むちうちは完治できる?治療方法や後遺症が残った時の対処方法を解説
むちうちがなかなか完治しないということもあるのではないでしょうか。 今回はむちうちの種類や治療方法、治療期間の目安、後遺症が残った時の対処方法などを紹介しています。むちうちの治し方を知りたい方、むちうちがなかなか完治しない方はぜひ読み進めてみてください。
目次
むちうちが完治するまでの期間や後遺症とは?
交通事故の衝撃によって、首などに強い負荷がかかり、「むちうち」になってしまう場合があります。
むちうちの程度によって異なりますが、完治するまでの期間の目安は、軽症で約1週間~3ヶ月、重症のものになると半年以上になるといわれています。
また、必要な期間治療を受けても、症状が完治せず、後遺症が残ってしまう場合もあります。
むちうちが後遺症にならないようすみやかに病院を受診することが大切ですが、万が一、後遺症が残ってしまった場合には、下記で解説する後遺障害の等級認定を行いましょう。
この記事では、交通事故で負ったむちうちの症状や損害賠償の種類などを解説しています。
むちうちによる痛みの原因とは?
むちうちとは、交通事故の衝撃により、首が鞭のようにしなり、首の筋肉や神経を損傷することで生じるさまざまな症状のことをいいます。
また、むちうちは正式な傷病名ではありません。正式には「頸椎捻挫」や「外傷性頸部症候群」などと診断されます。このような傷病名を総称してむちうちと呼ばれています。
むちうちの主な症状は、頭痛、首や肩の痛み、肩こり、吐き気、めまいなどのさまざまな症状が現れる可能性があります。むちうちを完治させるためにも、早めに病院を受診して治療を開始することが大切です。
出典・参照:むちうち症 | 宇都宮のはせがわ整形外科
むちうちの種類
ここでは、むちうちの主な種類について紹介しています。
むちうちの種類は、大きく分けて、「頸椎捻挫」・「神経根症状型」・「脊髄症状型」・「バレリュー症候群」・「脳髄液減少症」の5つがあります。
それぞれどのような症状なのか見ていきましょう。
出典・参照:むちうち症について|東野整形外科医院
頚椎捻挫(外傷性頚部症候群)
頚椎捻挫(外傷性頚部症候群)は、首の背中側の筋肉や靭帯といった組織が傷つくことにより起こります。
主な症状としては、首や肩の痛み、可動域の制限など、多岐にわたるでしょう。
また、むちうちと診断された場合、約7割ほどがこの頸椎捻挫になるといわれています。むちうちというと、首周りを痛めているとイメージされやすいのはこのためでしょう。
出典・参照:頸椎捻挫(けいついねんざ)|整形外科河村医院
神経根症状型
神経根症状型は、交通事故による衝撃で、椎間孔の神経根が圧迫され、傷つくことが原因で起こります。
神経根症状型の主な症状は、頸椎捻挫型の症状と同様に、腕の知覚障害や放散痛、反射異常、筋力低下などの症状があります。
神経根症状誘発テストを受けた結果、陽性となり、せきやくしゃみでひどく痛む場合もあるでしょう。
脊髄症状型
脊髄症状型は、頸椎中の脊髄や神経枝が損傷したことで現れる症状です。
脊髄の神経が傷ついてしまうと、運動障害や知覚障害、痛み、しびれといった症状が現れる可能性があります。
また、脊髄症状型では、上半身に限らず、腕や足などさまざまな部位に神経症状が現れる可能性があります。
バレリュー症候群(自律神経障害)
交通事故で首を損傷すると、自律神経まで損傷してしまうことがあります。
自律神経は、体のさまざまな器官をコントロールしているため、傷つくと思わぬ症状が現れる場合があります。
たとえば、バレリュー症候群では、頭痛やめまい、耳鳴り、吐き気などの症状が考えられます。
脳髄液減少症
脳髄液減少症は、症状の原因が明らかにされていませんが、交通事故の衝撃が原因で、脳脊髄液が漏れ、脳脊髄液が少なくなることで現れる症状といわれています。
頭痛やめまい、首の痛みが主な症状ですが、症状には個人差があり、原因を明らかにすることは困難な場合があります。
この他にも、全身の倦怠感や記憶力の低下、睡眠障害などの症状が現れるともいわれています。
出典・参照:脳脊髄液減少症について|たつの市
むちうちに行われる治療・施術の方法
