかし、車両を運転していると交通事故に巻き込まれる可能性があります。
そして、加害者になってしまったときは、事故後にしっかりと対応することが大切です。交通事故にあってしまった場合でもすぐに対応できるように、予備知識として学んでおきましょう。
この記事のライター
あずき
記載されている内容は※2022年1月14日 12:15:20 ※時点のものです。
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