むちうちを完治させるためには、早めに病院を受診することが大切です。
また、病院の治療のみでなく、整骨院や接骨院、鍼灸院などの施術を受けることで、早期回復を見込める場合があります。
ここでは、むちうちの治療法や施術方法を紹介します。
病院で行われる治療方法
むちうちの治療を受ける場合には、整形外科を受診しましょう。
整形外科では、レントゲンやMRIといった検査機器を使用して精密検査や痛み止め、湿布などの処方といった医療行為を受けることができます。
また、交通事故の手続きで必要になる診断書は、医師のみ作成することができます。そのため、むちうちに限らず、交通事故で怪我を負った場合には、必ず整形外科を受診しましょう。
出典・参照:日本整形外科学会 「整形外科の特徴」
整骨院・接骨院で行われる施術方法
整骨院や接骨院では、国家資格を有する柔道整復師が施術を行います。
むちうちの症状は、レントゲンやMRI検査のみでは、原因が明確にならないこともありますが、整骨院などでは、手技によって直接患部に触れるため、原因が判明する場合があります。
鍼灸院で行われる施術方法
鍼灸院では、国家資格(はり師・灸師)を有する鍼灸師が施術を行います。
施術の方法は、人体に約361もあるといわれているツボに、鍼や灸を用いて刺激を与え、回復を図ります。
ツボに直接刺激を与えることで、自律神経のバランスを整えたり、痛みを和らげる効果が期待できるでしょう。
また、筋肉の緊張を和らげることによって、血行を促進し、自然治癒力が高まり、症状の改善を目指すことができます。
整骨院などに通院する時の注意点
整骨院などへ通院する場合、いくつか注意すべきことがあります。それは、自己判断で整骨院などへ通院をしないということです。
自己判断で通院してしまうと、整骨院などでかかった施術費を加害者側に請求することができなかったり、適切な賠償金を受け取ることが難しくなってしまいます。
そのため、整骨院などへ通院する際には、必ず医師の確認を得てから通院するようにしましょう。医師の確認があれば、整骨院などで行われる施術も治療の一環として認められる場合があります。
また、医師の確認を得られた後に、加害者側の保険会社に連絡をしましょう。連絡を怠ると、施術費の支払いを受けられない場合がありますので、注意が必要です。
むちうちは完治できる?
さまざまな症状があるむちうちですが、むちうちの症状を完治することはできるのでしょうか。
むちうちを負った人の中では、完治したという人もいれば、完治せずに後遺症が残ったという人もいます。
そこで、むちうちの治療期間や完治しなかった場合の対応について解説していきます。
むちうちの治療期間
むちうちの程度によって異なりますが、一般的に完治まで2~3ヶ月の期間を要します。また、重症の場合には、半年〜1年以上かかるケースもあります。
また、むちうちの早期回復を目指すためには、すぐに病院を受診することが大切です。
そして、むちうちの治療を受ける際には、継続的に病院を受診するようにしましょう。
後遺症が残る場合もある
むちうちが完治するまでの一般的な期間は、3ヶ月程度とされていますが、症状によっては、半年以上継続して治療を受けても完治しないというケースがあります。
むちうちの場合、治療開始日からおおよそ半年ほど経過すると、医師から症状固定の診断を受けることになります。
症状固定とは、これ以上治療を継続しても回復が見込めない状態のことをいいます。また、後遺症が残ったことも意味しています。
そのため、症状固定の診断を受けると、後遺障害の等級認定を申請することができます。後遺障害の等級が認定されると、後述する後遺障害慰謝料などを請求することができます。
また、症状固定のタイミングは後に行う後遺障害の等級認定にも影響を与える可能性があるため、適切な治療期間を経たうえで症状固定の診断を受けることが大切です。
むちうちが完治しない場合の対処法
むちうちの治療を適切に行っていても、完治までに時間を要することや後遺症が残ってしまう場合があります。
そこで、ここからはむちうちの治療に時間を要する場合や完治しなかったときの対処法について解説します。
症状固定後は、後遺障害の等級認定を申請することができるため、参考にしてみましょう。
むちうちの後遺症とは
むちうちの治療を、おおよそ半年ほど継続しても、回復がみられない場合、医師から症状固定の診断を受ける可能性があります。
また、症状固定の診断を受けた場合には、後遺症が残ったことを意味します。
そして、後遺症が残った場合には、後遺障害の等級認定を申請することができます。
後遺障害の等級認定を申請する
むちうちの後遺症が残った場合には、後遺障害の等級認定を申請しましょう。
後遺障害の等級が認定されれば、後遺障害慰謝料や後遺障害遺失利益を請求することができます。
ただし、後遺症が残ったからといって、必ず等級が認定されるとは限らないという点に注意が必要です。
後遺障害の等級認定に必要な手続き
後遺障害の等級認定の申請方法は、「事前認定」と「被害者請求」という2つの方法があります。
事前認定は、加害者側の任意保険会社に、申請手続きを一任する方法です。被害者が、加害者側の任意保険会社に後遺障害診断書を提出することで、手続きを進めてもらえます。被害者自身の負担が少ないという特徴があります。
一方で、被害者請求は、被害者自身が必要な書類を集め、加害者側の自賠責保険会社に申請する方法です。申請に手間はかかりますが、等級認定を有利に受けられるよう書類を準備することができるというメリットがあります。
適切な後遺障害の等級認定を受けるためには、被害者請求がよいでしょう。
交通事故でむちうちになった場合の賠償金
交通事故の被害者が請求できる損害賠償には、「積極損害」・「消極損害」・「慰謝料」の3種類があります。
積極損害とは、交通事故にあったことで出費を余儀なくされた損害のことで、治療費や手術費用、通院交通費などが分類されます。
また、消極損害とは、交通事故の影響で失われた将来の利益などを指し、休業損害や逸失利益が分類されます。
そして、慰謝料とは、交通事故によって被害者が受けた精神的苦痛に対して支払われる賠償金です。病院に入通院した場合や後遺障害が残ったなどの場合に請求することができます。
以下では、それぞれの賠償金について解説します。
治療関係費
治療関係費には、診察費や検査費はもちろん、手術費、薬の処方代など、怪我の治療のためにかかった費用が含まれます。
基本的には、加害者の任意保険会社が「任意一括対応」という方法によって、治療費を直接病院へ支払うため、被害者が自己負担することはありません。
また、むちうちの場合、おおよそ3ヶ月ほど治療を行うと、加害者の任意保険会社から治療費の打ち切りを打診される場合があります。これに応じてしまうと、治療費が支払われなくなってしまうため、医師に治療の必要性などを確認して、治療費打ち切り延長の交渉を行うことが大切です。
仮に、治療費打ち切りの延長が実現されず、治療費を自己負担した場合でも、怪我の回復のために必要な治療であったと認められれば、後に自己負担した費用を請求することができます。
その際、領収書などが必要になるため、大切に保管しておきましょう。
休業損害
休業損害は、交通事故で負った怪我の影響によって仕事を休んだ場合に生じた収入の減少を補償するために支払われます。
休業損害の計算方法は、「1日あたりの収入×休業日数」です。また、下記で解説している自賠責基準で休業損害を計算する場合は、1日あたり6,100円で算出します。
この、1日あたりの収入を計算する方法は、算定基準や被害者の職業によって異なる点に注意が必要です。
なお、通院のために有給休暇を取得していた場合や専業主婦(主夫)も請求することができます。
入通院慰謝料
入通院慰謝料は、実際に、病院に入院・通院をした期間をもとに、計算します。
また、入通院慰謝料を計算するための基準は、「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」の3つがあります。
自賠責基準は、加害者の自賠責保険会社が賠償金を算定する際に用いる基準で、被害者の最低限の補償を目的としていることから、最も低額な基準です。
また、任意保険基準は、加害者の任意保険会社が賠償金を算定する場合に用いる基準で、その基準は保険会社ごとに異なり、公開もされていません。
そして、弁護士基準は、弁護士が被害者の賠償金を算定する際に活用する基準です。これまでの裁判などで実際に請求が認められたケースを参考にしていることから、最も高額な基準です。
入通院慰謝料の相場は、たとえば、むちうちの治療のために3ヶ月通院したことを想定し、弁護士基準で計算すると、約53万円の入通院慰謝料を請求することができます。この点、同じ通院期間でも自賠責基準で計算した場合、最大で約38万円にとどまってしまいます。
そのため、入通院慰謝料を請求する際には、弁護士基準で計算することがポイントです。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は、後遺障害の等級が認定された場合に請求することができ、認定された等級に応じて相場が決まっています。
たとえば、むちうちの場合は12級13号、または、14級9号の認定を受けられる可能性があります。
また、後遺障害慰謝料の相場も、上述した3つの算定基準で計算されます。
12級13号に認定された場合で、自賠責基準では約224万円、弁護士基準では約290万円を請求できます。
そして、14級9号に認定された場合には、自賠責基準では約75万円、弁護士基準では約110万円を請求することができます。
後遺障害慰謝料を計算する場合でも、弁護士基準が最も高額になるということを覚えておくとよいでしょう。
後遺障害逸失利益
後遺障害逸失利益とは、後遺障害が残らなければ得られるはずであった将来の収入に対する減収分を補償するものです。
後遺障害逸失利益は、次の計算式に基づいて、算出されます。
基礎収入(1年あたり)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
基礎収入は、交通事故にあった前年の年収をもとに、計算されます。基礎収入の確定に必要な書類や計算方法は、被害者の職業(給与所得者、会社役員、個人事業主、専業主婦(主夫)、学生など)によって異なります。
次に、労働能力喪失率とは、認定された後遺障害によって失われた労働能力の割合を表しています。むちうちで認定される可能性がある、12級13号では14%、14級9号では5%が目安となっています。
また、労働能力喪失期間は、今後の労働能力喪失期間を表した年数です。基本的には、症状固定の診断を受けたときの年齢を始期として、67歳までの期間が該当します。この他、被害者が高齢者である場合や18歳以下であるときには、個別具体的に計算が行われます。
なお、むちうちのような神経症状では、67歳まで痛みが継続し、労働能力の喪失が続くとは考えにくく、例外的な取り扱いがされることがほとんどです。そのため、12級13号では10年程度、14級9号では5年程度と認定される場合が多いです。
そして、ライプニッツ係数とは、実際に支払われる逸失利益から「中間利息」を差し引くために活用される数値です。むちうちで12級13号に認定され、労働能力喪失期間が10年とされると「8.5302」、14級9号になり、労働能力喪失期間が5年とされると「4.5797」の係数を使用することになります。
このように、後遺障害逸失利益を請求する際には、被害者の状況に応じた複雑な計算を行わなければなりません。そのため、専門家である弁護士に相談することで、適切な金額を請求することができるでしょう。
出典・参照:むちうちによる労働能力喪失期間|弁護士法人心
むちうちを治す方法や後遺症が残る場合の対応を知ろう
交通事故にあうと、むちうちになることがあります。むちうちと聞くと軽く考えてしまう場合がありますが、症状の程度によっては、完治までに長い期間を要したり、完治しないというケースもあります。
そして、むちうちの症状や完治するまでの期間には個人差があり、後遺症が残るケースも少なくありません。
そこで、むちうちの適切な治療法を知り、後遺症が残った場合に備えておくことが大切です。
この記事のライター
ドクター交通事故運営
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記載されている内容は※2022年10月17日 11:57:37 ※時点のものです。
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